イヌワシ戦士が決戦の地に降り立った。仙台空港では、空港職員が用意した『勝ち取れ日本シリーズ進出』という横断幕と、ファン約100人の見送りを受け、意気揚々と札幌へ。野村監督、山崎武、岩隈、田中…。そのなかに、あの男の姿もあった。リンデンだ。
前日19日にスーツ姿で野村監督に首脳陣批判を謝罪し、お許しを得たリンデンは、移動前にKスタ宮城で行われた練習に合流。「ムードを壊してしまったことを後悔している」とチームメートに謝罪すると、温かい拍手で迎え入れられた。
そんな中、驚きの発言が飛び出した。「第2ステージのキーマン? リンデンや」。ベンチで練習を視察した野村監督は言い切った。スイッチヒッターで、しかも今季チームのサヨナラ勝ち4度のうち、2試合でサヨナラ安打を放つなど勝負強さがある。しかも今季12本塁打(1試合2本が1度)だが、本塁打を打てば7勝3敗1分、勝率.700と勝利に直結している。
策も授けた。ベンチに「第1ステージは申し訳ないことをしました。きのうは(謝罪の)時間をとっていただきありがとうございました」とあいさつに訪れたリンデンに、「あしたは苦手な投手(武田勝)だぞ」と声をかけた。「外に逃げるチェンジアップを見極めるには、意識を外に置いてはだめ。外を意識すると、さらに外のボール球に手が出てしまう。真ん中から内に意識を置くんだ」。日本ハム投手陣は武田勝、八木、藤井と左腕ぞろい。指揮官のアドバイスに、リンデンは「アリガトウ」の3連発で感謝した。
第1戦のスタメンは複数の案から当日に決定されるが、「監督がそこまで言ってくれるなら、リンデンは使うだろう」と橋上ヘッドコーチ。リンデンも「使ってくれるにおいを感じた」と気持ちを高ぶらせている。
「1勝のアドバンテージは大きいな。こっちは4つ勝たなければいけないのに、ハムは3勝でいい」。野村監督の期待は名誉回復にかけるリンデンの意気込みにある。ノムさんが、勘当同然だった異色の孝行息子に命運を託す。(越智健一)