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きょうのコラム「時鐘」 2009年10月22日
見えたという人もいれば、見えなかった、と首をかしげる人もいる。オリオン座流星群の出現がピークを迎えた北陸の夜空には時折、雲が広がっていた
流れ星に願いを託すと、かなうという。逆に、人の不幸を暗示する星、とも言われる。幸運の使者にしたり、不吉な星に見立てたりと、人は気ままである 旧制四高ゆかりの地に、作家の井上靖さんの詩碑「流星」がある。学生のころ、内灘砂丘で見た流れ星に、孤独な青春の輝きを見たという往時の一編を刻む。が、碑文の詩には続きがあり、かつて青春の孤独を見た流星に、いまは命を終える見事さを重ね合わせる、という心境が歌われている 後段は、碑のために新たに作られた。大病と闘った後、碑の除幕に訪れた井上さんが、「いまの覚悟かな」と話したことを記憶する。空をよぎる一瞬の光は、そんなにも心を揺さぶるものか 流星群を「見た、見えなかった」のほかに、「見なかった」の声が周りには少なくない。空のことより、地上のあれこれに心砕くことの続く日々である。たかが流れ星。されど、心を打つ何かを秘めているのかもしれない。 |