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未成年後見人が3000万着服 懲役3年6月判決

津地裁

 未成年後見人の立場を利用し、母親が残した生命保険金3000万円を着服したとして、業務上横領罪に問われた津市高洲町、会社員平井悦二被告(53)の判決が25日、津地裁であった。三橋泰友裁判官は「犯行は利欲的で動機に酌量の余地はない。後見制度への信頼を害した刑事責任は重い」として、懲役3年6月(求刑・懲役4年6月)を言い渡した。

 判決によると、平井被告は2007年3月30日、38歳で病死した女性の息子の後見人に選任され、同年6月15日から08年3月24日までの間、津市内の銀行で、息子名義の口座から28回にわたって計3000万円を引き出し、使い込んだ。

犯行発覚まで1年経過 チェック体制に課題

 未成年後見人に選任されながら、財産を使い込んだ平井被告の犯行は、制度の信頼を揺るがすだけでなく、選任手続きのあり方や、その後のチェック体制に大きな課題を残した。

 未成年後見人は、親が亡くなるなどした未成年の監護養育や財産管理、契約を親権者に代わって行う。家裁の調査官が面接や身辺調査をし、それを基に裁判官が選任する。今回は平井被告を監督する後見監督人を、弁護士が務めた。この弁護士から平井被告と連絡が取れないと津家裁に通報があり、犯行が発覚したが、着服を始めてからすでに1年が経過していた。

 公判で明らかにされた証拠などによると、平井被告は、死亡した女性とは05年9月から一緒に葬祭業をしていた。平井被告は女性が死亡した当日の06年9月16日に婚姻届を提出。しかし、女性は父親に「あの人は金にだらしないから籍を入れるつもりはない」と話し、姉には「私が死んだら、保険金で息子の生活をなんとかしてや」と頼んでいた。

 父親らは、平井被告の後見人選任に反対したが、津家裁の調査官は「近所の評判も悪くない」と応じたという。津家裁は「選任した裁判官が、不適切と判断するまでの事情はなかったとしている」と釈明する。

 ところが、平井被告は、風俗店で知り合った女性に280万円の車を買い与え、パチンコや競艇、風俗店などで浪費し、3000万円は1年足らずで使い果たしていた。死亡女性の時計や指輪、アクセサリーなども質入れし、息子の学資保険も解約した。一方、返済額は8万円にとどまる。女性の父親は、津地検にあてた手紙で「保険金があれば孫は十分な生活ができたのに。娘もさぞ心残りだろう」と悔しさをにじませた。

 三重大人文学部の合田篤子准教授(家族法)は「選任段階でのチェック体制を強化するだけでなく、後見人に対し、月に1度は明細書と通帳を提出させるような法整備も必要だ」と指摘している。

(加藤雅浩)


2009年9月26日  読売新聞)
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