「憲法の理念を政策に」医療基本法をテーマにシンポ
東大医療政策人材養成講座(HSP)医療基本法プロジェクトチームは10月18日、「今、医療基本法を考える―いのちを救うグランドデザイン―」と題したシンポジウムを開いた。医療従事者や患者関係者、有識者など5人のパネリストが、今後の日本の医療のあるべき姿についてそれぞれの立場から提言した上で、憲法から導き出した医療政策の基本理念や方針を定めた「医療基本法」の必要性を訴えた。
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パネリストの一人、HSP4期生で同プロジェクトチームのメンバーの小西洋之氏は、「医療基本法」の考え方を説明。
小西氏は、個人の幸福追求を保障する憲法13条と生存権を明示している同25条を基に、医療政策の基本理念を「疾病による尊厳の危機から国民を守ること」とした。また、環境や教育などの分野では政策の基本理念や基本方針などを定めた「環境基本法」や「教育基本法」があるが、医療分野にはないと強調。その上で、▽医療政策の基本理念や基本方針を定める▽医療再構築のための指針と具体的な取り組みを推進するための基盤を与える▽医療従事者や患者、一般国民などすべての関係者の意識改革の契機となる▽負担と給付をめぐる医療財政論の前提となる―ものとして、「医療基本法」の実現を訴えた。
その後のパネルディスカッションでは、埴岡健一氏(日本医療政策機構理事)の進行で、パネリストらが意見交換した。
長谷川三枝子氏(患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会会長、日本リウマチ友の会会長)は、「患者の声が反映されない今の医療政策は、理念の大本がなかったことが出発」と指摘。国が政策を決定する上で「頼れるもの」としての「医療基本法」の必要性を強調した。
伊藤雅治氏(全国社会保険協会連合会理事長)は、現在の国民皆保険制度について「高度経済成長の下、医療提供体制の在り方について国民的な合意形成がないまま今日までやってきた」と振り返った上で、国民との議論の重要性を強調したほか、医療従事者やジャーナリスト、政策立案者、患者支援者が共同で「医療基本法」の実現に向けて各方面に働き掛けることが必要だとした。
一方、会場からは「農業基本法など、うまくいっていないものもある。基本法があれば何でも解決するのか」「法律を作りさえすればそれでいいのか」との批判の声も上がった。
これに対して小西氏は、成立当初の目的を変えながら維持していく基本法もあるとし、「基本法で10年、20年にわたって少しでも日本の医療を良くしていくきっかけをつくっていきたい」と述べた。
更新:2009/10/19 16:31 キャリアブレイン
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