審査の厳格化と過払い返還請求によるコスト高によって、消費者金融はどのような状況に陥っているのだろうか。2007年と2008年の顧客情報を比べると(2008年5月に調査)、これまでにない“変化”が浮き彫りになった。
例えば顧客の職業を見ると、トップは「会社員」で前年比1.2ポイント増の50.7%に。その一方、「自営業」(同0.8ポイント減の12.4%)や「パート/アルバイト」(同0.8ポイント減の10.2%)、「派遣社員」(同1.9ポイント減の5.0%)がそれぞれ落ち込んだ。また個人・世帯の平均年収、預貯金はいずれも前年を上回る結果となった。
「消費者金融でお金を借りる人といえば、低所得で預貯金もゼロ」――。こんなステレオタイプのイメージを抱いている人も多いかもしれない。しかし実態は異なり、預貯金(平均値)にいたっては前年を大きく上回り、334万円だ。こうした傾向について、堂下准教授は「消費者金融は審査を厳しくしているため、優良な顧客が増えている。そのため、消費者金融の市場は“健全化”されつつある。しかしアルバイトや派遣社員といった低所得者層にとって、お金を借りにくい状況になっている」という。
ヤミ金融に接触する人たち
堂下准教授は消費者金融の市場が“健全化”しつつあるというが、ヤミ金融に接触しているのはどんな人たちなのだろうか。2007年と2008年を比較すると、「消費者金融から希望通りに借りられなかった」という人でヤミ金融に接触したのは、30.1%から34.4%に増加。逆に「希望額を借り入れることができた」という人は14.3%から13.1%に減少した。またヤミ金融に接触し、実際にお金を借りた人の借入率を見てみると、「希望通りに借りられなかった」という人は9.4%から16.5%に拡大した。「改正貸金業法による規制強化は、消費者金融からお金を借りられない人を増やした。そして拒否された人たちの中には、お金を工面するためにヤミ金融から借りている人もいるようだ」(堂下准教授)
ヤミ金融に接触したという人は、どういった理由でお金を借りようとしたのだろうか。最も多かった理由は「医療費」で60.2%、次いで「外食費、飲み代」(53.7%)、「遊興費、娯楽費」(51.6%)、「冠婚葬祭費」(50.0%)、「旅行、レジャー費用」(48.0%)と続いた。一方、ヤミ金融からの借入率で見てみると、「子どもの養育費」(54.2%)が最も多く、以下「旅行、レジャー費用(出張代や帰省代も含む)」(50.6%)、「引越し代」(47.9%)、「冠婚葬祭費」(46.6%)、「医療費」(45.3%)と続いた。
接触率でトップだった「医療費」は、借入率で5位に。また借入率トップだった「子どもの教育費」については、接触率で7位に。このほかにも接触率と借入率の上位に違いが出ているのが特徴だ。この結果について、堂下准教授はこのように分析する。「マスコミなどでは『ヤミ金融は返済能力を失った人たちにお金を貸している』などと報じている。しかし実態は、子どもの教育費や故郷への帰省代などのためにやむなくヤミ金融と接し、被害に遭ったという人たちが増えている」
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