きょうのコラム「時鐘」 2009年10月21日

 小説「沈まぬ太陽」に出てくるイランの日本人学校に金沢出身の教師がいたとの記事があった。中に今は亡き中学時代の恩師の名を見た

風変わりな先生だった。例えば、自転車のパンク修理を覚えたらいいと言う。アフリカへ行けばこれで稼げるというのだった。あるいは、大人になると不必要?な毛が生えるがなんでやろと、思春期の生徒を戸惑わせたりした

教員資格を大学院も含め6年制にし、教育実習を延長する計画がある。この案を耳にするたび先の恩師を思い出す。成績向上に結びつく授業ではなかったが、考える面白さと大人になる楽しみは芽生えた。勉強は時間の長さではないと思う

「学校教育を受けた期間が長ければ長いほど自力飛翔の能力は低下する」という超ロングセラー「思考の整理学」(外山滋比古著)の有名な一節がある。風に頼るグライダーではなく自力エンジンで飛ぶには、知識より実践が大切ということだろう

イランから帰国後、恩師は市議になった。世界と郷土が溶け合う多感な人生に触れたのはほんの短い期間でしかなかったが、長く記憶に残る教師だった。