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きょうの社説 2009年10月25日
◎近代和風建築 評価手法に一段の工夫を
明治期から昭和20年までの「近代和風建築」が石川県内で約1800軒残っているこ
とが県教委の調査で分かった。住宅や神社仏閣、公共建築などで、著名な一部の建築物を除き、これらは保存の措置が十分に講じられていないのが現状である。明治以降の近代和風建築については、歴史が浅いという理由で文化財的な価値は必ずし も定まっていない。金沢市などでは町家保存の取り組みが進んでいるが、それでも個人所有の居宅は老朽化すれば取り壊されやすく、何も手立てを講じなければ消滅を待つだけである。今回の調査を機に、価値の高いものは積極的に文化財の指定を目指し、それ以外でも文化財保護の既存の枠組みを超え、自治体独自に地域の財産として評価する仕組みがあっていい。 近代和風建築は「伝統的様式や技法で建てられた木造建築」で、部分的に洋風の技法を 用いた建築物も対象となる。文化庁の補助事業として1992年から都道府県ごとに近代和風建築の総合調査が順次実施されてきた。その先駆けとなった富山県では、リストアップした物件が国重要文化財に指定されるなどの成果を挙げ、詳細な調査データはその後の近代化遺産保存の取り組みへとつながった。 石川県教委の総合調査では、住宅約1250軒、神社仏閣約520軒、行政施設や駅舎 など約30軒が選ばれた。これらを4段階で格付けし、今年度内に報告書にまとめる。住宅でも都市部や農村、漁村など土地柄によって違いがある。構造や意匠などを丹念に調べ、その価値を分かりやすく示してほしい。神社仏閣は近世までが評価されやすいが、江戸幕府の宗教政策から解放された明治以降も高度な技術がみられ、将来の文化財候補は少なくない。せっかくの調査結果を報告書の中だけに閉じこめず、県教委は市町や地域にデータの活用を促し、保存の機運を高める必要がある。 金沢市大野地区では「こまちなみフェスタ」に合わせ、古民家などの一斉公開が行われ ている。伝統的な建築物を残すには、このように地域全体で価値を見いだし、地域共有の財産にしていく取り組みも大事になってくる。
◎カキ殻の肥料化 身近な循環ビジネス期待
七尾西湾の養殖カキの貝殻を使った肥料の販売が伸びている。カキ殻の肥料で栽培した
コシヒカリを「かきがら米」のブランドで売り出す取り組みも地元の農家で行われているという。農水連携による「資源循環ビジネス」が定着してきたといえる。農業関係の資源循環事業では、金沢市の民間業者や氷見市農協がそれぞれ、ロール状の 稲わらを松阪牛や氷見牛の飼料として出荷している。稲わらに和牛の肉質を良くする効果があるためで、松阪牛のふんは有機肥料として、稲わらを提供する羽咋市の農家で利用されてもいる。いわゆる耕畜連携による循環型農業のモデルとなり得るものである。こうした身近な食農分野の循環ビジネスが北陸で伸びることが期待される。 カキの貝殻は農作物の成長を促すマグネシウムやリン酸、カリウムを含み、酸性の土壌 を中性化する効果がある。石川県立大の長谷川和久客員名誉教授と白山市のメーカーが開発したカキ殻肥料は2007年に発売を開始して以来、倍増ペースで伸び、今年の販売量は80トンを超える見込みという。 養殖カキの貝殻はこれまで、土木関係の資材として活用される程度だったが、ここへき て一転、循環ビジネスの資源として脚光を浴びるかたちになった。 カキ殻の肥料化に関しては、例えば、東北6県の生協グループと長崎県内の農協が提携 し、生協が農協からミカンを購入する一方、農協は生協の仲介で三陸沿岸で水揚げされたカキの貝殻をミカン栽培の肥料として導入する事業を始めるという。カキ殻肥料の販路拡大の可能性を示す例である。 食の資源再利用では、食品リサイクル法の改正で、関連業者は食品残渣(ざんさ)の再 利用率を引き上げる必要に迫られている。12年度までの目標は食品メーカーで85%、小売業は45%、外食産業は40%と高く設定されており、これを機に北陸でも食品リサイクル事業に参入する動きが見られる。大都市圏と違い、食品残渣の確保に悩みもあるようだが、資源循環型社会の確立は時代の要請でもあり、循環ビジネスの積極展開を望みたい。
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