在日米軍関係者が「公の目的」に限って発行される有料道路の無料通行証を使い、レンタカーなどで私的に観光旅行していた疑いがあることが、会計検査院の調べで分かった。通行料は防衛省が国費で負担しており、検査院は同省に「使用目的に疑いがあるものは、十分な調査を行うべきだ」などと改善を求めた。
米軍関係者が基地間などを「公の目的」で軍用車両で移動する際の道路使用料は、日米地位協定に基づき、防衛省が毎年9億円前後を負担している。08年度は約97万台分の約8億6200万円を支払った。
高速道路の場合、在日米軍が発行する通行証に、氏名や役職、車両ナンバーなどを書き、料金所を通過するごとに1枚ずつ渡す。「公の目的」の範囲は米軍関係者やその家族の福利厚生活動も含まれているが、対象は軍用車両だけ。私有車には利用できないことや、運転手と発行責任者が同一人物でないことなどが義務づけられている。
検査院は、通行証の使用が夏休み期間の8月に最も多いことに着目。08年8月に使用された通行証1万8440枚(支払額約2126万円)を中心に調べた。
その結果、レンタカーに使われていた通行証が5149枚あった。曜日別では、土曜日に978枚、日曜日796枚、米国の祝日に243枚と、休日に多く使用されていた。また895枚は通行料が4千円以上の高額の区間で使用された。
防衛省は、レンタカーの使用についても「軍用車両」として取り扱っていた。記載内容の不備についても米軍側に照会せず、支払いに応じていた。
検査院は、同省を通じて米軍側に説明を依頼したが、米軍が協力しなかったため、実際に「公の目的」かどうかの確認ができなかったという。
在日米軍司令部広報部は取材に「福利厚生の目的での観光ツアーなら、レンタカーを使用しても公務扱いにしている。私用目的なら通行証は発行していない。ただ、記載漏れやミスがあったことは申し訳なく思う」と話している。
同省は「通行証の記載漏れがないかなどを十分に確認するとともに、米軍側に対しても、公の目的で使用しているかを調査する態勢を取るようにする」とコメントした。(前田伸也、中村信義)