巨人−中日 9回表1死、最後の打席を左飛で終わりベンチ前で一礼する立浪=東京ドームで(圷真一撮影)
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心に響く大歓声を全身で受け止めて、立浪和義がフィナーレを迎えた。現役最後の打席は9回1死、代打のコールに巨人ファンからも拍手が巻き起こった。そしてクルーンの前に左飛。一塁をまわってヘルメットを取って応えた。ちょっとだけ目頭が熱くなっているように見えた。これが現役生活に別れを告げた瞬間だった。
「ああ、終わったなあって。ここまで目いっぱいやってきたから何の悔いもない。最後に声援を送ってくれた巨人ファン、中日ファンに感謝しています」
腰痛だった9月30日の引退セレモニー、あの日の試合前だった。監督室をノックして、スタメン出場を直訴した。落合監督の答えは「腰痛を悪化させたくない。CSがあるから代打にしてくれないか」。数秒後、もう1度、頭を下げた。結局、一塁でスタメン出場。「絶対にCSで頑張ろうと思ったよ」。わがままを許してくれた監督に応えたい。その一心でCS第1ステージ第3戦では試合を決めるタイムリー。最後の最後まで輝いていた。
「負けて終わるのは仕方ない。ただ、悔しい思いをした選手には来年、リベンジしてもらいたい。巨人の選手にはおめでとうと伝えたい」。今後は中日を退団、野球評論家として第2の人生を歩む。幾多の記録と感動を残したミスタードラゴンズは、2000安打を達成した思い出の東京ドームで静かにユニホームを脱いだ。 (兼田康次)
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