押尾被告とともに合成麻薬MDMAを服用し、急死したホステスの田中香織さん(享年30)の父親(61)が23日、押尾被告の初公判を傍聴した。女性の家族は早朝に実家のある岐阜県飛騨市から上京。公判後に報道陣の取材に応じ、声を絞り出すように「裁判で彼(押尾被告)の背中を見ていても、どうして救急車を呼んでくれなかったのか…と、それだけです」と無念の思いを語った。悔しさが涙となってほおを伝っていた。
公判では女性の死亡推定時刻から110番通報までの“空白の3時間”についてはほとんど触れられなかった。父親は事件後の心労が大きいことから傍聴後、あらかじめ用意した文書も配布。100人以上の報道陣に「真実が明らかになることを切に望んでいます」と、警視庁の今後の捜査に期待を寄せた。
父親は文書で、「なぜ119番通報するまでに、あれだけの時間がかかったのか?」「もし、もう少し早く適切な医療措置が講じられていたのであれば、娘が亡くなることはなかったのではないか?」と娘の死の経緯について、いくつかの疑問を訴えかけた。
公判では、押尾被告が保釈後に連日、警視庁による任意の取り調べを受けていたことも明かされた。事件現場のマンションにも3回ほど任意で捜査に立ち会ったという。警視庁は女性の様子が急変してからの押尾被告の行動に問題がなかったか、保護責任者遺棄罪などを視野に、詰めの捜査を急いでいる。