厳しい取り立てを行わないヤミ金融
ヤミ金融に接触する人たちに、心理的な特性はあるのだろうか。2007年の調査によると、ヤミ金融に接触した人たちは「自己統制力」(自らをコントロールする力)、「対処様式」(困難に直面したときの処理態度)、「社会的向性」(社交的、人間好き)の点で、バランスを欠いている特徴がうかがえた。例えばヤミ金融に接触した人は、お金がないのにもかかわらず、友人から飲み会に誘われると、ついつい参加してしまう。そして、ヤミ金融からお金を借りるまでして飲み会に参加してしまうようだ。
しかし直近の調査では、ちょっとした“異変”が起きた。2008年に実施した調査によると、ヤミ金融に接触した人は、完済者と比べ心理的な特性に大きな違いが見られなかった。「これまでヤミ金融と接触しなかった一般的な市民が、彼らからお金を借りているのではないか」と堂下准教授は見ている。また彼らは返済能力が高いため、ヤミ金融も厳しい取り立てを行っていないという。こうした背景もあり、彼らのことを“優しいヤミ金融”と呼ぶ人が出てきているようだ。
ヤミ金融市場を拡大させることに
金融庁が改正貸金業法を推し進めた理由は、「多重債務問題の解決と安心して利用できる貸金市場の実現」にある。しかし現実には、借り手である利用者には「借りにくく」、貸し手である消費者金融には「貸しにくい」状況を招いてしまった。そして、皮肉なことにヤミ金融の市場を拡大させることとなったようだ。
“優しいヤミ金融”の実態について、堂下准教授は2つのパターンがあるという。「1つは利用者の借入状況について詳しい事例が多いことから、かつて貸金業を営んでいた人たちが水面下で活動しているのではないか。もう1つは携帯電話の番号のみを連絡先とし、張り紙やチラシなどの広告で顧客を集める“090金融”が暗躍している」という。
金融庁が集計した「貸金業者に係る苦情等件数」によると、2007年度と2008年度の無登録業者(ヤミ金融)に対する苦情件数はほぼ横ばいだ。ヤミ金融がどこまではびこっているか、正確な数字を把握するのは難しい。しかし「改正貸金業法が完全施行される2010年6月以降、ヤミ金融の被害に遭う人は増えるだろう」(業界関係者)といった見方が強い。
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