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きょうの社説 2009年10月21日
◎新幹線内装に金箔 北陸でもそろそろ動いては
九州新幹線鹿児島ルートの全線開通に向け、JR九州が導入した新車両「つばめ新80
0系」の内装に金沢の金箔が採用された。車内を彩る黄金の輝きは乗客の記憶に深く刻まれ、乗車したこと自体が忘れられない旅の思い出になるに違いない。これが北陸新幹線の車両でないのが惜しいくらいだ。JR九州は、過去に九州特産のクスノキやイグサを内装に使った車両を開発した実績が あり、「つばめ新800系」も、金箔だけでなく、福岡県の博多織や久留米絣(がすり)など沿線の伝統的工芸品も多用して、「九州色」を演出しているのが特徴だ。北陸新幹線にもそんな車両がぜひほしい。2014年度の金沢開業を見据え、北陸でもそろそろJR東日本や西日本への働き掛けを考えてはどうか。 金沢開業効果を最大限に引き出そうと、石川県が3月に策定した行動計画「STEP2 1」には、北陸新幹線の車両で県内の伝統的工芸品を活用してもらうための取り組みを進めることが盛り込まれている。ただ、車両のデザインが決まる時期が明確になっていないこともあって、県などの動きはまだ鈍いのが現状だ。 石川県内には、当面は北陸新幹線の終着駅になる金沢の金箔や加賀友禅はもとより、九 谷焼や輪島塗、山中漆器など、車両の内装にも適しそうな伝統的工芸品が豊富にあるのだから、県や市町、産地団体などが連携して早めにアプローチをかけたい。より具体的な提案をするために、まずは独自に模型やイメージ図などを作成してみるのも一案だろう。 富山県にも、高岡銅器や高岡漆器、井波彫刻など質の高い伝統的工芸品が多く、これか らの働き掛け次第で用いられる可能性は大いにあろう。積極的な取り組みに期待したい。 多くの乗客が見込まれる北陸新幹線で沿線の多彩な伝統的工芸品を使った車両が登場す れば、乗客の満足度が高まるうえに、車両が工芸品の魅力を広く発信する「ショールーム」の役割を果たすことにもなり、いいことづくめだ。めったにない好機を逃さないようにしてもらいたい。
◎米国防長官来日 問われる首相の安保観
ゲーツ米国防長官が日本を訪れ、岡田克也外相に続いて、きょう鳩山由紀夫首相、北沢
俊美防衛相と会談する。当面の課題である米軍普天間飛行場の移設問題やインド洋での給油活動中止方針などについて協議し、11月のオバマ大統領の訪日の地ならしをするが、日米同盟の懸案処理に当たって、鳩山首相の安全保障観が問われることになる。来年は日米安保条約改定50年の節目でもあり、岡田外相とゲーツ長官との会談で、日 米同盟をさらに持続、深化させることで一致したのはよい。しかし、普天間問題などの解決の難しさに加えて、気掛かりなことがある。 民主党は衆院選の政権公約で、在日米軍再編計画と日米地位協定の見直し方針を掲げた が、防衛政策は何も示しておらず、社民党と国民新党が加わった鳩山政権の国防と在日米軍の存在意義に関する基本的な考え方がまだ国民に説明されていないことである。 鳩山首相は、かつて「常時駐留なき安保」という構想を提唱したことがある。米軍の駐 留に反対する反米・反基地論のように受け取られたことから、この表現はもう使っていないが、在日米軍の縮小方向で、小沢一郎氏が今春「極東での米軍のプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分」と発言したのと一脈通じるところがある。 いずれも野党の時の構想、発言ながら、両氏の安保観の一端をうかがわせ、鳩山政権に 対する米側の不信感の一因になっているといえる。鳩山政権として、在日米軍の在り方と自国の防衛力整備の方向についてどう考えているのか、その点が不確かなままでは、同盟関係の深化といっても、うわべだけにとどまる心配がある。 政府が、新しい防衛計画大綱と次期中期防衛計画の策定を来年末まで1年間先送りした のも、防衛政策の基本方針が固まっていないからである。中期防は毎年度の防衛予算の裏付けとなる基本方針である。現行の中期防は今年度までが対象であり、差し当たって来年度の防衛予算をどんな考えで組むのか、鳩山内閣はその方針を速やかに示す必要がある。
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