巨人−中日 1回表1死一、三塁、右越えに3点本塁打を放ちガッツポーズする野本=東京ドームで(谷沢昇司撮影)
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中日、値千金の1勝、さあ2年前の再現だ!! セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)第2ステージ第1戦(21日・東京ドーム)で、中日は1回に超苦手としていた巨人の先発ゴンザレスを、野本圭外野手(25)の3ランなど5得点で粉砕、7−2で快勝した。これでリーグ優勝した巨人の1勝のアドバンテージを帳消しにし、1勝1敗のタイとした。07年にCSから勝ち上がって日本一に輝いた夢の再現へ、期待が膨らんだ。
スタンドに渦巻く悲鳴と歓声を一身に浴びて、ルーキーは一、二塁間で右腕を高々と突き上げた。野本が特大の3ランで、巨人に与えられたアドバンテージの1勝を吹き消した。
相手投手は今季中日に4勝負けなし、防御率1・46と誰もが認める“竜キラー”のゴンザレス。そんな相手から1番井端からバントを挟み4安打を集中して2点を先取し、まわってきた1死一、三塁。内角攻めの142キロを振り抜いてG党が埋め尽くす右翼席中段にぐさり。「ゴロでもフライでも次につなげられればと思っていました。いい形でと思ってフルスイングしました」。序盤から大量リードの一方的展開に持ち込み、天敵に引導を渡した。
打った球種も「真っすぐ系の…よく分かりません」と言うように、夢中で生み出したアーチ。ルーキーらしき、がむしゃらさが功を奏したのかもしれない。今季放った本塁打は横浜のグリン(4月4日・ナゴヤドーム)と巨人のグライシンガー(9月29日・同)からの2本。この日も“外国人投手キラー”ぶりを発揮した。「たまたまだと思いますけど、追い込まれる前に積極的に振っていますから」。若さを力に変えている。
自らをこの日の“主役”に押し上げた一振りも、ルーキーの脳裏に「ここで一発」などという考えはみじんもなかった。CS開幕を前にして自ら目標を“名脇役”を演じることに定めていた。「僕は主役よりも脇役のキャラですから。自分のできることをしっかりやり遂げようと」。ルーキーイヤーで開幕ベンチを射止めたが2軍落ちの辛酸をなめること3度。その度に耐えてもがいてはい上がってきた。そんな1年を振り返り、地味でもチームに貢献することを第一に据えた。
そんな折、ヤクルトを下したCS第1ステージの前に、野本はヤクルトのある投手が語った中日打線の印象を聞いたという。「中日は打者が点で線にならない。だから要所を抑えればいい」。そんな分析だった。それを聞いて野本は自らの脇役としての立ち位置を定めた。「そんな言われ方をするなら、自分は打が線になるよう、つなげられるようにしなければ。バントでも、進塁打でもいい」。そんな無欲な姿勢が快打を生んだ。
だからもちろん、これにおごることなどない。「主役? それはたまたま今日だけです。明日からもやることは変わらないです。とにかくチームの足を引っ張らないように」。この日は間違いなく“主演男優賞”。でもルーキーの目指すところは謙虚に“助演男優賞”で変わらない。 (若原隆宏)
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