恩師は所属事務所から解雇通告された沢尻エリカ(23)を見捨てていなかった。映画監督の井筒和幸氏(56)が総合演出する舞台「パッチギ!」(12月4日初日、東京・新国立劇場)の制作発表が都内で行われた。05年公開の同名映画の舞台化で、在日朝鮮人女子高生を演じた沢尻が、日刊スポーツ映画大賞新人賞など計8賞を受賞するなど出世作となった。契約問題が発覚以降、沢尻は海外で沈黙を保っているが、井筒氏は「どこいっちゃったんだ。元気にしてるのかな。連絡ぐらいほしい。世の中の反発にめげず頑張ってほしい。応援してますから!」と呼び掛けた。
同映画のオーディションで素質を見抜いたのも井筒氏だった。厳しい指導で知られるが撮影中1度も雷を落とすことなく、要求に対する反応の良さや器用さを「天性の勘。雰囲気や存在感は女優としてケチのつけようがない」と絶賛した。07年に公開された続編映画「パッチギ!LOVE&PEACE」でも、井筒氏は起用を希望した。沢尻のスケジュールが合わず断念したとされているが、井筒氏はそれについて多くを語ろうとしない。共演は果たせず、その後、主演した映画の舞台あいさつで「別に」と不機嫌騒動を起こし、以来、女優業を再開することなく解雇通告を受けた。
所属事務所が逸材を手放す決断を下した真相は明らかになっていない。それでも、女優としての素質を誰よりも見抜いている井筒氏は手を差し伸べずにいられない。同舞台の会見中、携帯電話を取り出すと「電話かかってこーへんかな…」とつぶやいた。辛口監督をここまで心配させる女優は沢尻だけかもしれない。