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よしながふみ「大奥」 [読書]

これをブログで紹介するべきではないかもしれない。なぜならいい年こいて立ち読みしちゃったからデース(赤っ恥)
でもでも、違うんです。前からこの作品の評判は目にしていて、ずーっと気になっていたんですけど全然知らない作家だし、漫喫ででも読もうと思って保留していたら、昨日たまたまABC(そう、ABCで立ち読みしたのだ。最低です。)で見かけて、ちょっと読んでみようーと手に取ったらあまりに面白くて止まらなくて全部読んでしまったのです。ほんとです。後でチャンと買いますから!…と言い訳はさておき。
(追記:検索でこの記事に来る方が未だに多いようなので断っておきますが、今ではちゃんと全巻所有していますYO!) これ、いわゆるパラレルワールド的ファンタジーかと思っていたら、実は「裏歴史」物だったんですね。1巻目はヒロイン(敢えて)水野の江戸っ子ぶりと暴れん坊将軍吉宗の男らしさが気持ちよく、楽しんで読んだのですが、男大奥の秘密がひもとかれる2巻目の半端ないシビアさにはよりいっそう引き込まれてしまいました。これ、1巻目だけくらいならてきとーにハンサム集めてドラマ化すれば当たるかもって考えるバカが出るかもしれませんが、無理じゃなあ。

言ってみればジェンダーロールが完全に逆転した江戸時代が描かれている訳ですが、ここに描かれている女性の強さ(春日局も含め)と男性の弱さをどう受け取るかでその人の価値観の踏み絵となりそうです。男大奥の陰湿さはまさに『女の腐った』世界ですが、これを「女が描いてるからそうなる」と取るか、「男って実はそういうものなんだよね」と取るか。ちなみに男大奥の「新人いじめ」については、作家が女性しかもBL系と知ると「なるほど」と思ってしまいがちですが、単純に男性の欲望ってそうなんじゃん?とも言えますしねえ。ともあれ、深い。
君主の存在意義という(厳密には将軍は君主ではないということは置いといて)テーマは個人的にもツボであり、非常に多面的な作品であると思いました。これは一件キワモノっぽいイメージや作家への先入観で敬遠すると損をするタイプの作品ですね。

余談なのですが、昨日それより前に書店で「フランス革命」の文字を帯に見つけ、たまたま手に取ったコミックが実は同じ作家の作品でした。よく裏表紙を読んだらBL物だったのでうへっと思って慌てて置いたのですが、こういう作品を描く人のものなら面白いのでしょうか…ちょっと気になっているのですが…ううううううううむしかし…

大奥 第1巻 (1)

大奥 第1巻 (1)

  • 作者: よしなが ふみ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2005/09/29
  • メディア: コミック


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コメント 12

みうら

息子のインフルエンザがうつってしまったような私ですが、よしながふみと聞けば書かずにおられません。
はっきり申しましょう。あたくし的には、彼女にハズレはございません。
フランス革命もの、ということは、ジェラールとジャックでしょうか?ちょっとBL色強いですが、なかなか骨太ですよ。それから、彼女の代表作となった「 西洋骨董洋菓子店 (アンティーク)」は、お読みになりまして?驚くほどのストーリーテラーぶりです。伏線の拾い方がものすごく緻密です。青春群像を書いた「フラワーオブライフ」も重いくせに笑っちゃうし、「愛すべき娘たち」は痛いし。
男性同士の云々と言ったものを好む私ですが、よしながふみ氏だけは、もしもそういう題材で読者を減らしているのなら、もう普通のマンガでよいから書き続けてほしいとおもう人です。一貫して、ジェンダーの揺れといったものを扱っているようですよ。

「大奥」は、その中でも最新かつ最高の作品じゃないでしょうか。書くと長くなってしまうので大雑把になってしまいますが、これを読んでいると、腐女子と呼ばれる人たち(多分私も含む。ライトですが)が追いかけているものは、何かどこか違っていたのではないのかとまで思ってしまいます。私は、本当に男性同士のファンタジーを追いかけていたのだろうか。そんなことまで考えさせられてしまう作品です。
三巻が待ち遠しいですなあ。

あああこんな事書いてまた熱が上がる。しかも二回続けてマンガネタを熱く語るとは、ほんと申し訳ない次第であり(汗)。
by みうら (2007-03-04 21:54) 

たけうち

うわー、誰か教えてくれないかなと思って書いたらこんな熱い方が身近にいたとは!
ていうかお大事に!ネットしてる場合ではありませんよ〜

私、西洋骨董洋菓子店は名前だけ聞いたことがあったという程度で、彼女の名前を個別認識するのも作品を読むのもこれが初めてなんでございます。だから、後からそっち系の作家と聞いてびっくりしてました。まあ、そういう先入観もいかんのかもですけど。
えっと私が見かけたのは「ジェラールとジャック」でした。近くに「執事の分際」も置いてあったのですが、これは表紙がもろそちら風でしたので手に取れず…わたしこれでもゲイねたはオッケーですがあからさまなBLと801はダメなのです(その線引きは微妙かもしれませんが)…取りあえず、一冊だけ読んでみようかな…
ジェンダーじたいはとっても私好みのテーマではあるのですけどね。
by たけうち (2007-03-05 00:06) 

ゆかっぱ

私もね、去年のなんかの書評でコレを見つけて、
さっそくシンガで購入して読みました!!
サイコーにおもしろい!よしながふみっていう
名前は知ってたけど、たけうちさんと同じ理由で
ちょっと敬遠してたのです。でも、今までずっと
読まずに来たのがもったいないと素直に思いました。
早く3巻が出ないかな〜!!!
by ゆかっぱ (2007-03-05 00:47) 

たけうち

>ゆかっぱさん
うーむさすがシンガ、早いわ〜(苦笑)
これはほんとうに色々な意味でもったいない作品ですよね。TVの「大奥」と混同されちゃいそうだし、筋は一見キワモノっぽく見えるし…
個人的には、「あ、この作者時代劇好きだな」てあちこちで思えるのが面白かったり(大岡越前もカッコイイ!)もします。
ほんとうに続きが待ち遠しい感じです(いいからまず買え)。
by たけうち (2007-03-05 22:19) 

たけうち

漫喫に行ってみるも置いておらず(結局ジパングとガンダムを読んで帰る)、書店で逡巡した後「洋菓子店」の1を買ってみました。おんもしろかったです。さらに帰りにブックオフで「フラワー」の1を立ち読み。さらに「執事」も見つけたので恐る恐る半分くらい読んでみました。面白かったし、キャラクターが本当に立体的でやはり巧い人だなと思ったのですが、やっぱり「別にいちいちやらなくてもええやん…しかも全部男同士じゃなくってもええやん…」とか思ってしまうのはそもそも論で全く無駄な疑問なのでしょうね…

ま、とにかくやっぱりすごく「読ませる」作家さんだなというのは良くわかりましたしそういうの大好きですので、色々読んでみたいと思います。
by たけうち (2007-03-10 23:31) 

Cheeky

洋菓子店は何年か前にタッキー主演の月9ドラマになっていませんでしたっけ。ああ、密林では3~5週間後の発送になってる。
私も『大奥』が面白かったので『ジェラールとジャック』と『執事の分際』に手を伸ばしてのけぞった組です(笑)一般的なBLものを読んでいないので他のBL作家との比較は出来ませんが、実に面白かったです。
『ジェラールとジャック』は物語運びの確かさと映画を見ているような間の取り方の巧みさが良いですね。
さらに驚いたことに巻末の解説を・・・書いていたのは大学時代の語学クラスの友人でした・・・。ドイツ語クラスって漫画好き多いんですよ。NATOの強面や縞りんご好きで選ぶから(←それは私)
by Cheeky (2007-03-11 16:17) 

たけうち

>Cheekyさん
ドラマ、やってましたよね。その時はまったく気にもとめてませんでしたが。橘が椎名桔平っていうのが合っているようないないような。「ベント」の前半『だけ』妙にはまっていた椎名なのであの軽いノリはうまそうですけど…
>巻末の解説
わははは!すごいですね、それ!
ドイツ語クラスかあ…確かに、ドイツ語って汎用度高くないし、趣味だけで選ぶ人は多そうですね。

今日は洋菓子店の2−3巻を読みましたが、フランス人とフランス映画に関する洞察に大爆笑。この作品みたいに自然に挟まっていると全然オッケーなんですけどねー。BL描いていていも独自の世界に耽溺していない、バランス感覚と鋭い観察眼が魅力なのでしょうね。
つうか、お菓子がおいしそうすぎです(涙)
by たけうち (2007-03-11 22:01) 

たけうち

「洋菓子店」4巻と「ジェラールとジャック」読みました。
取りあえず、ジェラールの辛辣なロベスピエール評に爆笑。そんな不器用なロベスピエールが私は好きですが〜(苦笑)
うーんとですね、やっぱりどうもこのジャンルの独特な何かが私の性に合わないのですが、面白かったことは面白かったです(やっぱりエロはなくてもいいんじゃんとは思うのですが)。本筋の、なんかそもそも「萌えポイント」ありきのちょい無理ある設定よりも、ジェラール本人の物語の方が革命ものっぽくて面白かったですね。「贖罪」というのがきっとこの作者の重要なテーマの一つなんだろうなあと思いましたです。そんなに歴史歴史していないけどフランス革命のツボは押さえていますね。
じつは「娘たち」も買ってしまってプチはまり状態です。
by たけうち (2007-03-14 08:57) 

みうら

きゃーなんか静かにいろいろ読んでもらってて嬉しかったりします(笑)。
そうそう、エロなしでもいいです、と思うのは、やっぱり年齢的なものなんでしょうかねえ(汗)。「贖罪」というのは、なるほど確かにそうですね(開眼)。で、それが上手く昇華されるのか、よしながふみ氏の作品は読後感が良いのが多い気がします。
ああそうだ、やはりBLではあるんですが、同氏の「ソルフェージュ」という作品はどうっすかね。日本が舞台で音楽教師ものですが、ちょっと映画化してもらいたいような作品です。たけうちさん結構いけるかも知れません。もし見つけたら是非。
by みうら (2007-03-18 22:50) 

たけうち

>みうらさん
凝り性なもんですから…
エロは決して嫌いではありませんが、どうもやっぱりこの手のはテイストが違うようです。スミマセン。何の話じゃ。
>読後感が良い
それはありますねー。「洋菓子店」のラストとか、ちょー好きです。
>ソルフェージュ
ううっ!それってオペラ歌手になる子の話ですよね。気にはなっていたのです…ですが…
by たけうち (2007-03-18 23:50) 

たけうち

そしてこっそり「ソルフェージュ」の感想を書いておきます。
近所のブック○フになぜかよしなが作品が大量入荷していたので、題名作品のシリーズだけささっと読んできました(人の少ないときを狙って…)。
うーん、正直微妙〜でした。なんだか、音楽がBLの「味付け」としてしか使用されていない感じがしました。歌、でなければならないとは思えないと申しましょうか。家族との関係あたりの話は面白いし、キツイ女の子とかも好きなんですけれども。
つか、田中、あのキャラなのに声はバスバリトンなのかよ!!(笑)
…などとマニアックな突っ込みをつい入れてしまって。その他にもモーツァルトがあれだけ出てきてるのに留学先はなぜイタリア??
とか、なんかそういう細かい違和感に、あまりこだわりがないのだろうなというのが感じられるといいますか。
演目が「フィガロ」てあたりは、フランス革命好きならではなんですけどねえ〜。スミマセン、せっかく推薦して頂いたのですが、逆に私のこだわりエリアすぎて駄目だったみたいです。
あとですね、私彼女の描く「頭の弱い系の男性」が苦手だということに今回気づきました。
by たけうち (2007-03-29 23:17) 

みうら

きゃー、コメント忘れてた。
そらそうだ、ソルフェージュとたけうちさんは取り合わせ悪いですよねえ(笑)。失礼しました。あのキャラでバスバリトン、は、私も同じ突っ込みをしておりましたよ。
彼女の描く「頭の弱い系の男性」ですが、私もあまり得意じゃないんですよね。上手く説明できないのですが、あのキャラって、よしなが氏の中で過渡期的なキャラだと思うのですよ。BLを描かなきゃいけない、という呪縛が感じられるんだけど、違うのかな。
by みうら (2007-04-10 08:32) 

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