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インタビュー

『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(後編) (2/2)

[土肥義則,Business Media 誠]
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 警察は「お前はヤミ金だろう」と問い詰めてみるものの、肝心の証拠が出てこない。ひとりのヤミ金のために、たくさんの捜査員とお金をさくことは難しい。なぜなら被害額が小さいからだ。ヤミ金業者をつかまえるよりも、覚せい剤の売人を見つけた方が効率的――。こういった理由でなかなかヤミ金にまで手が回らないのが現状だ。

 またこの問題は民事不介入なので、被害者本人が訴えないと、警察は動いてくれない。ソフト闇金のうまいところは、お客に被害者意識を持たせていないところ。自分が被害者だと感じなければ、その人は警察や弁護士に相談しないからだ。

総量規制の影響は?

yd_usijima.jpg 闇金ウシジマくん』(真鍋昌平、小学館)

――2010年に総量規制(借入総額が、年収の3分の1までに制限されること)が導入されますが、その影響はどのように見られていますか?

 総量規制が導入されれば、ヤミ金の人たちにとって、どんどん“いい時代”になっていくだろう。よりソフトに、より狡猾に、被害者からお金を絞りとっていくはず。ヤミ金の中には「ボクたちはカウンセラーなんですよ」という人もいる。覚せい剤中毒の人から「お金に困った」という連絡があれば、ヤミ金はお金を貸すだけではなく、人間関係の相談にまでのったりする。「こんなことは正規の業者じゃあ、できないでしょう? だからボクたちはカウンセラーなんですよ」と言うくらい、彼らは思い上がっている。

 しかしこうした姿勢で構えていても、いまはヤミ金にお客がやって来る時代。さらに総量規制が導入されれば、借りられない人たちが増えるので、彼らが言うところの“カウンセリング”が増えていく。そうしてヤミ金市場はより拡大し、より成熟していくことだろう。

 繰り返し申し上げるが、ソフト闇金を利用している人に被害者意識がない点が問題だ。また被害を訴えられない。訴えたとしても、その後お金を借りるところがない。なので仕方なく、ヤミ金からお金を借り、高い金利を支払っている――といった人が増えている。弱者につけこむヤミ金をきちんと駆逐することが大切だ。

 →『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(前編)

窪田順生(くぼた・まさき)

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後全国紙記者、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍。漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)の取材協力を行う。また企業の報道対策アドバイザーも務める。

『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)が第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター』(講談社α文庫)がある。


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