2009年10月16日
手塚治虫の「鉄腕アトム」を、香港に本拠を置くスタジオがCGアニメ化した「ATOM」が公開中だ。マンガやテレビでおなじみのかわいいアトムと違い、面長になり大人びた顔。「この映画のアトムは『親』との関係やアイデンティティーに悩む。人間で言えば10代の少年にあたる、成長したアトムなんだ」とデビッド・バワーズ監督は話す。
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ロボットが人間に仕える空中都市メトロシティ。科学省長官テンマは、事故死した息子トビーそっくりのロボットを作るが、息子の代わりにはならないと気づき追い出す。ロボットは荒廃した地上に降りて「アトム」と名乗り、たくましく生きる孤児たちの仲間になるが、メトロシティの大統領がアトムのエネルギーを兵器に転用しようと、軍を送り込んでくる。
90年代後半からアトムの映画化を進めてきたハリウッド大手コロンビアが撤退した後、香港とロサンゼルスなどに拠点を置くイマジ・スタジオが、手塚プロダクションから映画化を託された。
「まずはCGでスケールの大きいアクションを描くこと。加えて、親の愛を得られず居場所を探すアトムの心の旅をドラマの焦点にし、差別、生命、環境といった手塚作品のテーマも盛り込んだ」とバワーズ。高層ビルの合間を飛び回るアトムと巨大ロボットの格闘が見どころだ。
アトムの外見については、「ドラマの内容に合わせようと大人びたデザインにしたが、最初は僕から見てもアトム本来の魅力が失われたように見えた。手塚治虫氏の長男・眞さんから『もう少し目を大きく、顔を丸く』といった助言をもらい、満足できる最終形に落ち着いた」。
アトムを愛してきた日本の観客に、「大人のアトム」は受け入れられるだろうか。「眞さんが『父がこの映画を見たらきっと気に入るだろう』と言ってくれたので、監督としてそれ以上望むことはない。日本で一人でも多くの方に気に入ってもらえたらうれしい」(小原篤)