|
きょうの社説 2009年10月24日
◎本多家の遺構発見 「八家」のスケール示す活用を
金沢市の本多の森公園で進められている本多家の遺構調査で、屋敷の間を結ぶ道の跡や
石垣などが確認された。本多家は「加賀八家」と呼ばれた加賀藩家老の筆頭で、上屋敷だけでも約1万坪の敷地が広がっていた。今回の発見はその規模の大きさの一端を示すものである。金沢が「複合城下町」と呼ばれるのは、大名クラスの1万石以上の禄高をもつ加賀八家 の広大な屋敷が、金沢城を取り巻くように配置されていたからである。八家の遺構を調査、整備することは「加賀に殿様9人あり」と言われた加賀藩の実像を都市構造の面から浮かび上がらせるとともに、金沢が城下町の代表格であることをアピールすることにもなる。 金沢市内には金沢医療センターを囲む形で加賀八家の一つ、奥村宗家の土塀が現存し、 全長282メートルに及ぶその偉容は屋敷地の破格の大きさを物語っている。本多家の遺構もまた八家のスケールを示す貴重な財産であり、市は可能な限り整備を進めてほしい。 遺構が発見されたのは手つかずの自然が残る本多の森公園の急斜面で、道の跡は当主が 居住した上屋敷と中屋敷を結んでいたとみられ、急斜面をつづら折りに約40メートル続いていた。道の途中には門の跡もあった。さらに上屋敷の石垣が高さ1・5メートル、約100メートルにわたって確認された。 城下町の中に小藩が組み込まれたような「複合城下町」の痕跡が今もなお良好な状態で 見つかるのは金沢くらいだろう。今後も調査を継続すれば新たな発見が期待できる。 周辺には本多家上屋敷から移築された御対面所「松風閣」や下屋敷跡の庭園「松風閣庭 園」なども現存する。遺構を歴史の道などとして整備できれば本多家の遺産が面的に広がり、「八家」の往時をしのぶ象徴的な空間になろう。近辺で2011年に完成予定の「鈴木大拙館」と合わせ、一体的な整備が望まれる。 野田山では前田家墓所に続き、その周囲にある加賀八家墓所の国史跡指定をめざす調査 が進められている。八家の遺産にも光を当て、「歴史都市」の魅力に厚みを加えていきたい。
◎緊急雇用対策 2次補正が必要になる
政府がまとめた緊急雇用対策は職業紹介や資格取得の支援強化、雇用関係基金の前倒し
執行など、新規予算を必要としない施策に限られ、あくまで「つなぎ」の印象が強い。「10万人の雇用創出」を本気で目指すなら、財源を伴う新たな手を打たないと、これから年末にかけて、雇用環境はますます悪化するだろう。北陸でも有効求人倍率は石川県、富山県ともに0・5倍を下回る超低空飛行が続いてい る。骨太の雇用対策、経済対策を盛り込んだ09年度第2次補正予算の策定作業をすぐにでも始めてほしい。 自公連立政権の補正予算を3兆円近く削った後だけに、2次補正はやりにくい面がある かもしれないが、景気が失速しそうな状況下で、削った分を再び経済対策として使うことに矛盾はない。予算措置を講じてこそ、実効性のある施策が打ち出せる。 緊急雇用対策の柱は、雇用創出が見込める産業として、労働力の需要が高い介護や農林 業などに着目し、介護福祉士やホームヘルパー2級の資格を無料で取得できる制度である。ただ、これは自公連立政権時代につくられた月10万円の生活支援給付金を受け取りながら職業訓練ができる「緊急人材育成支援事業」の焼き直しともいえ、実質的な中身はそれほど変わらない。同支援事業は、先の補正予算見直しで約3500億円分の執行が停止されているが、この分を活用すれば、当面の財源は確保できる算段だろう。 ハローワークの窓口で職業紹介や生活保護手続き、住まいの相談などができるワンスト ップ・サービスや、来春の新卒予定者への就職支援として、ハローワークで相談に当たる専門職を配備するなどの施策は求職者の利便性をそれなりに高める効果がある。 だが、いずれの施策も厳しい雇用情勢の前では迫力不足だ。日銀の景気判断は改善して いるとはいえ、企業の生産活動はまだまだ弱く、新規採用にまでつながっていない。景気の足元がいよいよ怪しくなる前に、しっかりとした対策を打たないと、失業者が加速度的に増えかねない。
|