合成麻薬MDMAを使用したとして麻薬取締法違反罪に問われた俳優、押尾学被告(31)の初公判が23日、東京地裁で開かれた。
押尾被告の初公判で注目されていたのは、MDMAを飲んで死亡した女性の容体急変から通報に至るまでの“空白の3時間”。現在、警視庁は保護責任者遺棄致死罪などの適用を視野に捜査を続けているが、今回、検察側から女性の救護状況は明らかにされなかった。
刑法に詳しい板倉宏日大名誉教授(75)は、女性の死を左右した3時間が検察側から“スルー”されたことについて、「保護責任者遺棄致死罪を立件、起訴する可能性が高いからこそ、あえて今回は麻薬取締法違反罪に焦点を絞ったのでは」と語る。
「もう1回は公判が開かれると思ったが、即日結審したのは、麻薬取締法違反罪の判決を済ませた上で、この事件の一番の問題である保護責任者遺棄致死罪に取り組んでいくためではないか」と説明した。
また、土本武司白鴎大学法科大学院教授(74)は「麻薬取締法違反罪の公判で、まだ立件も起訴もされていない罪について本来、法廷で触れることは許されない」とした上で、「今回、(薬物使用で)求刑まで行ったということは、それぞれ別の事件として扱いましょう、と裁判所が承認したのでは」と見る。 「被告とMDMAの使用、被告と保護責任者遺棄致死、別の2つの事件として十分に成り立ちます」と説明。「今回、死亡女性の父が裁判を傍聴しているように、国民も保護責任者遺棄致死罪の部分について一番、関心を持っていることは分かっているから、徹底的な捜査はなされるはず」と分析している。