white tooth and yellow stain
ピンポーン。 僕は、いつものように、玄関の前に立ってインターホンを鳴らしていた。 わざわざ鳴らさなくても、勝手に入ってきていいよ。 そう言われていても、マンション育ちの僕には中々出来るものではない。 親戚で、今日もお呼ばれしている身とはいえ、他人の家に勝手に上がるなんて、 僕の神経では考えられない事だった。 「……」 とはいえ、今日は少し様子が違った。 どうも、留守にしているらしく、何の反応も無い。 「なんだ……」 僕が来る事は知っている筈なので、近所のスーパーまで買い物にでも出掛けて いるのだろうか。 タイミングが悪かった。 このまま待っていてもいいが、他人の家の玄関で座り込むのも、僕の感覚から すれば考えられないくらい、怪しい行為。 ならば、一旦駅前まで戻って本屋で立ち読みでも。 あ、でもそういえば、さっき歩いてくる途中で下校中の小学生にすれ違ったし、 そろそろあいつが……。 「お……」 そう考えながら、試しに玄関を押してみると、驚くほど簡単に扉が開いた。 「やべ……」 慌てて扉を閉めようとする僕の目に、見慣れた靴が飛び込んでくる。 白とピンク色の運動靴。 叔父叔母夫婦の一人娘、小6の亜主美の靴だ。 なんだ、もう帰ってるのか。 冷静にしているふりをして、僕は若干テンションが上がっていた。 亜主美は背が高くて、優等生タイプの少女。 イマドキの小学生にしてはしっかりしている女の子なので、僕としては、かな りの好印象を持っていた。 濃い目の眉に、長い睫、パッチリ二重の目が特徴的な、どちらかというと清楚 系の見た目。 派手な服装や髪型はせず、受け答えもきっちりしているし、箸使いも上手。 また、そのあどけなく可愛い顔に似合わない、と言っちゃ失礼かもしれないが、 女の子にしては低めの声も、彼女の魅力の一つだった。 まだ12歳の女の子に恋心を抱いているわけではない。 ただし、変なギャルのような格好をして大学のキャンパスを歩いている女より は確実に好印象を持っていたし、彼女と会える事がここに来る楽しみの一つであ る事は、否定する予知がなかった。 とにかく、彼女がいるのなら、叔母が帰ってきていなくても問題ない。 扉に鍵がかかっていなかったのは、きっと彼女が中にいるからだろう。 僕は勝手にそう思い込み、靴を脱いだ。 「おじゃまします」 そして、そのまま居間まで直行し、スライド式のドアに手をかける。 「亜主美ー……いるのー?」 「まって!」 「え?」 この意外とハスキーなしっかりした声は、確かに亜主美のもの。 だが、僕がそう言われたのは、もうドアに手がかかり、力を入れた後だった。 「きゃァっ!」 珍しく、女の子らしい、甲高い悲鳴。 何だ、と思い焦点を合わせると……。 「おわっ!」 僕は、驚いて飛び退き、慌てて扉を閉めた。 「ごっ、ごめんっ!」 「あはは、ちょっとまって、今ぱんつだけでも穿くから」 心臓が止まるかと思った。 まさか、その亜主美が、着替え中だったとは。 って、え……? ぱんつ……? もしかして今、僕が見てしまった白いアンダーシャツの下のって、ふとももじゃ なくてオシリだった……? 良く見えなかったが、確かに足だとすると長すぎて違和感も……。 「あはは、いらっしゃーい」 「あ、うん……」 亜主美は、言ったとおり、白いビキニ型の下着丸出しで出てきた。 僕は、彼女に悟られないように、若干目線を下げた。 「ぱんつ丸出しでごめん。今、学校帰ってきてお風呂入ってた」 「あ、い、いや……」 「お風呂入ってたからかな。ピンポン鳴ってるの全然聞こえなくて」 「あ、うん……」 本人はいたって冷静な顔をしているが、年頃の女の子が下着丸出しで出てくると は……。 上だって、Tシャツ1枚のようだし……。 小学6年生だろう? いくら気の知れた従兄だからって、油断し過ぎではなかろうか。 「あはは、けど、そのせいでお兄ちゃんにオシリ見られちゃった。はずかし」 「あははは……」 やはりそうなのか……。 嬉しい出来事なのだが、後が怖い……。 これは笑いごとでは無いと思うのだが……。 小学生の女の子相手に何を意識してるのだという意見もあるかもしれないが、も う身体に丸みを帯び始めた6年生だと、意識もして当然だろう。 12歳というと、もうアレだ。 子供というのは失礼な年齢だと思うのだ。 亜主美だって、十分に可愛いし……。 「散らかってるけど、その辺にどうぞ」 白いシンプルな、しかし女児用のゴワゴワしたものでないビキニパンツ丸出しの まま、亜主美は僕をこたつに誘導してくれた。 叔父叔母の家は、年中こたつを出しっ放しで、こたつ好きの僕としては非常に嬉 しい。 それに、こたつに入れば、股間のテントを隠す事も出来るし……。 「あー。そういえば、今日はこたつ暑いよね」 「え?」 「もしよかったらそっちに座る?」 そう言って、部屋の隅のソファーを指差す亜主美。 「なんだよ、急に。先月来た時もこたつだったじゃん」 「あー。まあ、そうか」 「……?」 「はい、じゃあ、テレビ見やすい方で。あっちは散らかりまくってるから」 「あ、うん……」 「クッションいるよね……あった!」 亜主美は中腰になって、無防備に白いパンツのオシリを突き出してクッションを 拾い上げた。 「はい、クッション」 「あ、ありがとう……」 小6なのに、これはいいのだろうか。 オシリの形まで、ハッキリと分かってしまったが。 見ているこっちばかり意識してしまう。 僕はむしろ、そればかりに目が行って、亜主美の挙動不審ぶりには気が付いてい たものの、何か理由があるのだろうと、深く考える事はしなかった。 「ごめん、わたし着替えてくるから、テレビでも見てて」 「あ、う、うん……」 「散らかってるけど、亜主美が片付けるからおかまいなく」 「うん」 亜主美の言うとおり、彼女の真っ赤なランドセルからは、不自然な程に教科書や 筆記用具が飛び出し、散乱している。 A型で真面目で、片付けも出来そうなイメージなのに、これは意外だ。 それにしても、どうしたらこんなぐちゃぐちゃになるのかと……。 「おまたせ」 亜主美は、家の中だからか、先ほどの格好にカーキのキュロットと靴下を履いた だけという、ラフな服装で部屋に入ってきた。 今更だが、髪型はいつものように黒いロングヘアーで、前髪を横に流してヘアピ ンで止めているだけの飾らないもの。 だが、小学生のあどけない魅力を引き出すには、ぴったりの髪型のように思えた。 「あはは、さっきごめん。びっくりさせて」 「あ、い、いや、こちらこそ……。何かごめん……」 「ふだん、女のひとりっ子でお父さんも帰るの遅いから。家の中だと女子しかいな いし、大体こんな格好だし」 「いや、勝手に入ってきちゃったのは僕だしさ……」 「いやいや、お兄ちゃん来るの忘れてたの、あたしだから」 「いやいやいや、僕が……」 「あははは、じゃあ、両方謝ったから、この話はここでおしまいって事で」 「あ、うん、そうだね……」 よかった。 亜主美は、先ほどの件について、特に気にする素振りは見せなかった。 「そういえば、おばさんは?」 「わかんないけど、多分買い物だと思う。帰ってきたら家開いてなくていつもの場 所にカギあったし、多分夕飯の買い物」 「そうなんだ……」 まあ、こういう田舎だから、色々と防犯意識が薄いのかもしれない。 僕はそう理解し、先ほどの事もそれで納得する事にした。 「何か飲む? 亜主美、おフロあがりでむぎ茶飲むけど」 「あ、何があるの?」 「わかんないけど、多分お茶しかないよ。冷蔵庫見てくる」 亜主美は、そう言って立ち上がった。 「ふう……」 いや、しかし、やっと落ち着いた。 叔父叔母の家に来て、こんなに緊張したのは初めてだ。 亜主美と二人きりだとそれでなくても緊張するのに、今日は……。 「……」 僕は、先ほどからこたつの中にふわりとした変な感触を感じ、無意識にそれを撫 でていた。 何やら綿とナイロンが混じったような不思議な触り心地で、少し温かみがあり、 何となく気持ちいい。 それ以外にも、こたつの中には衣類が沢山置かれているようだった。 こたつの中で洗濯物を乾かすのは僕もよくやる事なので、違和感は無いが……。 どうせ、叔母さんが片付けるのを忘れているのだろう。 それくらいに考えていた。 「やっぱ、むぎ茶しかないよー。飲むー?」 しかし、これは何だろう……? ゴムのようなものがついている……? 「あ、うん、何でもいいよ……」 僕は、台所の亜主美の声に答えつつ、無意識に正体が気になったのか、その謎の 手触りのものをコタツの中から引っ張り出した。 「……?」 濃紺の……ティッシュカバー? にしては、少し小さいか。しかし、きつそうなゴムがあって、何かを包むような 構造だし……。 って、これ裏か? 少し生地の色が薄くて、ラベルがついてるし……。 ラベルには6年2組相沢亜主美って……。 「あはは、それ亜主美のブルマだから」 「……ごめんっ!」 僕はその正体を知るなり、慌ててそれを放り投げた。 こたつの中を覗き込むと、僕が触れていた衣類の正体は、脱ぎ散らかした亜主美 の制服ばかりだという驚愕の事実を知る事となる。 「あーごめん、脱ぎちらかしたまんまだった」 「あ、ああ……」 「あとごめん、普段お兄ちゃん来るときお母さん珍しく片付けるんだけど、今日は いつもの通り散らかりっぱなしだから」 「あ、い、いや……」 確かに、亜主美が脱いだものやランドセル類は僕の足元に集中しているが、それ 以外にも雑誌やら小物やらが不自然なくらいに部屋中に散乱している。 叔母さんって、そんなに片付けが出来ない人間だったっけ……。 「ごめん、今から亜主美が散らかしたのだけでも片付けるから、コタツから出て」 「あ、う、うん……」 僕としても、それは嬉しかった。 こんな、女子小学生の制服に囲まれていては、何か犯罪者のような気分では落ち 着けない。 「ほら、これだろ」 僕は再びコタツの中に手を突っ込み、中にある制服類を引っ張り出した。 「あ、いいから」 少しムスっとした表情で亜主美が手を伸ばし、制服を拾い上げる。 「これ洗濯機入れてくる」 そして、両腕に衣類をかかえて部屋を出ようとする。 「あれ……」 と、その足が、ぴたっと止まった。 「……?」 「……」 あの大きな目で、物凄い必死な表情で後ろを振り返る亜主美。 「あ、落ちてるよ、これじゃ……」 僕は、何気なしに、足元にあった白いものを拾った。 「……」 白いもの……? 「え……」 何だこれ、コットンのナフキンのようなものに、絵の具で塗ったような濃い黄色 いシミがべったりと……。 と、その瞬間、ツーンと鼻を刺すような匂いが……。 「なんだこれ……」 あまりにも無残になったその純白のものを、女の子の下着だと理解するのに、僕 は5秒以上時間を費やしてしまった。 そして、今尚、それが女の子の下着だと理解しても、それが何を意味するのかは 理解出来ずにいた。 「ちょっと、かえしてよ!」 いきなり、亜主美が珍しく大きく声を張り上げて、僕からそれを奪い取った。 「亜主美……?」 「……」 「それって……」 「あー、これー……」 「……」 「あー……」 大きな瞳が潤んで、目線が上空をさまよっている。 「えっとー……」 「……」 「あー、っとー……」 「……」 「んー……」 「……」 「まあ……」 「まあ?」 「あはは……」 「……」 亜主美は、明らかに動揺していた。 「あー、あたし、泣くかもしんない……」 「え?」 「あー、泣いちゃうかもォ、もォ〜、やだァ〜……」 ニっと、亜主美は目線を泳がせて、改めて笑顔を作り直した。 「あはは、見た、見た? もォ〜……」 「って、さっきの……?」 「誰にも言わないでよォ……」 「え?」 ぽろっと、その笑顔の亜主美の目から涙が零れ落ちる。 「何でも言う事聞くからァ……」 それでようやく、僕は、ただ事ではない状況なのだと理解する事が出来た。 亜主美の手に握られている汚れたパンツは、やはり亜主美の……。 「あー、ナミダ、見ないで……。あとで全部話すから……」 亜主美は、そう言って顔の前で手のひらをぶらぶらさせた。 「ちょ、調子悪かったの……?」 「えー……?」 「いや、お腹……」 「あー……」 「……」 「まあ……」 「……」 「まぁ……」 「……」 「……ぁ」 ダムが決壊するかのように、一瞬にして亜主美の笑顔が壊れ、涙が噴出した。 ばさっとその場に衣類を落とし、今度は両手で顔を覆って泣き崩れる。 「ぁっ……ぅっ……」 じゅぐ、じゅぐと顔を覆って涙を流し、肩を震わせる亜主美。 「……あ゛ーっ! ヤバーイ、あたしないてるゥ〜……ッ……」 「……」 「あ゛ぁぁァー……ひっ……」 この状態で叔母が帰ってくるとまずい。 まるで、僕が泣かせてしまったみたいではないか。 あながち間違ってはいないのだけれども。 「ひっ……ぃぃ……ウソー、あたし声出して泣いてるゥー、やだァー……」 「……」 「ヤバイヤバイヤバイ、とまんない、どーしよォー……」 亜主美は、動揺してそんな事を口走る。 むしろ、そうする事によって自尊心を保っているようにも思えた。 「と、とにかく、見なかった事にするからさ、な……?」 僕は、良い子ぶろうと思ったわけではないが、亜主美の涙があまりにも悲痛で、 心が痛くて、優しい声でそう言った。 「ほら、別に、変だと思ってないしさ……調子悪い日なんて、誰にでもあるんだ し……」 「ひっ……ひっ……」 「それに、女の子は膀胱が近いって、よく言うじゃん……?」 「ひっ……ぅぅぅぅ……」 「誰にも言わないって、約束できるから……」 「ひっ……ぅっ……」 しゃくりあげる亜主美。 普段泣かない、というか、常に笑顔でムスっとした表情さえあまり見せない少 女だけに、その表情は衝撃的だった。 目が腫れて、憔悴しきって、あんなに美少女だった顔が不細工にさえ見える。 こんな時に限って、笑顔の亜主美が僕の頭の中に浮かんできて、それを目の前 の少女と比べてしまう。 二人はまるで別人のようで、本当に痛々しかった。 「え、っと……」 「……」 亜主美は、俯いたまま何も話そうとしない。 やはり、あのパンツの汚れは亜主美のもの……。 「あ゛ー……きたないでしょ……」 涙交じりのがらがら声。 「え?」 「近寄らないほうがいいよ゛ォ……」 亜主美は、一瞬迷ったような表情をしたあと、いつもの調子で白い歯を見せた。 「亜主美、不潔だからさぁー……」 笑顔で自分を罵る姿が、痛い。 「ちょ、調子悪かったんだな……」 「……」 「えっと、僕もあるよ、こんな歳になっても……」 「……」 「それに、お風呂入ったんだったら、汚くなんかないし……」 「……」 僕が声をかける度に、顔が下を向いていく亜主美。 「とにかく! 元気出せよ、な? 僕は何も見てないんだから」 「あー……」 「な……?」 僕は、亜主美に元気になって貰いたい一心だった。 都合の良い小説なんかだと、ここで、秘密にする代わりに……的な展開になるの だろうが、現実に小6の女の子が打ちひしがれている姿を目の前にすると、とても じゃないが、そんな鬼畜な事は出来ないだろう。 しかも、相手は親戚、従妹の、小学生の女の子なのだ。 「きたないよ……」 「え?」 「おフロ入ってたのもウソだから。パンツよごしてただけだから……」 「え……」 汚してた……? ……じゃなくて。 「えー……けどこれ現実だと思えない、ごめん」 亜主美は、笑顔のまま涙を流した。 無理して笑顔をつくって、目と口元を引きつらせて……。 「汚してたって……?」 「……」 亜主美は笑顔をやめ、また俯いてしまう。 しまった。 「あ、い、いや、何でもない、い、言わなくていいから……」 「……」 聞きたくなかった。 聞いてしまえば、自分を制御する自身が無かったからだ。 「ヤバい、また泣いちゃうかも……」 「……」 「あたし困ったら泣く子って嫌いなんだよ? 普段」 亜主美はまた白い歯を見せ、手振りを交えてそう言った。 「……」 「……」 「……」 そして、痛すぎる沈黙。 何となく、先に破った方の負けのような気がした。 だが、僕は10秒と耐えられなかった。 「え、えっと……」 「……」 「もし、良かったら、だけど……」 「……」 「良かったら、話してみて……」 「……」 「その方が、気が楽になるかもしれないし……」 「……」 「言いたくなかったら、そう言ってくれてもいいし……」 「……」 「えっと……」 「まあ、もう、思ってる通りの事だと思うからー……」 「……」 「アレ、えっと……オナニーだっけ?」 「……」 「学校から帰ってきたら、お母さんいなかったから、つい……みたいな」 「……」 僕は、あまりの衝撃に、言葉を失った。 現実だと思えない。 亜主美が言った台詞が、今の僕の気持ちを端的に表現している。 「そしたら、いきなりピンポン鳴って、あわてて汚したパンツ脱いで隠してたら、 お兄ちゃんが入ってきて……。バレたよー、悲しいよー。みたいな……」 亜主美は、また白い歯を見せ、手振りを交えて言った。 「亜主美……」 「言い訳じゃないけど、そんなしないし、最近全然やってなかったんだよ? それ が、今日急に、魔がさして、みたいなー……あははっ」 「……」 「あはほっ、あたし一生直らないかもー、このクセ……」 「……」 明るく振舞っているように見せかけているが、声が震えている。 無理しているのは、僕の目から見ても明らかだった。 「あー……死にたい」 笑いながら、冗談っぽく言う亜主美。 その目は真っ赤に腫れていた。 「けど、そんなの誰でもやってると思うよ……? 亜主美くらいの年頃の女の子だ ったら」 「……」 「オナニーだろ? 僕だって、小6とか中1の頃って毎日のようにやってたし」 「あー……」 僕は、わざと大したこと無い風に言って見せた。 ハッキリとした計算があった訳ではない。 一種の賭けだった。 「そうやって罪悪感感じながらする方が良くないんじゃない?」 「……」 「医者じゃないから滅多な事は言えないけど、少なくとも、僕から見て、亜主美を 汚いとか、変だとかは思わないけど。別に意外でも何でもないし」 「あー……あたしってオナニーしそうな感じなんだー?」 「いや、そうじゃないって。みんな口にしないだけで、誰でもやってるって事だよ」 「あー……」 「いいじゃん。オナニーくらい。別に、僕は気にしないよ、全然」 殆ど自分の妄想の口から出任せ。 「なんかー……」 「うん」 「こうやって喋ってて、実感わいてきたような気がする」 「え……」 「ショックだけど、今バレてよかったかもしれない。何かちょっとすっきりしたか も」 亜主美は、先ほどまでとは少し違う、落ち着いた表情を見せた。 そして、指先で目じりを拭う。 「何か、お兄ちゃんとか男の人の前でかわいこぶってて、自分でうざいとか思って たからー……」 「亜主美……」 「あたしひとりっ子でわがままだから、意思弱いから……」 亜主美は、少し落ち着いた様子で淡々と話し始めた。 「あたし物心付く前からやっててー……」 「……」 「気づいたらもうすぐ中学でー、まだこんな下着汚しててー……」 「それは、やり方の問題なんじゃない? オナニーはいいけどさ、その、パンツ脱 いでするとか……」 「あー……」 「そこじゃない? 下着汚しちゃうから、罪悪感感じてるんじゃないの?」 「あー……まあ、小さな頃からしてたから、そのやり方がやめられなくて……」 「パンツ穿いたままするの?」 「なんか昔からベッドで寝る前にしてたから、枕挟んで、とか……」 「そ、そうなんだ……」 必死に、自分の勃起を抑える僕。 否。 これは真面目な性教育なんだ。 「手ですると、なんか痛いというか……」 「……」 「直接触るの、ちょっと怖いし……あたし変だからさ……イモムシみたいに……。 って、あたし何言ってんのっ、て……」 「なんで? いいじゃん、イモムシみたいにするの」 「え?」 亜主美は、驚いたように顔を上げた。 「それが気持ちいいなら、そのままでいいと思うよ」 「いやいや、よくないからー……」 「多分、直接すると痛いっていうのは、まだそこまで亜主美の性感っていうか、そ ういうのが十分じゃないって事だし、今一番いいやり方でやるのがいいんじゃん?」 「まあ、そうだね……」 「そうだ、1つテクニック教えてあげる。それやる前に、トイレットペーパーを3 重くらいに巻き取って、生理用品みたいにパンツの中に敷いてみな。最初は違和感 あるけど、その内馴れてきたら気にならなくなるから。そしたら、パンツ汚れない し、トイレ行くふりして流せるし」 「あー……」 「僕が、今でもたまに使ってる裏技」 実は、僕は亜主美の話を聞いたとき、運命めいたものを感じていた。 何せ自分もまったく同じようにするのが好きだったのだから……。 「お兄ちゃんがそれしてるの、想像できない」 「いや、想像するなよ」 「あはは、だって、男の人って、あるじゃん、アレ」 「そうだけど、男だって何かに押し付けると気持ちいいんだよ? やってみせよう か?」 「いや、やんなくていいから。見たくないから」 「なんだよ、せっかく相談に乗ってあげてるのによー」 「あははっ」 いつの間にか、亜主美の涙は乾いていた。 「あー、なんか、ふっきれたかも」 あの魅力的な笑顔が戻っている。 だったら……。 「どうせだったら、いろいろ質問してみれば? 僕が何でも答えてあげるよ」 「あー。ヤバいから。年頃の女子相手にそういう発言、セクハラだから」 「って、せっかく心配してやってるのに」 僕は亜主美が元気になって、心底良かったと思っていた。 「男の子と部屋でふたりっきりでこんな話するの、初めてだから」 「そりゃそうだろ」 「もうすぐお母さん帰ってくるけど、ちょっとだけならいいよ」 亜主美は二っと白い歯を見せて、目じりを下げて、軽く僕の肩にタッチする。 「って……」 「やっぱり、亜主美を安心させたいなら、さっきのやってみせて」 そして、いたずらっぽい顔でそう続けた。 「いいけど、そしたら亜主美もやって見せろよ」 「あー。いいよ」 「え……」 冗談のつもりだった僕は、亜主美の返事に驚き、絶句してしまう。 「その代わりー、お兄ちゃんが先で。お母さんが帰ってくるまで」 また軽いタッチを交えながら、亜主美が言った。 本気だろうか。 小学生の女の子とこんな会話をするのも、彼女を元気付けるという名目がなけ れば危ない事だと思うのに。 真似事とはいえ、美少女の自慰を目の前にして、自分を抑える自信なんて無い。 小学生の女の子なんて、こっちは勝手にイメージを作っているが、実際はこん なに性に対して軽いものなのだろうか。 「あはは、はやく」 「あ、ああ……」 だが、無邪気な亜主美の声に、僕はつい首を縦に振ってしまった。 「じゃあ、このクッション使うぞ……」 「いいよ」 「これを、こうやって……」 床に置いたクッションを股間に挟み、腰を動かしてグリグリと局部を押し付け る。 そんな姿を、小6の女の子に見せているわけだ。 「そー、そー、一緒じゃん!」 亜主美は、普段無いくらいに、テンションが上がっていた。 顔は紅潮し、色気さえ漂わせている。 普段真面目な少女のその表情が、僕の理性を飛ばそうとしてくる。 「じゃ、じゃあ、叔母さんも帰ってくるし……」 「つぎあたし?」 亜主美は、瞳を潤ませ、自分の顔を指差した。 「あ、い、いや、いいよ……」 「なんでよー、あたしイヤじゃないよ。恥ずかしいけど、イヤじゃない」 また、肩にタッチされる。 何だよ、これ。 相手は小6の女の子なのに、どういう事だ。 「あー……ヤバい。ヤバい空気。ヤバいけど、楽しい」 その亜主美の言葉が、全てを表していた。 「どうヤバいの……?」 「ヤバいくらい、エロい……」 「……」 瞳を潤ませ、どこを見つめているか分からない笑顔の亜主美。 「……男にそんな事言ったら、いくら小学生でも本気でエッチしちゃうぞ」 「あー……いいよ」 「……」 「してみて、ちょっと興味あるから……」 半開きのあどけない唇に、高潮した頬。 斜め上をぼうっと眺めている亜主美を見て、僕はぷつんといってしまった。 「あすみ……」 「きゃっ……」 次の瞬間、僕は亜主美を、小学6年生の身体を床に押し倒していた。 そして、夢中になって、その胸や股間をまさぐる。 「きゃ、あ……あ……」 乱れた黒髪の隙間から、真っ赤に火照った亜主美の笑顔が覗く。 「あ……あ……あ……」 亜主美は、僕から逃れるようにもがいて、身体を丸くして両膝を閉じてしまった。 「はあ、はあ、なんだよ……」 「……まって、やっぱ今日は本気のエッチはだめ」 「いまさら……」 「小6で妊娠したりしたら、ヤバいから……」 「……」 息切れ切れの亜主美の言葉で、僕は現実に戻された。 そして、実感が沸いてくる。 僕は今、小学6年生の女の子に、襲いかかっていたのだ。 「ご、ごめん……」 そう呟いた僕は、余程しゅんとしていたのだろうか。 それとも、そんな事は関係無かったのだろうか。 「でもまあ、お母さん帰ってくるまで、見せるだけならいいよ……」 「い、いいの……?」 「……」 白い歯を見せたまま、コクンと頷く亜主美。 立ち上がり、自らの手でキュロットを下げ、白い下着が見えたかと思うと、それ もするっと下ろしてしまった。 ごく……。 亜主美は、当然恥ずかしいのか、サイドに流してヘアピンで止めた前髪を人差し 指の背中でなぞっている。 「……」 息をするのも忘れてしまうくらい、僕は見入っていた。 そう、小学生の亜主美の、シンプルな形に……。 ふっくらとした緩い丘の盛り上がりに、深く切れ込んだスリット。 持ち主の体系に似て、細くすらっとしていて、持ち主に似て、どことなくませた 感じのそれ。 そう、本人と同じように、子供じゃない顔をしているくせに、未だ発毛すらして いない無垢な12歳の性器。 「さっぱりしてるよね……」 僕は、あまり良い表現が出来なかった。 「あー……」 見上げた亜主美の目が潤んで泳いでいて、僕はいよいよ壊れ始める。 「拡げてみて」 「……」 亜主美は白い歯を見せて目じりを下げたまま表情を変えず、声も出さず、一呼吸 おいてから少し足を開き、両手の人差し指と中指で、自分のクレバスを開いた。 「……小6の」 そう、小6の……。 ぴったりと閉じた扉の中の粘膜は、驚くほどの鮮やかなピンク色をしていた。 綺麗な肌色の中にそこだけ裂けて肉が見えている様は、興奮などという言葉では 片付けられない程の衝撃と共に、僕の腹の奥を握りつぶした。 あどけない少女が、こんなに卑猥な肉の器官を持っている。 かつて自分が小学生だった頃に接していた同級生の女の子も、洋服と下着の下に はこんな卑猥なものを隠していたのだ。 女の子というのは、一体何なのだろう。 そんな事を思い、また、腹の奥がよじれるような感覚に襲われた。 「やっぱり、綺麗だな……」 ただ、亜主美の性器は、12歳相応には綺麗であった。 成長と共に形が崩れていくパーツが、綺麗なまましっかりと残っている。 小陰唇のはみ出しは殆ど無いし、膣の入り口付近には、粘膜より更に鮮やかなピ ンク色をしたヒダヒダが残されている。 思ったより小さめの陰核の外皮は、中央に、それも真っ直ぐに配置されていた。 これは少女の顔を整った印象にするのに一役買っている、鼻筋にそっくりである。 「……」 その形は、亜主美の表情のように、同じカオをしているのに安定しない。 一瞬一瞬が、違う形に見える。 普段は無垢な一本線でいるくせに、拡げるとこんなにも……。 罪悪感が胸を締め付け、それが何故か腹の奥を刺激する。 開かれた禁断の扉から少女の甘い香りが漏れ、僕は、その魅力に取り付かれてし まったようだ。 「あー。もういい?」 亜主美がそう言って両手を離すと、卑猥な女性器は元の一本線へと戻っていった。 長い間広げていたせいか、スリットの始まりの部分では陰核包皮を収納出来ず、 少しだけ鼻の頭が見えている。 だがそれも、亜主美が膝を閉じると、ぴったりと元通りのスリットに戻った。 「……」 いろんな事が、頭の中をぐるぐる回る。 少し角度を変えれば生まれたままのΨと真っ赤なランドセルが一緒の視界に入っ てきた。 そして、下から見上げれば、それとあどけない少女の顔が……。 確かに首から下と繋がっている筈なのに、顔の部分だけが、ピースをする写真か ら切り抜いて貼り付けたように浮いている。 「あれ……」 一瞬、目の前の肌色の山のようなものが、何か分からなくなってしまった。 えっと……。 そうだ。 これは、亜主美の、小学生の女性器だった。 「ちょっと、触らせて……」 僕は、亜主美の答えも聞かずに、その外陰部に触れた。 「……」 ゼラチンのようなプルプルしたやわらかさの奥に、軟骨のコリコリした感触。 それが、小学生の性器の触感。 まるで、亜主美のあの、あどけない頬に触れているかのような感触だ。 ”かのような”と言ったのは、まだ、あの赤く染まるまるい頬には触れた事が無 いからだった。 小6の、思春期の女の子の肌になんて、触れていい筈が無い。 じゃあ、なぜ、僕は今、こんな無毛の性器に触れているのだろうか。 もう、訳がわからなくなってきた。 「触っていいって言ってないから」 亜主美は、注意するように僕の髪に触れた。 8歳も年下の少女に言われたのに、まるで僕は、自分より10cmも背の高い、 学級委員長の大人びたクラスメイトの女の子に注意されたような気分になる。 僕は、亜主美の言葉を無視して、更にその奥に指を進めていった。 「ちょっとー、やめてよ、アレしたくなるから……」 「アレって?」 「アレはアレ……」 ぬちゅ……。 案の定、あどけない笑顔には似つかない液体が、僕の指先に付着する。 「濡れてる……」 「あ゛ー、やだァ、うそォー」 小学生の愛液は、大人のものよりサラサラしている。 なんて事は無いのだろうが、頭の上から聞こえてくる笑い交じりの声がそういう 風に錯覚させる。 「あー、まって、ヤバいヤバい」 「……」 「ちょっとー。真剣にヤバい、真剣にアレでそうー」 亜主美は笑いながら言ってるが、あのパンツについていた真っ黄っ黄のシミを見 る限り、性的刺激を感じると尿を放出してしまうのは、事実なのだろう。 「あ、あ、やめ……」 だが僕は、むしろそれが見たいという悪戯心から、大人の女性にするように、指 先で無毛の性器、特に、尿道口に近い、陰核の辺りを擦りつけた。 「ぎゃょっ……!」 びくんと、亜主美の下半身が痙攣し、ぴゅっと水鉄砲のように、水滴が飛んだ。 ポタポタっと、それが僕のシャツにひっかけられる。 「あー……」 「イッっちゃったんだ? 小学生のくせに……」 「ちょっとォ、ヤバいからー……ちょっとアレ出しちゃったじゃんか……」 「じゃあ……綺麗にしてあげる」 僕はたまらなくなり、亜主美の下腹部に顔を埋め、Ψに口をつけ、クレバスの中 に舌を割り込ませた。 美少女の味、というには少しほろ苦い、尿の味。 小学生の恥部の味。 排尿器官なのだから、当然甘くは無い。 だが僕は、夢中になって亜主美のそこを舐め回した。 6年生ともなれば、といっても、6年生以外の小学生の性器なんて舐めた事が無 いので分からないが、きちんと、生臭いような女の味もする。 「あー……」 顔を上げると、亜主美は唇を噛んで、目を赤くしていた。 「ごめん、嫌だった?」 「ホンキでそういうのするんだ……」 「え?」 「いや、あたしこういう経験ないからー、まだ馴れてなくて……」 それはそうだろう。 床に散乱している6年国語・上の教科書を、そこにある真っ赤なランドセルに入 れて学校に背負って言ってる年齢なのに。 「あたし出来るかな……」 「え……」 「薬とか飲むのにがてで、カプセルのやつとか飲めないから。粉薬でもゼリーとか と一緒じゃないと飲めないから……」 「……」 「りんご飴も、大きいのは無理。がじがじ端っこを前歯で噛む食べ方しか出来ない からー……」 僕は、亜主美の言葉を自分の都合のいいように解釈した。 「やってみる……?」 「あー……」 やはり、白い歯を見せたまま曖昧な表情をする亜主美。 「軽く、くちつけるだけなら……」 「りんご飴よりは大きくならないよ……」 僕は、そう言いながら、亜主美をしゃがませ、窮屈そうにしていた鉄棒を、その 目の前で取り出した。 「あー……」 さすがに、その巨大さに驚いたような表情を見せる亜主美。 「大きくなった男のコレ、初めて見た?」 「あー、生では……」 「え? じゃあ、ビデオか何かで?」 「おとうさんのパソコンの動画とか……」 「そっか。最近の小学生がこういうの詳しいのは、パソコンがあるからなぁ……」 「あー……」 ニコっと笑って、前髪を撫でる亜主美。 そして……。 「ぅぉっ……」 その子猫のようなあどけない顔で、パクっと僕のモノを咥え込んでしまった。 「……」 ひたすら熱い、小6の口内。 ざらついた灼熱の舌ざわり。 眉をひそめ、ぎこちなく窄める口。 馴れない風に咥えながら、長い睫毛の瞳で上目遣いで見られると、もう10秒と 持ちそうにない。 「ぁぁ……」 僕は、やめてくれとばかりに、亜主美のおでこを手で押した。 「むほっ……、できてない?」 「いや、気持ちよすぎて……」 「あー……」 「亜主美の口の中、熱くてやばい……」 「じゃあ、遠慮いらないね。そっちだって、出そうって言ってるのに続けたから」 亜主美は、笑顔でそう言いながら僕のペニスをしごいた。 「あすみっ……!」 最近の小学生は……。 このままでは情けなく発射させられてしまうと思った僕は、亜主美から逃げるよ うに腰を落とした。 「ちょっとォ、ずるいから」 当然、追いかけてくる亜主美。 僕はそれを見越して仰向けに寝転んだ。 「口で続きしてもいいから、こっちにオシリ向けて」 「やだァ……」 「なんで?」 「それは恥ずかしいから……したくないから……」 流石、叔父さんの無修正エロ動画を見ているだけある。 僕がそう言っただけで、何をしようとしているか分かったようだ。 「いいじゃん、な?」 「えー……」 「僕だって、ここまでしたんだから本当は挿れたいけど、我慢するから」 「入れるのは絶対だめだから」 「だったら、な? お願い……」 「……」 「な?」 「あー、ヤバいもォー……」 亜主美は、そう言いながら膝立ちし、僕の顔を跨いだ。 「お……」 僕の意図とは少し違い、彼女はそのままお尻を僕の顔に落としてきた。 押し上げようかとも思ったが、それが意外に、ぷにっと柔らかくて、暖かくて、 これはこれで気持ちよく、このまま小学生のお尻に敷かれ、口でされて発射するの もいい。 なにせ、もう余裕は一切無いのだ。 僕は鼻を滑らせて大体の場所を探りあて、両手で軽く尻たぶを開き、亜主美の、 おそらく他人に一番見られたく無いであろう排泄器を丸出しにした。 「おしりの穴丸見え……」 「ちょっとォー! ヤダぁー!」 珍しく亜主美が声を張り上げて怒っているが、生憎彼女のおしりで司視界が遮ら れている為、どこか別の世界で叫んでるように聞こえ、全く気にならない。 意識したのか、キュっと絞まったアナルが可愛くて、僕は迷わずそこに舌を這わ せた。 「ひゃっ……」 流石に、亜主美は驚いたような声を出した。 くすぐったいのか、更にひくひくと動く小6の肛門。 塩辛く、苦く、ここも、お世辞にも乙女の味という訳にはいかない。 だが、それが小学生の味だというのなら、僕にとってはどんな高級な料理なんか よりも美味しいものに感じられた。 「しんじらんないから……」 「……ぅ」 そうしていると今度は、お返しとばかりに、ズリュっと熱いものでペニスを絞り 上げられた。 僕も負けじと、亜主美の肛門内に、丸めた舌を差し入れる。 「ん……」 お互い顔が見えないからか、ただただ夢中になって、それぞれの目の前にあるも のを貪っていたのかもしれない。 徐々に昂ぶる興奮と共に、最後はもう、殆ど文字通り夢の中にいるような感覚に 陥っていた。 「ぅ……」 そして、限界は、突然やってきた。 ドビュッ! 「けほっ……!」 真上に発射された白い塊が、亜主美の喉を叩く。 ドビュ、ビュッ、ビュブッ……! 慌てて顔を離した亜主美だったが、僕の欲望の白濁液は、容赦なく、少女のあど けないおでこを、眉を、頬を、唇を、そして前髪やヘアピンまでもを汚していった。 「けほ、げほっ……」 咳き込む亜主美を見ても、何故か僕は、他人事のようにそれを見ていた。 「ちょっとォ゛……」 練乳まみれの顔で僕を睨む亜主美。 「はははは」 僕は何故かそれを見て、壊れたように指をさして笑ってしまった。 自分のしでかした事の大きさに、現実を受け止める事が出来なかったのかもしれ ない。 「しんじらんないから……」 人生で最高の射精であった事は言うまでもない。 だが、その最高の快楽を得ると同時に、僕は何かを失ってしまった。 そう思わずには居られない程の、後味の悪さだった。