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インタビュー

『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(前編) (1/2)

“優しい闇金融”と呼ばれる違法ビジネスを営む輩が、水面下でうごめいているのをご存じだろうか。その実態はベールに包まれていたが、ノンフィクションライターの窪田順生氏が彼らの実態を明らかにした。

[土肥義則,Business Media 誠]

 10日で1割の金利を要求する「トイチ」など、かつて高金利で手荒な取り立てを行い、社会問題にもなったヤミ金融。取立行為の規制などを強化した「ヤミ金融対策法」が施行されたが、「ブラックOK!」「500万円まで一本化! 金利は5%〜15%!」といった怪しい条件が書いているチラシを目にしたことがある人も多いだろう。

 また最近では「『優しいヤミ金融』(ソフト闇金)と呼ばれる業者が、増えてきている」(業界関係者)という。ソフト闇金とは「金利は年40〜50%ほど。大声を出さず、暴力も振るわない」(同)というが、その実態はベールに包まれている。

 どのような人たちが、ソフト闇金に携わっているのだろうか。またどのような手口で、お金を貸したり、取り立てを行っているのだろうか。10月13日に開かれたシンポジウム(早稲田大学消費者金融サービス研究所主催)で、漫画『闇金ウシジマくん』の取材協力者である窪田順生(くぼた・まさき)氏が、ソフト闇金の実態を語ったので紹介しよう。

なぜソフト闇金が増えているのか?

yd_kubota.jpg ノンフィクションライターの窪田順生氏

 僕がヤミ金の取材を始めたのは10年ほど前から。最近の傾向として、(被害者)自らが進んでヤミ金業者を訪れるケースが目立っている。例えば正規の消費者金融からお金を借りれなくなった人たちが、(広告などを見て)ヤミ金業者のところにやってくる。かつてのヤミ金業者は無差別に電話をかけ、「ひっかかった奴からお金を絞りとろう」といった手口だった。あまり詳しいことは言えないが、最近のヤミ金にはちゃんとしたルートがあって、被害者のところにお金が届くようなシステムができつつある。

 また10年前のヤミ金と違って、いまのヤミ金は暴力的な言葉をあまり言わない――いわゆるソフト闇金と言われる業者が存在している。しかし金利はもちろんソフトではなく、1週間で3割ほどの金利を取っている。最近ではこうしたソフト闇金が急速に増えており、“市場”として成熟しつつあると感じている。

――ヤミ金は増えているのでしょうか。それとも減っているのでしょうか。

 ハッキリ言って、その点はよく分からない。彼らは悪いことをしているわけだから、悪知恵がよく働く。「こっちの水が甘いぞ」ということになれば、こちら側にやって来る。例えば、オレオレ詐欺グループはオレオレ詐欺をするのが、徐々に難しくなってきている。そこで彼らは「お金を借りられなくて困っている人たちがたくさんいる。じゃあ、オレオレ詐欺をアレンジして、電話1本でヤミ金を始めよう」といった感じで、ヤミ金に流入しているようだ。

 (違法ビジネスを行う者は)時代によって、オレオレ詐欺を始めたり、ヤミ金を始めたりしている。実はオレオレ詐欺は昭和40年代からあった詐欺で、戦争で亡くなった人であるにもかかわらず、まるで生きているかのように「オレだよ。オレ」などと振る舞い、人をだましていた。それが今では電話だったり、携帯電話だったりしているが、違法ビジネスの手口は根本的に変わっていない。1つの手口を覚えてしまえば、“応用”が効くのだ。彼らは時代の風を読み「こっちがもうかり、リスクが低い」と判断すれば、それに関する違法ビジネスを行う。そして、たまたまいまが「ソフト闇金」と言われる分野なのだ。

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