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開業医から信頼 連携へ2009年09月24日 ◆生駒市立病院問題 徳洲会進出、宇治の場合は ◎小児救急受け入れが突破口 生駒市立病院の建設計画が難航している。指定管理者の全国公募に唯一応じた医療法人「徳洲会」に地元医師会が反発し、市議会も慎重な姿勢を崩さないためだ。救急医療態勢の弱さが指摘されるなか、徳洲会を軸にした計画はなぜ進まないのか。奈良から近く、開院後は市立病院との連携が想定されている宇治徳洲会病院(京都府宇治市)の状況を知るため訪ねた。(下司佳代子) 住宅や大型チェーン店などが並ぶ宇治市の繁華街に、宇治徳洲会病院はある。79年に開院し、現在は30診療科、400床を備える。年間約6千件、一日当たりに換算すると16件もの救急搬送を受け入れ、府内では屈指の多さだという。 年中無休・24時間オープンをうたう徳洲会は、国内65病院のほか、診療所や老健施設などを多数運営する。理事長の徳田虎雄氏(71)はかつて医師会批判を公然と展開。こうしたこともあって、病院計画が持ち上がった各地で地元医師会と衝突したという。 ■拒絶と歓迎 開院当初から勤める外科医の増田道彦総長(68)は、宇治徳洲会病院の開院当時について、「『徳洲会はダメ』という地元の医師を慕う市民と、救急に力を入れた大きな病院が出来るのを歓迎する市民と、対立は宇治市民を二分する感じだった」と振り返る。 当時の様子は、「徳洲会を拒む」生駒市の今の状況と似ている。だが開設から約5年で、大きな転機を迎えたという。「突破口を開いたのは、小児科の診療、特に夜間救急だった」という。「『紹介状は書かないけど行ってきなさい』と、かかりつけ医に勧められてやって来る患者が相次ぎ、それが普通になると今度は紹介状を持ってくる人が増えた。そのうち、当時の医師会長が私たちの姿勢を評価し、医師会への入会を勧めてくれた」 増田氏はその後、地元の「宇治久世医師会」の理事に就任。「病診・病病連携」を担当し、各診療所や病院の得意分野が分かる連携マップ作りにも携わった。同医師会事務局は「開院後は、全国の医師会から『徳洲会を受け入れて、どうか』という問い合わせが相次いだ。基幹病院として、地域連携がうまくいっている、と答えてきた。開業医にも頼られているようだ」と話す。 生駒市は、市立病院の診療方針を決める「病院事業推進委員会」の委員候補として増田氏を挙げたが、市議会では「まだ指定管理者に決まったわけではない」と不同意になった。増田氏は「私から特に訴えたい、ということはないが、医師会の先生たちとも直接話せば『何となく変な組織』『怪しげで宗教っぽい』などと言われる徳洲会のイメージは変わるのではないか、と思う」と話す。 ■判断は市民 生駒市立病院を運営する指定管理者を徳洲会とする議案は、9月定例会市議会の市民福祉委員会で否決され、市は本会議を前にいったん取り下げた。12月定例会で再度、市は提案するが、その可否は不透明なままだ。建設計画の今後について、増田氏はこう指摘した。 「一般的に新病院が出来ると、どの医療機関もより安く親切に丁寧にと、切磋琢磨(せっ・さ・たく・ま)し合うようになる。それは市民から見れば、いいことだろう。ただ、最終的には市民がどう判断するかに尽きる」
マイタウン奈良
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