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【国際】

超大型爆弾 米が開発中 地下60メートルも破壊、威力10倍に

2009年10月21日 朝刊

 米国防総省が、重量約十五トンの地下貫通型大型爆弾(MOP)の開発を急いでいる。米軍が持つ通常兵器(非核兵器)の中では最大となり、従来型の約十倍の破壊力を持つとされる。モレル国防総省報道官は今月七日の記者会見で「数カ月で配備可能」との見通しを強調。米軍は、二〇〇三年のイラク戦争直前にも新型爆弾の実験を実施しており、米メディアで、MOP開発とイランの核施設に対する攻撃計画との関連が取りざたされるなど、波紋を広げている。 (ワシントン・嶋田昭浩)

 ◆予算を優遇

 米ABCテレビは六日、国防総省が、MOP開発を急ぐため他の事業から予算を振り向けるよう議会に了承を要請し、承認されたと報道した。地下約六十メートルの施設への攻撃を想定して設計されたMOPについて、北朝鮮を担当する米太平洋軍と、イランを受け持つ中央軍が、緊急配備の必要性を主張しているという。同テレビは特に、イランの核施設に対する攻撃に適した兵器だと指摘した。

 イランの脅威を強調するイスラエルの英字紙エルサレム・ポストは七日、電子版でABC報道を引用し「米国はイラン攻撃の準備を加速している可能性がある」と報じた。

 報道を追認する形でモレル報道官は同日、MOPの配備見通しを示し、「敵国の大量破壊兵器貯蔵施設などの破壊を想定している」と述べた。

 ◆政治的計算

 オバマ大統領は先月二十五日、ピッツバーグでの金融サミットの閉幕記者会見で、イランの核問題への対応について「いかなる選択肢も排除しない」と軍事作戦の可能性にも言及。国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた六カ国とイランとの協議が今月一日に始まった一方で、米軍は今月、イスラエルと合同でミサイル防衛(MD)演習を予定するなど、イランへの牽制(けんせい)を強めている。

 モレル報道官は「標的についてあれこれ思いを巡らすのはあまり有益ではない」とするものの、米メディアではイラン攻撃をめぐる憶測が飛び交う。

 「米国のイラン攻撃は確実に実行可能だ。MOPが来年夏には配備され、より効率的に事が運ぶだろう」と話すのは米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の防衛問題専門家ジェームズ・カラファノ氏。この時期にMOPの配備見通しが報じられたこと自体が「興味深い」とし、「イランに『(核協議で米国などと)合意すべきではないか。さもないと攻撃を受けるのではなかろうか』と考えさせる政治的計算があるのかもしれない」と推測する。

 ◆空爆主体か

 一方、イラン問題が専門のハミド・ダバシ米コロンビア大教授は「実はイラン側も、暗黙のうちに軍事攻撃を歓迎しているふしがある。現時点での彼らの難題は対外関係より国内問題。攻撃を受ければ戦時態勢となり、国内の市民運動を抑圧できるからだ」と指摘。

 ただ、「アフガニスタンやパキスタンでの混乱が深刻なだけに、米国も、イランに対しイラク戦争のような攻撃を仕掛ける軍事能力はない」とし、大規模な地上攻撃を伴う軍事作戦が行われる可能性には否定的だ。

 むしろ〇六年七月のイスラエルによるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する攻撃のように空爆主体の作戦になるとみている。

 

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