“優しいヤミ金”という新たな手口が横行
そもそも消費者金融は、なぜ“貸し渋り”を行っているのだろうか。大手や中堅の消費者金融では貸出金利の上限を前倒しで引き下げており、融資審査を厳格化している。さらに過去に顧客が支払いすぎた「過払い利息」の返還訴訟が相次いでいるため「(消費者金融の)経営が圧迫されている。さらに金融危機の影響で資金調達が難しくなっているため、融資を抑えざるをえない」(大手消費者金融)と話す。
厳しい経営環境が続いていることもあり、大手各社は“優良顧客”をめぐって、融資合戦を繰り広げている。その一方で、経営体力が乏しい零細企業は大手との金利競争に負け、優良顧客を囲い込むことが難しい。従って優良でない顧客に高い金利で貸し付けることが多くなり、その結果、焦げ付く……といった負のスパイラルに陥りがちだ。
金融庁によると2009年の貸金業者数は6178社で、1986年のピーク(4万7504件)と比べると、実に4万1326社が廃業した。財務局登録業者を見ると、1999年3月末の1195社から2009年3月末には473社に、各都道府県の登録業者は同2万9095社から同5705社に、それぞれ減少している。この数字を見て分かるように、地方の貸金業者が廃業に追い込まれているようだ。
「かつてヤミ金融と呼ばれた業者は、(現在)振り込め詐欺をしている人が多い。そして廃業した零細業者の中には、ヤミ金を始めたという声も聞く。彼らは知り合いだけにお金を貸し、強引な取り立てをしない。金利も年率40%〜50%ほどで貸しているケースが多く、苦情や被害の声は少ない。そうした業者を“優しいヤミ金”と呼んでいる」(大手消費者金融)
改正貸金業法が公布された背景には、ヤミ金融を排除することや多重債務者を救うことなどがあった。そして完全施行まで残り1年余りとなったが、消費者に対し十分に認知されていないという現状。また法律が引き金となり、優しいヤミ金という新たな手口が横行しているようだ。
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