【第61回】 2009年10月23日
前原国交相の正しい暴走と亀井郵政・金融担当相の勘違い暴走
予算編成のメチャクチャ
これに対して、評価できないマイナスの面も二つ明確になりました。一つは、政権にマクロ経済運営の観点が欠如してしまっているということです。
来年度予算の編成が始まりましたが、全省庁の概算要求は合計で95兆円となりました。財務大臣は90兆円以下に削減したい意向のようですが、予算に関する政府の取り組みはバラバラと言わざるを得ません。
社会保障などの必要な支出を確保することは当然ですが、それに加え、マクロ経済に関する分析を踏まえどの程度の規模の政府支出が必要かという議論が必要なはずです。そうした経済運営と財政運営の一体化こそ、小泉時代の経済財政諮問会議が目指したものでした。しかし、今の政権にはそうした観点からの議論は一切ありません。小泉以前に大きく逆行してしまったのです。
加えて、95兆円という異常な金額になったことの背景も考える必要があります。その理由としては、第一にまだ官邸、特に国家戦略室が十分に機能していないと言わざるを得ません。官邸が最初に何も方針を示さなかったことが、無秩序な概算要求につながったのです。第二に、各省庁の大臣が既存予算の削減を十分にできていないと言わざるを得ません。そうした中でマニフェストの内容も実現しようとしたら、予算が膨れ上がるのは必定ではないでしょうか。
もちろん、政権奪取からまだ1ヶ月しか経ってない試運転の期間であり、かつ自民党政権が悪化させた財政を引き継がざるを得ないという不幸な面もあるので、現時点で政権批判をするのはフェアでないと思います。
しかし、これは政権よりもメディアの側の問題になりますが、国債を巡る議論だけは許容できません。税収は今年度の当初見通しで46兆円でしたが、景気悪化で40兆円を切ると言われています。その中で国債増発止むなしという雰囲気になっており、50兆円という数字もメディアで流布していますが、国債発行額の比較対象が今年度発行額の44兆円というのは明らかにおかしいです。
そもそも今年度の当初予算での新規国債発行額は33兆円でした。小泉時代も30兆円以下に抑えるという方針が貫かれていました。44兆円という額自体が異常であり、それを上回る国債発行など本来はあり得ないはずです。予算や国債発行額の膨張は、金融市場から見た国の信頼に大きく影響します。最悪、国債金利の急上昇という悪夢にもつながりかねません。
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著者プロフィール
- 岸 博幸
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。
この連載について
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