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老舗百貨店が格安PB、低価格店を導入!? 低迷する百貨店の“復権策”とは

nikkei TRENDYnet10月23日(金) 11時11分配信 / 経済 - 産業
老舗百貨店が格安PB、低価格店を導入!? 低迷する百貨店の“復権策”とは
今の百貨店業界は、売り上げが前年比10%前後減り続ける深刻な状況が続いている。だが大手百貨店は、都心部の店舗を大きく拡張する競争を続けている。
 老舗百貨店と格安スーツ店──。「水と油」の存在だった両者が、今年、異色のタッグを組んだ。

【詳細画像または表】

 この春、はるやま商事が手がける2プライススーツ店「P.S.FAプラチナ」が大丸梅田店に出店。20〜30代前半の若者層を取り込み、当初計画の3.3倍を売り上げた。夏には、大丸梅田店とはるやま商事が共同で、3000〜5000円の超格安スーツなどを販売するイベントを開催。こちらも計画の2.5倍という売り上げを達成した。さらに9月には、大丸札幌店にも出店している。

 このタッグ、実は、今後の“百貨店復権”を占う取り組みなのだ。

不況なのに増床、新店が相次ぐ

 今の百貨店業界は、売り上げが前年比10%前後減り続ける深刻な状況が続いている。だが大手百貨店は、都心部の店舗を大きく拡張する競争を続けている。

 特に2011年前後に“決戦の地”となるのは大阪だ。例えば梅田エリアでは、JR大阪駅の新しい駅ビル内に、三越伊勢丹ホールディングス傘下の「JR大阪三越伊勢丹」がオープン。一方、駅を挟んで向かい側にある阪急百貨店と大丸も増床する。大阪駅周辺に、超大型SC(ショッピングセンター)並みの広大な売り場が増える見込みだ。

2011年以降はオーバーストア状態に三越伊勢丹と阪急が対決、大丸は“SC化”か

 新店オープン、増床が相次ぐ大阪・梅田は、商業施設が多すぎる状態。2011年以降は各店の優勝劣敗が鮮明になるはずだ。先端ファッションや高級ブランドなど百貨店が得意とする分野では、JR大阪三越伊勢丹と阪急うめだ本店が激突。一方で大丸梅田店は、幅広い顧客層を取り込もうと、低価格ブランドを多く誘致する戦略に出るものとみられる。

「キタ」の脅威に対抗して「ミナミ」は専門店テナントを取り込みへ

 大阪・梅田エリアで百貨店の進出や増床が進むことで、「ミナミや阿倍野の消費者が梅田へと流出するのでは、という恐怖感がある」(ある百貨店)。そのため、低価格ブランドを含めたさまざまな専門店テナントを取り込んで、「梅田」に対抗する戦略を取る百貨店も出てきた。

 各社がこぞって増床に動いているのは、「2000年代半ばに地方店を閉鎖して、人口が集中する都心部の店を増床する成長戦略を取った」(野村証券金融経済研究所主席研究員の正田雅史氏)ことが理由だ。今は不況とはいえ、各社とも都心部の店に懸けるしか道はなく、増床計画は着々と進む。だが不況が長引けば、「増床したが売れない」という結果にもなりかねない。

 各社が打ち出す生き残り戦略は、大きく2つに分かれる。まず、百貨店自体が商品を仕入れて販売する自主編集売り場の強化だ。例えばJR大阪三越伊勢丹は、ファッションなどの自主編集売り場が大きな目玉。同店では「売り場の約3割という、伊勢丹店舗のなかでも高い割合の面積を自主編集に充てることを目指している」(ジェイアール西日本伊勢丹)。

 また最近の百貨店は、「高価格商品しかない」というイメージを払拭しようと、衣料品を中心に割安なPB商品の開発・販売に力を注ぐ。

 PB戦略を急ピッチで進めるのは、8月に新社名になったそごう・西武。例えば西武百貨店池袋本店の食品売り場では、親会社のセブン&アイ・ホールディングスのPB商品を大々的に扱う。98円の即席めんや100円の菓子など、従来の百貨店にはなかった価格帯の商品を販売したところ、「帰宅途中のビジネスマンや近隣住民の利用もあり、想定を上回る好調な売れ行き」(そごう・西武)という。

低価格ブランドと利害が一致

 ただし、百貨店が自分たちで売り場や商品を開発・運営すると、在庫を抱えるリスクが大きくなる。特にファッションの分野では、「百貨店は自前でものづくりができないことから、1〜2カ月で商品を変更できるSPA(製造小売業)ブランドに比べて、流行の変化への対応が遅い」(業界関係者)ともいわれる。一部の店を除いては、自主編集売り場やPB商品が不況脱出の解決策になるかどうかは疑わしい。

 一方で“百貨店復権”につながる別の戦略もある。冒頭に述べた「P.S.FAプラチナ」のように、従来はSCや駅ビルに出店していた低価格帯のブランドを誘致することだ。

 そもそも今の百貨店は、「“高価格“や“中高年層”など、一部の品ぞろえや客層に偏りすぎた店づくりになり、大衆性を失ってしまった」(J・フロント リテイリング)ことが苦境の原因として挙げられる。百貨店が幅広い消費者を呼び戻すには、さまざまな価格やテイストの店を集めた「SC」として自ら変身するしかない。ほかにも「駅ビルやファッションビルに入るテナントを取り込んで、幅広い客層を集めたい」(近鉄百貨店)など、大丸と同じようなSC路線に動き出す店も出始めている。さらにユニクロが2010年春、高島屋の旗艦店である新宿店に大型店舗を出店するなどの動きもある。

 低価格帯のブランドにも、百貨店に出店したい事情がある。これまで郊外のSCに大量出店してきたが、その市場はすでに飽和状態。再び都心部への出店を目指すなかで、一等地に店を構える百貨店は絶好の出店先だ。また、「消費者が百貨店に対して抱いている“ステータス“や“安心感”を活用できるのも魅力だ」(はるやま商事)。

 両者の利害が一致していることから、低価格ブランド誘致の動きは加速していくだろう。「今後、多くの百貨店は、駅ビルやファッションビルに似てくるのでは」(野村証券の正田氏)という見方もあるほどだ。

 商業施設はこれまで、百貨店が高価格、ファッションビルが中間価格、郊外SCが低価格など、価格帯によるすみ分けがされていた。だが百貨店が低価格帯のブランドを積極的に誘致すると、このすみ分けは崩れる。百貨店は海外高級ブランドからユニクロなどの低価格ブランドまでをそろえた「都市型SC」として復権を目指す。駅ビルやファッションビル、郊外SCとの、業態を超えた争いも激しくなるはずだ。

(文/荒井 優=日経トレンディ)

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  • 最終更新:10月23日(金) 11時11分
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