日本航空、全日本空輸グループの国内線計274路線のうち、7割超の193路線が損益分岐の目安とされる搭乗率60%を割り込み、「赤字」状態に陥っていることが、4〜8月の輸送実績などから分かった。昨年同期は全路線の半分以上が「黒字」だった。ドル箱の羽田便も70路線中50路線が60%未満で、ローカル路線を支えるほどの収益源にはなっていない。不採算によるリストラ対象は計34路線。不況などで旅客数は前年同期よりも約430万人減少しており、休止検討の路線は増加が必至だ。
搭乗率は、提供座席数に対する旅客数の割合。運航コストは航空会社や路線ごとに異なるので、乗員や航空機のやり繰りなどから搭乗率が高くても投資効率が悪い路線や、逆に低くても黒字の路線はあるが、航空業界では「60%が損益分岐点」ともいわれる。
旅客数は、日航はJALエクスプレスなど関連7社の計151路線、全日空はエアーニッポンなど関連5社の計123路線で集計した。全路線に占める「赤字」比率は70.43%。昨年同期の47.85%から、22ポイント以上も悪化した。
日航は羽田―石垣の91.6%を筆頭に、42路線が60%に達したが、残る109路線はそれ以下。中部―花巻、新千歳―秋田など31路線は40%台、大阪(伊丹)―松本など5路線は40%にも満たない。
航空会社の収益は「羽田便のもうけで、地方と地方の路線や離島路線を支える構図」(国交省)になっている。日航は羽田便35路線のうち、旭川、関西、鹿児島など10路線は60%超だったが、熊本、函館、広島など25路線はそれに届かなかった。
日航は経営再建に向け、11年度末までに国内29路線からの撤退を表明。中部―花巻(43.1%)、伊丹―松本(38.3%)など10路線は50%未満だが、新千歳―静岡(86.5%)や羽田―神戸(64.8%)など10路線は60%超だ。搭乗率は高くても、費用対効果が悪いための撤退とみられる。前原誠司国土交通相が選任した「JAL再生タスクフォース」は現在、再建計画を策定中。撤退路線が増える可能性もある。
一方、全日空は関西―函館(87.0%)など39路線が60%超で、84路線は未到達。52路線は50%台、20路線は40%台、伊丹―大館能代や中部―徳島など12路線は40%未満だった。
丘珠(おかだま)(札幌市)発着の中標津(なかしべつ)(66.2%)、函館(54.2%)など5路線からの撤退を計画中。近く発表する中間決算で営業赤字を計上する見通しで、日航同様、撤退対象が上積みされる恐れもある。(川見能人、菊地直己)