合成麻薬MDMAを使用したとして麻薬取締法違反に問われた元俳優、押尾学被告(31)の初公判が23日、東京地裁で開かれ、押尾被告は起訴事実を認め、検察側は懲役1年6月を求刑し、結審した。判決は11月2日。検察側は、押尾被告と一緒にMDMAを服用し、死亡したホステスの女性田中香織さん(享年30)に対し、事件直前に押尾被告が「(部屋に)来たらすぐいる?」とメールを送っていたという新たな証拠を提出。「女性が用意した」と主張する押尾被告に対し、検察側は暗に、クスリを用意したのは押尾被告だったという可能性を突きつけた。
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検察側は新たな証拠を、証言台の押尾被告にぶつけた。8月2日の事件当日。押尾被告は「(部屋に)来たらすぐいる?」というメールを送り、田中さんは「いる」と返信していたという。
検察側は「いる」が指すものについて、“クスリ(MDMA)”であり、押尾被告が自ら入手したものだと主張すべく厳しく追及。押尾被告は「『いる』はボクの体のこと」などと弁明した。検察側はほかに押尾被告が送信したメールについて、同様のやりとりはないことなどを示し、その弁明の不自然さを指摘した。
亡くなった女性とは今年5月に都内のクラブで知り合い、交際が始まったという。押尾被告は「錠剤は女性からもらった。女性は錠剤を3回飲んでいました。何錠かは分かりません」とこれまでの供述通り、「女性に勧められて飲んだ」という主張を繰り返した。
検察側は冒頭陳述で、押尾被告が2年前にMDMAを米国で服用し、その後も今年3月と7月に米国のクラブで酒と一緒に飲んでいたことを明かした。押尾被告への質問では、7月に渡米した際、現地の薬物売人に詳しいとみられる男性と交わしたメールの内容についても質問をぶつけた。押尾被告が米国で薬物を入手できる環境にあったとみられることを証明するためのようだ。
さらに論告求刑では、押尾被告が女性の死亡後にMDMAの反応を体内から抜く薬がないか、友人に聞き証拠隠滅を図ろうとしたことや、毛髪からもMDMAの反応が出たことを指摘。検察側は「常習性は明らか。再犯のおそれもある」として、懲役1年6月を求刑した。
一方、弁護側は、量刑につながる薬物の入手に関しては田中さんがMDMA以外にも、コカインなどの薬物を持っていたとし、米国でも現地の友人が用意したとして、入手については一貫して自分自身の関与を否定した。弁護側は執行猶予付き判決を求めて結審した。