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長谷部千彩

文筆家/レディメイド・エンタテインメント代表
連載『VoCE』『WWD Beauty』『婦人画報』
著書『有閑マドモワゼル』『レディメイド*はせべ社長のひみつダイアリー』

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vol.1 カメラ

October 22, 2009

新しいカメラ(デジタル一眼)で写真を少し撮ってみた。
当たり前だけど、とても綺麗に写った。
綺麗すぎて、奇妙な感じがした。
私は思いつきで撮っているのに、思いつきで撮っていますという雰囲気が写真に出ない。
意味なんてないのに意味ありげに見える。
それが嫌で、ブレている写真を選んで、あとは全部消去した。

あ!と思った後に、カメラを構えて、構図を決めて、ピントを合わせて、
それから、カシャ!という音をたててシャッターを切る。
いままではそういった手順をまったく意識しなかったのに、
デジタル一眼カメラだと、あ!と思って伸ばした手の先に、幾重も膜(まく)があるみたいで、
膜(まく)を通過するたびに、衝動は衝動じゃなくなっていく気がした。

そのことをタクシーの中で話したら、
「なんで小さいカメラじゃダメなの?」と問い直された。
「今もっている小さいカメラだと、ピントあわせが遅くて」とか、
「望遠レンズを使ってみたかったから」とか、あわててモゴモゴ答えたけれど、
デジタル一眼カメラを買ったのは、単なる見栄かも、とも思う。

もっと慣れたら、デジタル一眼カメラをコンデジみたいに使いこなせるようになるのかしら。
それともやっぱり私にはコンデジが合っているのかな。

ただ、いま、言えるのは、綺麗に写るということが、私にはそれほど重要ではなかった、ということ。
疲れるとすぐにかすむ私の目から見たのと同じ世界が写真に再現されているほうがいい。
適当にブレたり、ボケたり、全然スピードに追いついていなかったり、だけど変なところに神経質。
それが私が満足する私の写真。
向上心はありません。


2009_10_21 IXY et moi.jpg


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