最古のメディアであり、最も改革が遅れていると言われる出版業界。国内の市場規模は1996年をピークに下がりつつけ、12年で24%近く減り、上昇の兆しが見えない。それと並行するように街の書店も8年で25%減と規模縮小に歯止めがかからない状態だ。
若年層を中心とした活字離れ、インターネットの出現――。成熟産業であり、衰退産業とされる出版業界だが、そんな逆風下において再興を促す動きが出始めている。
メッセージを打ち出す書店
大手書店の丸善は10月23日、東京駅のそばにある丸の内本店4階に、ショップインショップ「松丸本舗」をオープンした。
松丸本舗は、ほかの売り場とは完全に独立したスペース(65坪)である。編集工学研究所の松岡正剛氏が店舗の設計から、並べる書籍までを一貫してプロデュースした。
5万冊を超える書籍は松岡氏が「知を広めるツールである書籍を通じ、知のプラットフォームを作りたい。こだわりを持って選んだ」と語るように、既存の書店とは並ぶ書籍の顔ぶれが違う。
最新作や売れ筋の書籍を中心に並べるのではなく、テーマ別で知を深めるために選ばれた書籍が並ぶ。和書や洋書のほか、漫画も同じ棚に並んでいる。
大きさも違えば、ジャンルも異なる書籍が横に置いて陳列されている光景は、書店ではなく家の書棚のような雰囲気を感じる。
特定の一冊を捜し求めるには不便な陳列ではあるが、興味の裾野を広げて読みたい本を発掘する楽しさを顧客に与えている。
「知を深めるためには、情報を多面的に得る必要がある。自分が追い求める一冊を見つけるというより、自分が求める知を得るために必要な本をジャンルにとらわれず並べるよう心がけた。だから、そこには漫画や小説といった区分はない。本の中身だけでなく、それを並べる棚にも文脈、ストーリーを持たせた」
こう松岡氏は語る。顧客に対し、プロが選んだ書籍を顧客目線で並べる――。松丸本舗は、いわば本のセレクトショップなのだ。