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建国祭の熱狂に消された阿鼻叫喚
誰も語らない「中国格差社会」の深淵

――中国の農村事情に詳しい早稲田大学准教授・阿古智子氏に聞く

――格差社会は日本同様、子供の教育にも影響を及ぼしているのか。

　中国では出身地域や家庭によって、受けられる教育の内容や質が日本とは比べ物にならないほど大きい。

　たとえば、中国の大学入試制度の特徴は、地域別におおよその合格者数を決め、それに応じて地区ごとに合格の基準を設定している。

　たいていの場合、大学が多い大都市の戸籍を持つ生徒が優遇され、農村戸籍の生徒は不利な立場に立たされる。同じ大学に入るのに、農村の生徒に対する合格点数は、都市の生徒のそれよりも高く設定されている。

　農民工の子供たちは、北京や上海に住んでいても、都市戸籍がないのでその土地の公立高校には通えない。そのため、親と離れて農村に戻ることになる。

　ある調査によると、農村の普通校に通う生徒の父親の約6割がロークラス（肉体労働者、農民、失業者など）に属していた。政府は、劣悪な環境の中で勉強している農民工の子供に対して優遇措置を取るのではなく、逆に不利になるような入試制度をとっているのが問題だ。

――日本でも、低所得者の子供が高等教育を受けられないという、同様の問題が起きている。

　確かに日本と同様の問題もあるが、日本と大きく異なるのは、中国では「択校費（学校選択費）」という追加費用があることだ。

　高校入試で基準の点数に満たない生徒が入学を希望する場合、「択校費」を払い、“点数を買う”ことができる。ほとんどの学校がこれを支払うことで入学できる。驚くことに、これは違法ではなく、国務院と教育部（文科省）によって合法化されている。

　近年はこの「択校費」が拡大される傾向にあり、たとえば北京市では、05年の択校生向けの点数を、正規合格者より20点低く設定した。

　同じ年、中国の内陸部に位置する寧夏回族自治区の13歳の女生徒が、「択校費」の支払いを気に病んで、自宅で服毒自殺するという事件があった。

　当時の新聞報道によると、両親に当てた遺書には「ごめんなさい。期待に応えられなくて。私は落ちこぼれです。私を13年間育てるのにとても多くのお金を使ったでしょう？　私が死ねば10万元は節約することができます」と書かれていたという。

　大学教育でも、学費は高額化の一途をたどっている。中国の大学の学費は、物価水準を考えるとかなり高い。