加須市出身のプロボクサー、近藤明広選手(24)が、地元名産のこいのぼりのデザインを縫い付けたトランクスをトレードマークに「世界」を狙っている。市の観光大使も務め、日本ライト級タイトルマッチには加須近隣からも約200人が応援に駆け付けるなど、地元の期待を集めている。近藤選手は「勝ってお客さんを感動させる試合をしたい」とさらなる飛躍を誓う。【山崎征克】
日本ランキング8位だった8月に後楽園ホールであった三垣龍次選手との日本ライト級タイトルマッチ。初挑戦の近藤選手はゴング直後から攻勢。早々に得意の右フックで相手をぐらつかせた。「夢中で連打した」と、一回45秒のTKO勝ち。経験で勝る王者のペースを序盤で乱す作戦通りの勝利を収め、リング上で号泣した。
ボクシングを始めたのは市立加須西中3年の時。元世界王者の畑山隆則さんにあこがれ、鴻巣市のジムに通い始めた。栃木の高校に進学。インターハイで準優勝して東洋大に進んだが、「早くプロのリングに立ちたい」と2年で中退してプロ入りした。2戦目で判定負けしたものの、その後は勝ちを積み重ね、13戦目でタイトル奪取にこぎ着けた。
試合では、トランクスに市の名産品のこいのぼりのデザインや市章などを縫いつけ、加須市をアピールしてきた。「加須ってどこにあるの?」と聞かれることが多く、「生まれ育った土地を多くの人に知ってほしい」との思いがあるからだ。
ボクシングに集中するため、東京都台東区の所属ジムで寝泊まりするが、日中は加須で田んぼの周りを走ったり、筋力トレーニングを兼ねて実家の産廃業を手伝うことも多い。
タイトルマッチには約500人の応援団が駆け付けた。近藤選手は、「お客さんが『勇気をもらった。ありがとう』と涙を流して喜んでくれた。何より励みになる」と話す。
12月にはランキング1位の選手との初防衛戦に臨む。「前回は短時間の決着だったので、まぐれと思っているライバルも多い。防衛を重ねて強さを見せつけます」。力強く言い切った。
毎日新聞 2009年10月23日 地方版