過去の意図的な円安を反省=藤井財務相
[東京 20日 ロイター] 藤井裕久財務相は20日午後、日本記者クラブで講演し、過去最大となる95兆円超となった2010年度予算の概算要求について、最終的に92兆円以下に削減しなければならないとの認識を示し、新規国債発行額も2009年度補正予算後の44兆円以下に抑制する考えをあらためて表明した。
現在の為替市場の状況については、米国の金融緩和政策によってドル安になっているとし、「今の円高は、ドル安からきている面は否定できない」と語った。また、過去に輸出振興のために「意図的に円安に振った時期があり、反省している」とも述べた。
<米国は強いドルを標ぼう、円高是認とは言ってない>
藤井財務相は講演の冒頭、先の訪米でガイトナー米財務長官と会談した時のやりとりを紹介した。会談では、米財務長官からドルを強くしたいとの意向が示され、藤井財務相が「それは結構なこと」と応じたことを明らかにした。さらにガイトナー長官は、ドルを強くするために米国を貯蓄経済にしなければならず、日本の内需転換は米国にとって非常にありがたいと歓迎したとし、これらを踏まえて藤井財務相は「ガイトナー長官とは非常にうまく行っていると断言する」と語った。
これまでの自身の発言が為替市場の円高進行などに影響を与えたと指摘されていることについては、1930年代の自国通貨安競争などの教訓を挙げ、「世界の通貨安競争は必ず世界経済を破滅させると言った。円高是認との記事もあったが、円のことは一言も言ってない」と強調し、「(現在の為替市場は)ちゃんと戻っている」とつけ加えた。
その上で、過去の日本の高度成長を支えた大型公共投資と過度の輸出依存から経済運営を転換しなければ、「1億総格差社会」になってしまうと警告。「輸出は大事だが、輸出偏重は駄目だ」とし、「(輸出のため)意図的に円安に振った時期もあった。そのことに対して私は反省している」と細川政権で蔵相を務めた当時の為替介入への反省ともとれる言葉を口にした。
<税収減には堂々と赤字国債出すべき、10年度予算は92兆円以下に削減>
藤井財務相は就任後、直ちに麻生政権が編成した2009年度第1次補正予算の見直しに着手、不要不急な予算として3兆円程度の財源を捻出した。一方、09年度の税収は世界同時不況の影響を受け、当初見積もりの46.1兆円から40兆円割れの可能性もあるとしており、「(税収減への対応には)堂々と赤字国債を出すべきだ」とあらためて表明。補正見直しで捻出した3兆円は「国民生活に直結したものに出す」と新規政策や雇用対策などに活用する考えを示した。
概算要求額が95兆円超と過去最大規模に膨らんだ2010年度予算については、今後の編成作業で積極的に削減を図っていくと強調。仙谷由人行政刷新相が言及した92兆円という数字に対して「鳩山首相はそれ以下といっている。92兆円を切らなければいけない」との考えを示した。10年度の新規国債発行額についても、「国債市場が変動すると日本の信頼が失われる」とし、09年度補正後の44兆円以下に抑える方針を表明した。
また、消費税率引き上げの必要性については「消費税は今後の基幹税」と位置づけながら、「国民にが納得できるまで無駄を排除した後に(消費税は)語るべき」と発言。消費税を将来的に社会保障目的税化すべきとし、そのための「議論は必要だ」と述べた。
(ロイターニュース 伊藤純夫記者)
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