2009-10-18
りんごっこ保育園から記事削除要求と発信者情報開示請求を受けました
「東村山市民新聞」の10月18日付更新(2009/10/17 19:52:29)は「最終更新日」の修正だけだったようです。
そういえば、そのうち報告しようと思って後回しになっていたのですが、「東村山地味魍魎ブログ」に続き、この「3羽の雀の日記」についても、りんごっこ保育園から「はてな」運営に対して記事の削除申立てと発信者情報開示請求が行なわれていたのでした。この機会に、経緯を報告しておきましょう。
■(参考)はてな利用規約
認可保育園であるりんごっこ保育園が問題とした記事は、2008年10月27日付〈「責任転嫁」から「謀略」へ(食中毒騒動退園事件)〉です。りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件をめぐる「東村山市民新聞」の記述を検証し、園側の対応および「東村山市民新聞」の取り上げ方を批判した記事です。
「東村山市民新聞」には、
一般質問で、さも「りんごっこ保育園」に問題があるかのように叫んだ佐藤さんですが、結局、保健福祉部長は「りんごっこ保育園では、食中毒はなかった!」と明快に答弁して、佐藤さんの誹謗中傷劇はあっけなく幕切れになっています。
と書かれていましたので、前掲記事では佐藤市議が一般質問に立った2007年3月5日の本会議会議録を検討し、「(保健福祉部長は)『りんごっこ保育園では、食中毒はなかった!』と『明快に答弁』しているわけではないようですね」と疑問を呈しました。
これが、「あたかも『りんごっこ保育園において食中毒がなかったとはいえず、食中毒の発生した疑いはある』かのような全くの事実無根の虚偽の記述」として名誉毀損になるんですって。
「東村山地味魍魎ブログ」に対しても「園内で食中毒が発生したと断定した虚偽情報」を掲載したと主張して発信者情報開示請求を行なっていたようですが(2009年1月8日付〈「東村山魑魅魍魎ブログ」発信者情報開示請求の目的は何だったのか〉も参照)、つまりはこのぐらいしかネタがないということなのでしょう。
「はてな」運営はけっきょく、私の記事の記載内容が名誉毀損であることは明白とは言えないと判断し、記事の削除にも発信者情報開示も応じない決定をしました。当然の決定ではありますが、毅然たる対応をとっていただいたことに敬意を表します。
以下、時系列で経緯を報告しておきます。
(1)りんごっこ保育園、2008年10月27日付〈「責任転嫁」から「謀略」へ(食中毒騒動退園事件)〉がりんごっこ保育園および高野博子園長の名誉を侵害するものであるとして、削除を申立て(2009年7月)。
申立ての趣旨は次の通りです。
- 「(保健福祉部長は)『りんごっこ保育園では、食中毒はなかった!』と『明快に答弁』しているわけではないようですね」という3羽の雀の記述は、「あたかも『りんごっこ保育園において食中毒がなかったとはいえず、食中毒の発生した疑いはある』かのような全くの事実無根の虚偽の記述」である。
- 東村山市保健福祉部長は、2007年3月23日の本会議で、「食中毒はなかったと確認しております」と明快に答弁している。
- 3羽の雀はこのような答弁があった事実を知っているはずである。
- にも関わらず、2009年5月27日付の記事でも問題の記事にリンクを張って「虚偽の事実」の公表を続けており、「極めて悪質」と言うほかない。
- この結果、りんごっこ保育園および同園園長・高野博子の「名誉及び信用が著しく毀損され、園児保護者らに不安を抱かせていることは明らか」である。
(2)3羽の雀、2009年7月27日付で「はてな」運営に下記の見解を送信。
結論から申し上げれば、本件該当記事は名誉毀損等の権利侵害情報に該当するとは考えません。
したがって記事を削除する必要はないと考えますが、今回の申立ての中で言及されている、2007年3月23日の東村山市議会における保健福祉部長の答弁(「食中毒はなかったと確認しております。」)については記事中で追記するとともに、
“2007年3月5日の時点では、「りんごっこ保育園では、食中毒はなかった!」という「明快」な答弁がなされたとは必ずしも言えないが、その後、「食中毒はなかったと確認しております。」旨の答弁が行なわれた”
という趣旨の注記をする用意はあります。
以下、本件該当記事が名誉毀損等の権利侵害情報に該当しないと考える根拠をご説明します。
1.前提として、りんごっこ保育園は東京都知事から認可を受けている認可保育園であり、その運営はもっぱら公的資金によって行なわれています。また、同園の経営母体である「林檎の木」は特定非営利活動法人(NPO法人)であり、りんごっこ保育園の運営状況について報道・論評を行なうことの公益性については疑問をいれる余地がありません。
2.第2に、本件該当記事で参照している「東村山市民新聞」は、現役の東村山市議会議員である矢野穂積・朝木直子両氏によって運営されているサイトです。両氏はNPO法人「林檎の木」の理事・監事を務めており、サイト上で、また市議会において、しばしばりんごっこ保育園を擁護する発言をしています。このことからも、りんごっこ保育園の運営状況について、「東村山市民新聞」を参照しながら報道・論評することには高い公益性を認めることができます。
3.さて、りんごっこ保育園側は、本件該当記事における、「りんごっこ保育園では、『食中毒はなかった!』と『明快に答弁』しているわけではないようですね。」という記述を問題にしているようです。しかし本件記述は、「東村山市民新聞」のサイトに掲載されている記事〈りんごっこ保育園を、またも事実無根の攻撃!(佐藤「市議」)〉を踏まえ、そこで取り上げられている、佐藤まさたか市議と保健福祉部長との質疑応答における保健福祉部長の答弁(「結果として、食中毒が発生している可能性は低いということで、保健所さんは判断をされました。」)に対する論評として行なったものです。この論評自体は不合理なものとは考えられず、りんごっこ保育園側もそのような主張はしていないようです。
4.「東村山市民新聞」の上記記事では佐藤市議と保健福祉部長との質疑応答しか取り上げられていないことから、本件該当記事においては、2007年3月23日の東村山市議会における保健福祉部長の答弁(「食中毒はなかったと確認しております。」)は論評の対象とはしておりません。この点につき、りんごっこ保育園側は次のように主張しています。
〈食中毒発生を明確に否定した前記部長答弁があった事実は、すでに指摘がなされていることを知っていると思料されますので、「三羽の雀」は、まじめに調べれば、本園において「食中毒はなかった」ことを容易に知ることができたはずですので、「りんごっこ保育園では、『食中毒はなかった!』と『明快に答弁』しているわけではないようですね。」という記述が全く根拠がないことは十分に知りえたことは明らかです。〉
しかし、「東村山市民新聞」の上記記事においても、りんごっこ保育園グループのホームページにおいても、保健福祉部長の答弁の出典は明記されていません。「東村山市民新聞」の上記記事を読めば、そこでは佐藤まさたか市議と保健福祉部長との間で交わされた質疑応答のみが問題にされていると理解するのが通常であり、私が該当する議事録(2007年3月5日)のみを参照したことには合理的理由があります。2007年3月23日の保健福祉部長答弁(「食中毒はなかったと確認しております。」)について、「東村山市民新聞」およびりんごっこ保育園側がその出典を明記していない以上、私が本件答弁を「十分に知りえたことは明らか」というりんごっこ保育園代表者の主張にはまったく根拠がありません。
〔注/この答弁は矢野穂積「市議」の質問に応じて行なわれたものだが、平成18年度一般会計補正予算の審議中に行なわれた、本来議題とは無関係な質問であるので、りんごっこ保育園側の主張にはなおさら根拠がない。〕
5.さらに、本件該当記事では、りんごっこ保育園が問題としている記述に至るまでに、りんごっこ保育園および「東村山市民新聞」の主張を十二分に取り上げています。本件該当記事を読んだ一般の読者が、「りんごっこ保育園において食中毒がなかったとはいえず、食中毒の発生した疑いはある」(そういう疑いが現在も払拭されていない)という理解をすることは到底考えられず、本件該当記事が「全くの事実無根の虚偽の記述」をしているというりんごっこ保育園側の主張は失当と言わざるを得ません。
6.まして、本件該当記事が「園児保護者らに不安を抱かせている」というのであれば、「東村山市民新聞」の上記記事で保健福祉部長の答弁(「食中毒はなかったと確認しております。」)の内容と出典を明示すれば済むことです。本件該当記事では「東村山市民新聞」の上記記事にリンクを張っており、本件該当記事を読んだ読者は、「東村山市民新聞」の上記記事を参照することによって、本件該当記事が真実であるかどうかを容易に確認することができます。
7.さらに、当「はてなダイアリー」(3羽の雀の日記)では、りんごっこ保育園グループおよび「東村山市民新聞」のサイトの更新状況を逐一記録・報告しています。いずれかのサイトで上記のような説明ないし反論が行なわれれば、私がその旨を報告して読者の注意を喚起したことは、りんごっこ保育園側および「東村山市民新聞」にも容易に予想・期待できたはずです。
8.りんごっこ保育園は、上記1で述べたように公益性を有する認可保育所であり、相応の説明責任を負っています。本件該当記事が「園児保護者らに不安を抱かせている」などと主張するのであれば、本件該当記事で取り上げた〈食中毒騒動退園事件〉についてホームページ等で十分な説明を行なうことこそ、不安を払拭する最善の方法です。かかる説明責任を履行せずに本件該当記事の削除を一方的に申立てるというのは、自らの公益性に関する自覚を欠いた言論封殺行為であると考えざるを得ません。
9.以上の通り、本件該当記事の内容面(1〜5)からも、しかるべき反論を行なわずに一方的に記事の削除を申し立てたという経緯(6〜8)からも、本件該当記事が名誉毀損等の権利侵害情報に当たるという主張には根拠がないと考えます。
10.ただし、冒頭で表明したように、2007年3月23日の東村山市議会における保健福祉部長の答弁(「食中毒はなかったと確認しております。」)については、新たに私が知るに至った事実として、本件該当記事に追記する用意があります。その際、私がどのように本件保健福祉部長答弁を知るに至ったかを説明するため、りんごっこ保育園の代表者から「はてな」運営に対して本件削除申立てが行なわれた事実と、本件申立ての要旨を掲載することが必要です。
11.りんごっこ保育園の公益性に鑑み、これらの情報を公にすることについては特に問題がないと考えますが、何か問題があるようであれば、ご指摘ください。特に問題がないようであれば、冒頭で述べた通りの内容で追記・注記を行ない、追ってお知らせします。
(3)「はてな」運営、上記見解をりんごっこ保育園側に伝えるとともに、追記・注記の可否について問い合わせ。りんごっこ保育園側はあくまでも削除を主張したが、「はてな」運営は記事の名誉毀損性は明白ではないとして、削除に応じないことを決定(2009年8月中旬に確認)。
(4)3羽の雀、公正を期すため、2007年3月23日本会議における保健福祉部長答弁について記事に追記し、これなら「『東村山市民新聞』が主張するような『明快』な答弁と評することができるでしょう」と論評(2009年8月20日)。本文中でも「文末追記参照」と2箇所で明記。
(5)りんごっこ保育園、この追記は「前記市議会会議録を確認しないで・・・事実に反する記述をした旨自認する」証拠であるとして、「はてな」運営に発信者情報開示を請求(2009年10月上旬)。
(6)3羽の雀、以下の見解を「はてな」運営に伝え、発信者情報の開示を拒否。
7月27日にお送りしたメールでもご説明した通り、追記・注記を加える前の記事を読んでも、一般読者が、
「りんごっこ保育園において食中毒がなかったとはいえず、食中毒の発生した疑いはある」(そういう疑いが現在も払拭されていない)
という理解をすることは到底考えられません。
したがって、追記・注記の有無にかかわらず本件記事には名誉毀損性がありませんし、「明快な答弁」があったか否かという“二次的な論点”について追記・注記を加えたことにより、名誉毀損性がないことはいっそう明確になりました。
本件開示請求は、認可保育所としての公益性に関する自覚を欠くばかりか、当方の誠実な対応を逆手にとって批判者を恫喝しようとする言論封殺行為と言わざるを得ません。
(7)「はてな」運営、発信者情報開示に応じないことを決定。
以上です。「名誉」の回復がしたかったのであれば、追記・注記によりその目的は十分に達成されたはずですから、やっぱり何か別の思惑があったんでしょうね。仮に「はてな」運営が削除に応じていたら、やはり“問題があったことを自認した”として発信者情報開示請求に踏み切っていたのでしょう。
ところで、りんごっこ保育園の理事・監事を務める矢野穂積・朝木直子両「市議」は、薄井市議から訴えられた裁判で次のような主張を行なっています。前にも触れたことがあるのですが、あらためて引用しておきましょう。りんごっこ保育園(NPO法人「林檎の木」が経営する認可保育所)についても同じことが言えるのは、矢野「市議」お得意のフレーズを借りれば、「説明のいらないお話です」。
3 可能であった対抗言論がなされていないことに関する信義則違反
加えて、原告薄井は私人ではなく公人として市議であることを明示した上でインターネット上に公的言論をなしうるブログをもっているのであるから、被告らによる批判言論に対しては、自己の信念に基づいた反論なり反批判なりの対抗言論を行うことができたにもかかわらず、これらを何らしなかった。そして、原告薄井は、先ず以って公人として言論に対しては言論によって応酬し、市議としての説明責任を果たすべきところ、これをおこなわないで、被告らの批判言論を事実上、黙認した。
したがって、原告薄井が、事実上、被告らの批判言論を黙認したにもかかわらず、突如、司法救済を求めようとしたことには、信義則違反がある。
なお、2008年10月26日付〈事故を宣伝に利用するりんごっこ保育園のいやらしさ〉および同10月29日付〈キャンディチーズ事故の真相をあらためて推理する〉も参照。