起訴され、拘置所に移監され、正式に弁護士接見をする【4】

 いつまでも留置所から出してもらえず、ずっと拘留されたままついに拘留満期の11月19日がやって来た。警察官から私に一枚の紙切れが渡された、起訴状だ。こう書いてある。

 なんと!!! 起訴されてしまった!!!!! これはビックリ。当番弁護士も不起訴か重くても罰金だと言っていたのに・・・・・。

 【起訴状】
 被告人はインターネット掲示板に虚偽の犯行予告を掲示すれば警察業務を妨害するおそれがあることを知りながら2008年10月13日午後9時20分ころ、自宅のパソコンを使用し2ちゃんねるに「明後日の15日水曜日の午後七時三十分に新宿でナイフを使って大量殺人する!!」などと書き込み、閲覧者の通報を受けた総務部広報課から報告を受けた四谷署署長に同警察署警察官15人に同警察署管内の警戒活動等を指示させ、同月15日午後6時30分ころから午後8時30分ころまでの間、同人の指示を受けた同警察署警察官15名に警戒業務等を行わせて、その間、被告人の前記虚偽情報の掲示さえなければ遂行されたはずの同警察署警察官の捜査書類作成業務その他の業務の遂行を困難にさせ、もって偽計を用いて人の業務を妨害したものである。      罪名 業務妨害 刑法233条

 11月19日に起訴された後、起訴された人間がいく拘置所へ10日後ぐらいに行くこととなった。しかし、その前日に「今日の深夜午前0;00に東京都庁にダ仕掛けたダイナマイトを爆発させる」とのスレッドを私が書き込んだことが警察に見つかり、A刑事から取調べを受け私が書き込んだことを認めた。その後に東京拘置所に移動してから別のK刑事から再び取調べを受け、東京都庁に対する威力業務妨害の罪で再逮捕の可能性があると言われた。都庁の職員と警備員が警備したとのことである。第1回公判は1月13日に決まり、その後すぐ保釈申請する予定だった。しかし、その後もK刑事による取り調べを何度か受けるものの追起訴されるかされないか、また日時は未定とのことで第1回公判を迎えたのである。

 弁護士は国選のM弁護士でまだ若い女性だ。M弁護士とは4度接見し、起訴状に対して否認し、無罪主張をすることで合意した。まず、一つ目の主張の内容は「業務妨害をするつもりがなかった」の故意がなかったということだ。業務妨害に過失はないので過失が認められるイコール無罪になるのである。問題は未必の故意が認められるかどうかだ。未必の故意とは裁判用語でするかもしれないけれどもしないかもしれないと思ったということで、これは過失が認められない。しかし、私とM弁護士は警察の業務を「妨害」するつもりはなかった。ということは認められるだろうということで合意した。
 次に警察が警備したのかどうかが疑わしい。私を逮捕している警察が業務妨害の被害を訴えている点で公平性客観性がなく警備の実態を偽造していることが十分に考えられるとし、「業務妨害があった証拠がない」と主張する方針を伝えた。
 さらに、警備をすることは本来警察の業務であり業務妨害ではないのではないか。ということも主張することにした。もし、これが業務妨害になるのだったら道案内ですら業務妨害になってしまうのではなかろうか。
 またM弁護士はそこまで徹底的に無罪主張すると裁判官の心証が極めて悪くなるということでそこまで主張しない方が良いのではないかと私に提案したが、私はその提案を退け「無罪主張なのだから心証は関係ない」とM弁護士に強く主張した。
 また、追起訴に関しては第1回公判で検事側に質問することとしなった。
 

刑事取調べと弁護士接見【3】

 その後に、留置所にブチ込まれた。その日の夜、当番弁護士との面会があった。面会所に連れて行かれ、弁護士と面会した。国選弁護士のうち逮捕された当日に来る人を当番弁護士と言うそうだ。当番弁護士の村上一也は私に言った。いかにも弁護士というタイプの人だが、作り笑顔が気持ち悪い。
 「荻原さんの罪は偽計業務妨害 懲役三年以下もしくは50万円以下の罰金となります」
 「あの・・・なんでこれが業務妨害なんですか」
 「おっしゃることはわかりますよ!でも、今はオレオレ詐欺同様、大変厳しくなっているんです」
 「これから僕はどうなるんですか?」
 「逮捕から三日以内に検事取調べと裁判所への拘留質問がありますその後、拘留期間が10日、さらに10日の延長があります合計23日その期間内に検事は不起訴もしくは起訴猶予処分、罰金か起訴かを決めなければなりませんその間は何度も刑事と検察官の取調べを受けます」
 「僕はどうなると思いますか?」
 「初犯で逮捕暦もなくネットのイタズラ書きでしょう? 不起訴も十分有り得る。重くても罰金だと思いますけど・・・」
 「僕はどうしたらいいんですか?」
 「反省することが一番です、とにかく反省することです」
 「はぁ・・・」
 初日の弁護士接見はこれで終わった。逮捕されても必ず裁判にかけられるわけではない。不起訴になれば無罪と同じで何も残らないのだ。逮捕されても不起訴になる確率は60%ぐらいあるらしい。

 

逮捕される【2】

 10月30日の朝早く、警察が私の家にやって来た。私はベッドで寝ていたのだが母親が「警察がきてるよ」と言って起こしてきた。居間に出ると本当に警官が4人いた。そのうちの50歳ぐらいと思われるその中では一番高齢の警察官が私に対して言った。彼は四谷署の荒井龍一警部補である。「おまえネットに大量殺人するってイタズラ書きしただろ!大量殺人されたら困るから我々警備したんだよ!!」そして、私の肩をポンと叩き「な〜に緊張しなくていい」と言った。そして、自宅のパソコンを没収され、そのまま私と母親は一緒に四谷署まで連れて行かれた。
 私と母親はそのまま別々の取調べ室に連れて行かれ、それぞれ事情聴取を受けた。「これを書き込んだのはおまえで間違いないな」荒井刑事が4つの書き込みをコピーした紙を私に見せて言った。「はい、間違いないです」私が答えた。別の部屋で母親も私がいつもネットに書き込んでいたことを認めたらしく、(私がネットにこんな書き込みをしていたとは知らなかったが)私はその場で手錠をかけられ逮捕された。まだ朝の8時とか9時とかそれぐらいだ。そして、逮捕状を読み上げられた。
 「荻原渉容疑者は警察の業務が妨害されることを知りながら10月15日の午後七時三十分に新宿でナイフを使って大量殺人する!!などと書き込み、その通報を受けた四谷署の警察官15名に警戒活動等をさせ、その間前記虚偽情報の掲示さえなければ遂行されたはずの書類作成業務及びその他の業務を遅らしめた。もって偽計を用いて人の業務を妨害したものである。   罪名  偽計業務妨害 刑法233条」  

 ここで、私は正式な取調べを受けることになった。荒井刑事は言った。「今から正式な取調べを始める。いいか、君には黙秘権がある。喋りたくなければ何も喋らなくてけっこうだ」と、言われて正式な取調べを受けた。私は全ての質問に対して嘘偽りなく真実を喋った。およそ、このようなことを喋った。「私が死ねとか殺すなどという書き込みをしたのは3ヶ月くらい前からでしょうか、私はよくインターネットをやっていました。そういう過激な書き込みをするとスカッとする部分もあるので書き込みました。母親と妹と父親の四人家族です。ネットは大好きです。ネットの書き込みでも逮捕されることがある、された人がいるということは知っていました。もちろん書き込んだのはわざとです。私は現在無職です。大学を中退し、アルバイトなどを点々としていました」おおよそ、このような内容だった。
 

インターネットの書き込み【1】

 私は2008年の10月13日に自宅のパソコンから2ちゃんねるの大学生活板上にふざけて「とにかくもうメチャメチャ大量殺人する」というスレッドを立て、その後「麻生太郎総理大臣を殺す おまけにみのもんたも殺す」「世田谷一家惨殺したのはオイラ」「何日の何時何分に横浜で幼女を殺し、多摩川に沈めた」などと書き込み、また冗談だとも書き込んだが、ノクターンや名無しに「時間と場所も書き込めやチキン野郎」となど煽られたので10月13日に「明後日の10月15日の午後七時三十分に新宿でナイフを使って大量殺人する!!!」などと書き込んだ。
 さらに、10月27日には漫画喫茶のパソコンから「東京都庁に仕掛けたダイナマイトを爆発させる」というような趣旨のスレッドを立て、その後「都庁にいるヤツは全員殺す!!ぶっ殺す」「業者から手に入れた正真正銘の本物だぜ。ここ3年のバイト代を全部費やして購入した」「今日の深夜0:00に東京都庁を爆破させて警視総監を殺す」などとメチャメチャにイタズラ書きをした。

 なぜ、こんな書き込みをしたのかと言われたら、ふざけてとしか言いようがない。あとは鬱憤晴らしである。ひょっとしたら逮捕されてしまうかも知れない。そんな思いもあったが、別に現行法には違反しないだろうから、罪にはならないだろう。(逮捕されてもどうせ不起訴だろう)と思っていた。万が一、罰金刑などを言い渡されたら脅迫にも業務妨害にもなっていないじゃないかと反論しようと思っていたのだ。
 

はじめに

 私はインターネット2ちゃんねるの大学生活板に「新宿でナイフを使って大量殺人をする!!」「東京都庁に仕掛けたダイナマイトを爆発させる!!」などと書き込み、警察官を警戒に当たらせて業務を妨害したとして2008年10月30日に四谷警察署に逮捕された。その後、11月19日に起訴されて翌年、2月5日に追起訴された。2月20日に保釈されるまで114日間拘留されていた。

 しかし、実際には警察は警備しておらず、証拠を偽造している。さらに仮に警備をしていたとしてもそれは通常業務の範囲内であるから業務妨害には該当せず、さらに業務妨害の故意もないとして、裁判で延々と無罪を主張し続けた。

 東京地方裁判で6回にわたって公判が行われたが、2009年7月16日に懲役二年執行猶予四年の有罪判決を受けた。これは警察が証拠を偽造したれっきとした冤罪事件である。裁判所は明らかに冤罪だとわかっているにも関わらず、警察が証拠を偽造しているという認定をするわけにはいかないという理由からわざと冤罪をかぶせたのである。

 私は、東京高等裁判所に控訴し、引き続き無罪を主張しているが、10月22日の控訴審第1回公判では申請した証拠調べが全て却下され、11月12日の控訴審判決でも有罪が濃厚である。(2009年10月23日現在)
 
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