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松田喬和の首相番日誌:名指揮者はバシッと言う

 歴代首相を観察すると、「調整型」と「率先垂範型」に大別できる。調整型の典型は竹下登首相。「つかさ、つかさに任せる」が口癖だった。

 率先垂範型は、大統領型を目指した中曽根康弘首相と、「ワンフレーズ政治」を確立させた小泉純一郎首相が双へきだ。いずれも人気が高く、5年前後の長期政権だった点も共通している。

 鳩山由紀夫首相は「政治主導」を掲げた点では垂範型と見える。だが、19日のぶら下がり会見で自らのリーダーシップを問われ、「コンダクター的な役割」と答えた。

 その上で「指揮者がどこまで目立ちすぎた方がいいのか、目立たない方がいいのか。いろいろ議論があると思うが、一番大事なことはハーモニーがきれいに奏でられることだ」と力説した。

 「脱官僚依存」は鳩山政権の旗印だ。にもかかわらず、日本郵政の次期社長に元大蔵次官の斎藤次郎・東京金融取引所社長を起用することとなった。小泉政権の金看板だった「郵政民営化」を転換させる重大な人事だ。しかも斎藤氏は小沢一郎幹事長に近い人物で知られている。

 鳩山首相が知ったのは、発表の前夜。亀井静香金融・郵政担当相からの電話だった。21日、経緯をあっさり告白した。

 「皆さんと同じような驚きを感じたところがある。いわゆる元官僚ではないかということを議論した」「(退官後)14年も縛って『脱官僚』だからだめという理屈より、本当に能力ある方ならば認めるべきではないか、という結論に達した」

 鳩山首相は党務一切を小沢幹事長に委ねている。今回の日本郵政人事は政務の範囲であるはずだ。しかし、自ら決めることなく亀井担当相に任せた。これまでの調整型首相も、権威の裏付けとなる人事権は容易に手放さなかった。

 行政刷新会議のメンバーでもある京セラの稲盛和夫名誉会長は、筆者の質問にこう言明した。「僕がコンダクターで不協和音が出れば、バシッと文句を言います」(専門編集委員、64歳)=毎週土曜日掲載

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 ■若手記者取材帳

 ◇握手と指切り

 「あれ、総理じゃない?」「ウッソー、どこどこ」

 20日午後、川崎市。選挙応援でJR武蔵溝ノ口駅前に現れた鳩山由紀夫首相を一目見ようと集まった人が、こぞって携帯電話で写真撮影。同夜のJR横浜駅前では首相に握手を求める人が宣伝カー前に殺到した。

 取材していて、群衆に押しつぶされそうになった。肌で感じる人気ぶりだ。ただ演説を聞いていた主婦(67)のつぶやきが耳に残った。「一生懸命マニフェストをやろうとしているよね。一気にはいかないけど、一つずつやってもらいたい」

 人気が高ければ高いほど反動も大きい。国民との約束であるマニフェストを忘れないでほしい。【後藤豪】

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 ■首相の1週間

 ■10月17日(土)

 東京国際映画祭オープニングセレモニーで緑のカーペット上を歩き「映画スターになった気分」。

 ■18日(日)

 私邸付近のイベントに飛び入り参加。「(地域の)皆さんとの接触は政治家にとって一番の楽しみ」

 ■19日(月)

 概算要求が95兆円超に膨らんだ10年度予算について「92兆円にとどまらず、もっと削減する努力を」。

 ■20日(火)

 川崎市のチョーク工場を視察。障害者の働く姿に「感動しました」。会長に「友愛」の色紙を贈る。

 ■21日(水)

 ゲーツ米国防長官と会談。斎藤次郎氏の日本郵政社長起用に「かなり驚いたが、面白いと思った」。

 ■22日(木)

 行政刷新会議の作業チームを「必殺事業仕分け人」と激励。昼食にサンドイッチをつまみながら閣議。

 ■23日(金)

 閣僚の資産公開で最高額となり「恵まれた資産を有しているのは事実」。タイに向け出発。

毎日新聞 2009年10月24日 東京朝刊

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