裁判長「菅家さん」と呼びかけ…判決時の謝罪示唆私は殺していません――。 裁判長から「被告人」ではなく名前で呼びかけられた菅家利和さん(63)は、法廷内に響き渡る声で、きっぱりと否認した。栃木県足利市で1990年、当時4歳の女児が殺害された足利事件の再審初公判が21日、宇都宮地裁で始まった。逮捕から17年10か月。菅家さんは、「この日を待ちわびていた。真相を解明してもらいたい」と静かに語り、支援者が見守る中、 午前10時過ぎに開廷した206号法廷は、満員の傍聴人で埋まった。 菅家さんは、1か月前に購入した濃いグレーのスーツに、10日前の誕生日に支援者から贈られた紺色のネクタイ姿。左の胸ポケットには、知人にもらったお守りもしのばせた。弁護士2人に挟まれ、審理方針を示す裁判長の説明を落ち着かない様子で聞いていた。 佐藤正信裁判長は、弁護団が事前に求めていた通り、菅家さんを「被告人」とは呼ばず、「菅家さん、前へお立ちください」と促した。菅家さんは大きく息をつき、証言台に立つと、氏名などを確認する人定質問に、真っすぐ正面を向きながら「菅家利和です」と答えた。 罪状認否では、あらかじめ用意していたメモをポケットから取り出し、「私は殺していません」と、はっきりとした口調で否認。その後、検事の方を向き、「納得のいく無罪にしてほしい」と語った。 お昼の休廷中、佐藤博史弁護士は、裁判長が判決時に謝罪する可能性を示唆したことについて「踏み込んだ判断で大きな前進だ」と評価。菅家さんは「裁判長から『菅家さん』と呼ばれて良かった。『被告』だったら許す気にならなかった」と語った。 菅家さんは、この日午前5時に起床し、冷静さを失わないようにと、いつも通りに好きなコーヒーを一杯飲んだ。佐藤弁護士と一緒に考えた罪状認否の文言を、横浜市内の自宅で繰り返し練習してきた。現状では「灰色無罪」との思いから、「足利事件の真実を明らかにした、私の納得のいく無罪判決を下していただきたい」という文言も入れた。宇都宮地裁に向かう新幹線の中でも、メモを手に練習を続けた。 午前9時30分過ぎ、佐藤弁護士ら約10人の弁護団とともに地裁前に到着。「今日の天気のように気持ちもスカッとしている。頑張ってみます」と笑顔を見せたが、再審について問われると、一転して険しい表情になり、「当時の検事に、どうして私を犯人にしたのか真相を解明してもらいたい」ときっぱり。支援者らから「頑張って」と声をかけられ、わずかに笑みを浮かべて地裁へ向かった。 釈放後、各地で講演活動をしたり、初めて飛行機に乗ったりと、自由な生活を楽しんできたが、無罪が確定していない身で、もやもやした気持ちは変わらなかったという。 ◆傍聴希望972人、コンピューターで抽選◆ 宇都宮地裁が用意した一般傍聴席は50席。972人が傍聴を希望し、コンピューターによる抽選が行われた。 (2009年10月21日14時42分 読売新聞)
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