きょうのコラム「時鐘」 2009年10月23日

 東京赤坂の迎賓館が国宝になる。東京サミットで3度も会場となって有名だが、20世紀初頭の1909(明治42)年に完成した西洋建築で、国内の近代建築では最初の国宝指定になるという

設計者は片山東熊(とうくま)という人物だ。幕末の長州に生まれ高杉晋作の奇兵隊の兵士だったという変わった経歴を持っている。勤王の志士が平成のサミット会場を造ったということになるから歴史の妙である

皇太子だった大正天皇の東宮御所として建設されたが、明治天皇が「ぜいたくすぎる」と怒り使わせなかったという。昭和40年代に迎賓館として修理した。担当したのは金沢の武蔵ケ辻に残る旧北國銀行本店を建てた建築家・村野藤吾氏である

以前、サミット直後に内部を見学したことがある。ベルサイユ宮殿を模した本館内部の暖炉前に和風の衝立があった。記憶が定かではないが、確か加賀友禅に見えた。詳細をご存じの方がいたら教えてもらいたい

敷地内には金沢出身の建築家・谷口吉郎氏設計の和風別館が併設されている。北陸ともゆかりある歴史建造物だ。ゆっくり見学できる機会をつくってほしい。