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太陽電池の普及に向けた 高品質化・低コスト化技術

産総研 太陽光発電研究センター 評価・システムチーム
太陽電池評価におけるトレーサビリティ確保の重要性
基準太陽電池の校正・評価に関する根幹技術開発を推進

猪狩真一/産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター 主任研究員

産総研(AIST)太陽光発電研究センターは,一次基準太陽電池セルの校正に関して,製品評価技術基盤センター(IAJapan)から,ILACおよびAPLACのMRA規則に則ったASNITE認定プログラムによって,08年5月16日付でISO/IEC17025への適合性認定(認定番号:ASNITE 0021 C)を取得した。基準太陽電池セル,校正方法,トレーサビリティならびに標準化の動向などを紹介する。

太陽光発電研究センターの概要

図1 太陽電池校正組織の概要
 図1 太陽電池校正組織の概要

エネルギー関連の研究開発は,長年国家プロジェクトとして取り組まれてきた。太陽光発電の研究開発は,近年,エネルギー資源の確保,環境問題の解決の観点から重要視されている。このような背景から,03年度に,産業技術総合研究所(産総研)に太陽光発電研究センターが設置され,所内の関連の研究開発がこの研究センターに集約された。当研究センターは,クリーンで価値の高いエネルギー源である太陽光発電に戦略的に取り組む拠点として,材料・デバイスから評価法,システムにいたるまで一貫した研究を行っている。
一次基準太陽電池セルの校正は,評価・システムチームの基準太陽電池校正室で行っている。図1に校正組織の概要を示す。基準太陽電池には,一次基準太陽電池セル,二次基準太陽電池セル,二次基準太陽電池モジュールの3種類がある。現在の認定範囲は一次基準太陽電池セルの校正であるが,09年度中に二次基準太陽電池セルおよび二次基準モジュール校正まで拡大予定である。

基準太陽電池セル

太陽電池の基本性能は,発電量である。しかし,実際の太陽電池の発電量は,設置場所,設置方位,日射量,分光放射照度,気温などにより変化する。そこで,「標準試験条件(基準太陽光,放射照度,セル温度など)」で共通的な性能評価をすることが国際的に合意されてきた。一方,この基準太陽光は,理論計算コードに基づくもので,そもそも米国ASTM規格が原案である。従って他の気候区では,「標準試験条件」が実現する日は限られる。このような理由から,日本では,太陽電池研究開発プロジェクトの発足(74年)当初から,ソーラーシミュレータによる基準太陽電池の屋内校正方法と,基準太陽電池セル法(基準セル法)による測定方法の開発を進めてきた。
基準セル法とは,基準太陽光下における短絡電流値を校正値とする基準太陽電池を使用し,測定光源の放射照度を測定または設定して,等価的に基準太陽光下における太陽電池性能を計測する方法である。一般に,測定用光源と基準太陽光との分光放射照度には差異があるため,相対分光感度特性や入射角特性などの光学特性が被測定太陽電池と同等な基準太陽電池の選択が必要である。

基準太陽電池セル(結晶系)
 ▲基準太陽電池セル(結晶系)
(左:JIS推奨型,右:世界太陽電池スケール推奨型)

なお,IEC60904-3基準太陽光は約20年振りに改正され,08年4月に第2版が発行された。第1版との主な相違は,紫外放射波長の拡大,大気パラメータの更新,波長間隔の均等化,計算モデルの変更(BRITE→SMARTS Version2.9)である。すでに,第2版に基づく測定結果の使用が国際的に合意されており,第1版による結果である場合は必ず注記しなくてはいけない。この改正に伴う短絡電流の校正値や標準測定値は,太陽電池の感度波長帯域によって異なるもののわずかである。また,07年10月に発行したIEC60904-9第2版でも,ソーラーシミュレータの等級を決定するための合致度を求める波長帯ごとのエネルギー分布の比率がIEC60904-3の改正に伴って変更されている。現時点では,IEC60904-3第2版の規定を含むJISは,JIS C 8941のみであり,JIS C 8910,JIS C 8911,JIS C 8931の規定する基準太陽光はIEC60904-3第1版のものであるので注意する必要がある。また,ソーラーシミュレータの等級を決定するための合致度を求める波長帯ごとのエネルギー分布の比率の規定も,JIS C 8942はIEC60904-9第2版と一部整合しているが,JIS C 8912とJIS C 8933は第1版対応であるため不整合である。なお,現在,IEC規格とJISの技術的・体系的な整合化作業がAIST/日本電機工業会/光産業技術振興協会の関係委員会で進められており,IEC60904-3第2版ならびにIEC60904-2第2版との整合JISの発行と,これに併せたJISの統廃合が10年中頃に予定されている。

図2 IEC60904-3 基準太陽光とソーラーシミュレータのスペクトル(例)
 図2 IEC60904-3 基準太陽光とソーラーシミュレータの
     スペクトル(例)

図2に基準太陽光(IEC60904-3第2版)とソーラーシミュレータのスペクトルの一例を示す。一次基準太陽電池は,表1に示す太陽電池評価方法に関するJIS,TS,団体規格の根幹である。それは,同一基板材料を用い,同一構成で製作された一群の太陽電池セルから,一定の選別方法で選別したセルであり,そのセル短絡電流を絶対分光感度特性と基準太陽光の分光放射照度分布を基に値付けしたものである。その性能および光学的推奨構造は,JIS C 8910(05年改正):「一次基準太陽電池セル」に規定されている。上の写真が基準太陽電池セルである。産総研では,一次基準太陽電池の校正を,依頼試験として実施する予定である。なお,現在,校正事業者である電気安全環境研究所における二次校正事業が中断していることを受け,業界要望に基づき,二次基準太陽電池の校正にかかわる依頼試験についても暫定的に実施する方向で準備を進めている。

図3 基準太陽電池のトレーサビリティ
 図3 基準太陽電池のトレーサビリティ

試験所・認定機関や産業界では,一次基準太陽電池セルとの比較により校正値を与える二次基準太陽電池が使用される。二次基準太陽電池セルには,一次基準太陽電池セルと同じ光学的推奨構造が要求されている。JISでは,JIS C 8911(05年改正):「二次基準結晶系太陽電池セル」およびJIS C 8931(05年改正):「二次基準アモルファス太陽電池セル」の二種類が規定されている。二次基準モジュールについては,JIS C8921(2008):「二次基準シリコン結晶系太陽電池モジュール」が規定されている。

表1 太陽電池性能評価に関するJIS,TSおよび団体規格

規格番号 名称
C 8910 一次基準太陽電池セル
C 8911 二次基準結晶系太陽電池セル
C 8912 結晶系太陽電池セル・モジュール測定用ソーラシミュレータ
C 8913 結晶系太陽電池セル出力測定方法
C 8915 結晶系太陽電池分光感度特性測定方法
C 8916 結晶系太陽電池セル・モジュールの出力電圧・出力電流の測定方法
C 8918 結晶系太陽電池モジュール
C 8919 結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法
C 8920 開放電圧による結晶系太陽電池の等価セル温度測定方法
C 8921 二次基準シリコン結晶系基準太陽電池モジュール
C 8931 二次基準アモルファス太陽電池セル
C 8932 二次基準アモルファス太陽電池サブモジュール
C 8933 アモルファス太陽電池測定用ソーラシミュレータ
C 8934 アモルファス太陽電池セル出力測定方法
C 8935 アモルファス太陽電池モジュール出力測定方法
C 8936 アモルファス太陽電池分光感度特性測定方法
C 8937 アモルファス太陽電池出力電圧・出力電流の温度係数測定方法
C 8939 アモルファス太陽電池モジュール
C 8940 アモルファス太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法
C 8990 地上設置の結晶シリコン太陽電池(PV)モジュール設計適格性確認
および形式認証のための要求事項
C 8991 地上設置の薄膜太陽電池(PV)モジュール設計適格性確認及および
形式認証のための要求事項
C 8941 二次基準多接合太陽電池要素セル
C 8942 多接合太陽電池測定用ソーラシミュレータ
C 8943 多接合太陽電池セル・モジュール屋内出力測定方法
(基準要素セル法)
C 8944 多接合太陽電池分光感度特性測定方法
C 8945 多接合太陽電池出力電圧・出力電流の温度係数測定方法
C 8946 多接合太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法
TS(2010予定) 二次基準CIS系太陽電池セル
同上 CIS系太陽電池測定用ソーラシミュレータ
同上 CIS系太陽電池セル・モジュール出力特性測定方法
同上 CIS系太陽電池分光感度特性測定方法 
同上 CIS系太陽電池出力電圧・出力電流の温度係数測定方法
OITDA-PV01 色素増感太陽電池の性能評価方法
各国の校正方法とその特徴

図4 QualifiedラボとWPVS参加機関
 図4 QualifiedラボとWPVS参加機関

校正値の妥当性は,定期的な国際ラウンドロビンテストで相互に検証している。現在,一次校正が可能で,実績のある主要4か国(日本,ドイツ,米国,中国)の「Qualifiedラボ」の平均値が,根幹国際比較参照値「世界太陽電池スケール(WPVS)」として維持・活用されている。図4にこれら4機関を示し,表2に校正方法とその特徴を示す。
太陽電池の校正にかかわる単位系は,SI単位系である。IEC/TC82/WG2で審議中のトレーサビリティ規格IEC60904-4(案)では,分光放射照度標準(CIE BIPM/CCPR),世界日射計測基準(WRR/WMO)および分光応答度標準(CIE BIPM/CCPR)に基づくトレーサビリティを認めている。世界の校正機関による数回の国際持ち回り校正では,これら異なる標準と校正方法の違いにも拘らず,特に主要4か国の一次校正値が高い一致度を得た。その実績が国際根幹比較参照値としての「世界太陽電池スケール(WPVS)」の制定・維持に結実した。

表2 主要各国の校正方法と特徴

国名 (機関) 認定機関 校正方法 特徴
日本 (AIST) NITE ソーラーシミ ュレータ法 ・高再現性・高再生産性
・多様な太陽電池に対応可
・校正処理能力が高い
米国 (NREL) A2LA 直達太陽 光法 ・基準光近似の太陽光を利用
・他地域では事実上困難
ドイツ (PTB) 自己宣言 DSR法 (絶対分光 感度法) ・FZ-Si太陽電池など,出力の対光直線性の高い太陽電池では高精度
・小面積
中国 (TIPS) 不明 絶対分光 感度法 (詳細不明)
認定取得の意義

分光感度測定装置 絶対分光放射照度測定装置
 ▲分光感度測定装置      ▲絶対分光放射照度測定装置

高平行度ソーラーシミュレータ
 ▲高平行度ソーラーシミュレータ

近年,世界各国で太陽光発電の開発と普及が促進されている。日本の太陽電池の生産量は,世界トップクラスであるが,国際競争は次第に激化しつつある。
太陽電池の性能表示値の信頼性は,世界市場を視野に入れた太陽光発電の飛躍的普及促進の観点から,非常に重要である。04年度には,太陽電池の国際認証制度(IECEE - CB制度の一環)がスタートし,05年4月より,認証ラベル付き太陽電池モジュールが国内市場に流通している。国際市場に参入する上で,製品認証関連規格の国際整合および性能表示に関するトレーサビリティの確保が不可欠である。性能表示に関して,ISO/IEC 17025に認定された機関で校正された基準太陽電池の使用や測定結果の活用が必須であり,補助制度の必要条件とする国も出てきた。従って,その国際的な意義は極めて大きい。

校正方法および不確かさ

図5 一次基準太陽電池セル校正のトレーサビリティ体系図
 図5 一次基準太陽電池セル校正のトレーサビリティ体系図

一次基準太陽電池セルの校正値は,短絡電流値である。当所の校正方法は,JIS C 8910(05年改正):「一次基準太陽電池セル」を基本に,より精密化した方法で実施している。JISでは,二つの校正方法が規定されている。それは,トレーサビリティの原点を,分光放射照度標準電球にするか,WRR(世界日射計測基準)にするかである。我々の校正は,これら二つのトレーサビリティに基づく「Cross Calibration of Absolute」によって,常時,信頼性検証を行っている。右上に産総研の一次基準太陽電池セル校正装置を,図5に一次基準太陽電池セル校正のトレーサビリティ体系図を示す。また,表3にソーラーシミュレータ法による校正値の不確かさの主要因を示す。

表3 不確かさの主要因

1 WRR(世界日射計測基準)による絶対放射照度測定
    1.1 WRRとSI放射スケールとの比較
    1.2 絶対放射計の再現性
    1.3 放射照度の面分布
    1.4 照度の時間変動
    1.5 受光面の水平度
    1.6 光線平行度
    1.7 多重反射
2 校正値:短絡電流(Isc)測定
    2.1 校正値の平均値の実験標準偏差
    2.2 セル温度の変動のIscへの寄与
    2.3 温度計の不確かさのIscへの寄与
3 スペクトルミスマッチ補正係数
    3.1 ソーラーシミュレータの分光放射測定
      3.1.1 絶対分光放射計(分光放射照度)の不確かさ
    3.2 分光応答度(分光感度)測定
      3.2.1 分光応答度標準の不確かさ
      3.2.3 バイアス光重畳効果
おわりに

太陽光発電の世界的普及の時代を迎え,国際競争力をますます高めるためには,太陽電池の性能表示値のトレーサビリティ確保は不可欠である。そのためには,第三者認定された校正機関で校正された基準太陽電池デバイスを用い,自社における計測の不確かさを評価することが重要であり,技術的妥当性が検証され,国際規格・国内規格への適合性やトレーサビリティの確保が客観的に証明されている評価・検査装置の使用が生産管理の信頼度を高めることになる。
なお,我々は,校正技術の高度化や標準化,産業用評価装置の共同研究なども実施している。産業用評価機器として,高精度ライン用評価ソーラーシミュレータ,分光感度測定装置,高速型高精度分光放射計などが関連知財の実施契約を締結した企業によって販売されている。
我々は,国内トレーサビリティの最上位として,WPVS Qualified Labとしての校正パフォーマンスの維持に加え,一次基準太陽電池セルの校正機関としてQMSと不確かさのラボ認定(ASNITE認定)を取得した。基準太陽電池の校正・評価に関する根幹技術開発の中核として,世界の太陽光発電をリードする日本にふさわしく,先導的研究とその成果の普及にも取り組んでいく所存である。



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