「エッジ……疲れたわ……」
何度もハンマーを振ったり、サポートを続けたりして目の前の少女が疲れを訴えてきた。
僕と彼女は鍛冶師をやっている。
「こういう事は大工さんにでも頼めばいいんじゃないの……?」
「これは僕らのための改造なんだからこれくらいは自分でやらないと。それにもう少しで終わるしさ……」
でも今やっているのは鍛冶師のする事というよりは、大工仕事という感じのもの。
普段の鍛冶用のハンマーではなくてもう少し小振りのものを持っている。
そして壁に木の板を押し付けて、釘を打ち込む。
「ん……ごめん、愚痴言っちゃったわね。ここ持ってるから早く終わらせて」
板を支えてくれているのは僕の護衛獣のディナ。
以前この村に迷い込んできて、それから僕らの家に住み込むという事になった。
僕らが出会った直後に村で封印していた召喚獣が復活しようとして、復活を阻止するために二人で頑張ったりもした。
今ではそういう話もひと段落して、鍛冶の修行をしたりしてのんびりと過ごしている。
僕は召喚士ではないので正式な誓約はしていないけど、それでも護衛獣という以上に大切な存在だと思っている。
「はい、次はここ」
「うん、分かったよ。よいしょ、っと……」
ディナに合わせて、釘を一つずつ打ち込んでいく。
そして、最後の釘が完全に板に埋まる。
「エッジ、これで言われた事は全部終わったけど、後は何かある?」
「ちょっと待ってて……うん、これで大丈夫なはず」
軽く部屋全体を見渡して、設計図と見比べる。
設計図の通りにこなしたので、計算が合っていればこれでうまくいっているはずである。
「ふうっ、こういう作業は慣れないから疲れたわね」
「そうだね……僕も手がしびれてる」
鍛冶をしていて熱い所にいるのは慣れていたけど、大工仕事はちょっとだけ勝手が違った。
まだ木材とか余った釘とかが散らかったままだけど、今はこれを片付ける気分じゃなかった。
二人揃って床に座り込んで、呼吸を整える。
「あとは、これでちゃんとうまくいっているかっていう確認だけね……」
「それじゃディナ、さっそく……」
ひと呼吸置いた後ディナを後ろから抱き締めて、腕に力を込める。
「も、もう……? 汗かいてるから、シャワー浴びたいんだけど」
「このまますぐにディナの事を感じたい」
「…………」
体重をかけると、ディナはほとんど抵抗しないで、ベッドの上へと倒れていった。
「ん……ディナ、汗のにおいがする」
「も、もう、バカ……」
首筋近くの髪に顔をうずめて、大きく呼吸をするとディナのにおいが鼻を強く刺激する。
「も、もしこれであたし達の声が聞こえていたりしたら……」
「そうなったら……その時はその時で何とかするよ。全部言っちゃうとか」
「ん……」
村が平和になって、それからしばらくして僕らは護衛獣とご主人様というのを越えた関係になった。
護衛獣であり、鍛冶のパートナーでもあり、僕の恋人でもある。
けどその事についてはほとんど誰にも打ち明けず、家族も成り行き上知ってしまったタタン以外には言ってない。
抱きついているとディナは焦ったり嫌がったりする事もなく、切なそうな表情をしていた。
「どうかした?」
「それもいいかな、ってちょっと思って……」
「…………」
「ち、違うのよっ! 今のはなし!」
「うん、分かってる」
「くぅ……それはそれで悔しいわね」
ディナは本当に悔しそうにしている。
「ディナ、疲れているでしょ?」
「さっきの作業で疲れているけど……それがどうかした?」
「それじゃ、今日は僕に任せて」
「あっ……」
ベッドの上でディナの服を脱がす。
レオタードのような服と、手につけているロンググローブを外すだけなのであまり時間はかからなかった。
脱がし終わると、何もまとっていないディナが暴れもしないでベッドの上に仰向けになっていた。
「……どうしたの? そんなにじっと見て」
「いや、きれいだなって思って」
柔らかそうで、実際に柔らかい肌が目の前にある。
じっと全身を見ていると自然にそんな言葉が出てきた。
「も、もう、変な事言ってないで早く……」
「早く……何?」
「う、うぅ……」
悪気はないけど何となくディナの事をからかいたくなって、自然と顔もゆるんでしまう。
悔しそうにしていたけど、すぐに観念して次の言葉を言った。
「早く、あたしの身体を触って……」
「うん、分かった」
「エッジ、やっぱりいじわるになったわよ……」
何もまとっていないディナへと手を伸ばす。
「ひゃっ、くすぐったい……」
肩に触れると少し身体をくねらせて、強めに目を瞑る。
「はぁ……んんっ、っく……」
なぞるように手を動かしていくと、何度か小さく身体を跳ねさせた。
「ん……んあっ……」
そのまま尻尾を触ると、大きな声をあげた。
続いて尻尾を指で挟んで、少し強めに握り締める。
「……エ、エッジ……んんっ……」
僕の指の力加減にあわせてディナは声をあげて、身体も少しもじもじさせる。
「ん……はぁっ」
尻尾を握ったまま、空いている方の手で触れる。
そこはもうすでに濡れていたが、あまり触らずに太ももに手を動かす。
「んむ……」
ベッドのシーツを握り締めていた手をほどいて、僕の口元にまで持ってくる。
そして指先や指の付け根を舐めて、口の中でしゃぶる。
「エッジ、くすぐったい……あっ」
指が動き回って、何度か爪が顔に当たる。
指をしゃぶるのを終えて、次は胸に手を動かす。
「んん……っ」
小さい胸が手の平に簡単に収まる。
顔を近づけて、片方のふくらみを口の中で転がして、もう片方は指でつまむ。
「ちゅっ……」
「あっ、あっあっあっ……」
胸に吸い付くとディナは一層声のトーンを上げて答えた。
「んっ……ディナ、感じてる?」
「エッジがやらしい手で触るから……んんんっ!」
強く吸い付くと、身体を震わせて軽くいったみたいだった。
一度手と口を離して、呼吸が元に戻るのを待つ。
「ディナ、ちょっと後ろを向いて」
「えっと……こう?」
少し落ち着いたところでベッドの上で寝転がって、背中を向ける。
黒い翼の付け根の辺りに手を伸ばして、何回か撫で回した後に指でつまむ。
「何をするの……?」
「そういえば背中とか翼はどれくらい感じるのかな、って」
ディナの翼は思っていたよりも細くて、力を入れたら簡単に折れてしまいそうな感じさえする。
手が触ると時折身体を震わせる。何度か翼を撫で回した後今度は背中の肌で手を動かし、指でなぞっていく。
「んっ……エッジ……なんだか変……」
背中に指が触れると、軽く背中が反り返った。
「そうか、ディナは翼よりも背中の方が感じやすいんだ」
「そ、そんな事……ひゃうう……」
「ほら、やっぱり」
僕の手の動きに合わせて、ディナはぴくんと動く。
翼よりも、背中を撫で回した時の方が反応が大きい。
背中から手を離して、もう一度仰向けにする。
太ももを擦り付けるように動かして、目もかなり潤んでいた。
「エ、エッジ……」
「もうそろそろ我慢できない?」
「…………」
ディナは無言のまま、小さくうなずくだけの返事をした。
仰向けになっているディナの上にまたがる。
ディナの顔に僕の顔を近付けて、それから今の目的を思い出した。
「今はキスは……」
「……終わったらしてくれるでしょ? だから待ってる」
恥ずかしそうに、小さなつぶやき声で答えた。
「それじゃ、ディナ……」
「あっ……んくぅぅ」
ディナの足を広げさせて、その隙間に手を入れる。
汗だけじゃなくて、他の液体がどんどん溢れて濡らしていく。
「あ、ああ……んああっ!」
指は抵抗なく受け入れて、すぐに身体の中に埋まった。
入ったままで指の関節を曲げると、合わせて声が出てきた。
僕の指先からもくちゅくちゅと音が鳴ってディナの声が余計いやらしく聞こえる。
「エッジ、あたし、声が……んああっ!」
「いいよ、もっと聞かせて……」
今はまだ口を塞がないので、手の動きに合わせて声がどんどん漏れ出てくる。
少しだけいじったら、それからすぐに僕もして、自分の分身をあてがう。
引き抜いた指には愛液がべっとりとついていた。
「ディナ、いくよ」
「あっ、あああぁぁっ……」
僕はズボンから自分の分身を取り出して、一気に突き入れる。
ディナはほとんど受け入れて、抵抗らしいものはほとんど感じなかった。
「エッジ……あっあっ、んんん……」
一番奥にまで入った状態で動くと、身体を揺さぶられながらディナは声をあげた。
「ふあぁ……あっ、エッジ……んはぁぁぁ……」
口を大きく開けて可愛い声をあげているのを聞くと、その口を自分の口で塞ぎたい気持ちがこみ上げてくる。
けど今は目的が他にあるので、何とかそれは堪えて動かす。
「んん……」
胸のあたりに手を伸ばして、手の平でさする。
「ん……ああっ、エッジ……」
ディナは呼吸を荒げながら僕の事をじっと見てきた。
「エッジ、好き……」
「ディナ、僕もディナの事が好きだよ」
「あっ……んああああぁぁっ!」
全身が痙攣して、かん高い声が部屋中に響き渡る。
その時に両手を伸ばしてきたので、僕も手を差し出して両手を握る。
「……ん、ああぁぁぁ……」
両手を握り合ったまま僕は限界に達し、ディナの中に僕の精液が流れ込んでいく。
ディナは両目をぼんやりさせて呼吸を荒げていた。
ひと呼吸を置いて、ディナの身体の上に倒れこむ。
「エッジ……」
ディナの上にのしかかって身体を重ねると、僕の首に手を回してきた。
「エッジ、ちょうだい……」
「ディナ、何をして欲しい?」
「う……エ、エッジだって同じ事考えているくせに……」
「それでも、ディナからちゃんと聞きたい」
「……っ」
少しの間迷っているようだったけど、すぐに思い切る事ができたらしい。
「口がさみしいから……だからエッジ、キスして……」
「うん、分かった……」
言いながら、唇を突き出してきた。
僕も口元が物足りなかったからすぐに応えて、お互いに舌を差し出す。
「ん……」
「んぅ……んむ……」
ディナの口の中に舌を差し込む。
ディナは自分の口の中に入ってきた舌を甘噛みして、さらに引っ張ったりしていた。
この感触が不思議な気持ちよさで、ディナの好きなようにさせる。
息苦しくなってきたところで、一度口を離す。
「んむっ……は、恥ずかしい事言わせないでよ……」
「ごめん、つい……」
「あたしも言ったんだから、エッジも言ってよ」
「うん……ディナ、愛しているよ。もう一度キスしたい」
「……っ!」
僕の言葉にディナはうろたえて、それからまゆをつり上げて睨んできた。
でも、つながったままの秘部はその瞬間ちょっとだけ強く引き締めてきた。
「アタシはこんなに恥ずかしいのに、エッジはなんでそんなに簡単に……」
「えっ……」
「ずるい! エッジだけ何ともなくてずるいずるい!」
「むぐっ……」
不意に口を塞がれて、何も言い返せずに再び舌が入ってくる。
「エッジ……もう……」
一度口を離して小さくつぶやくと、また何か言い返すより前に再び口をつけてきた。
息苦しさを感じてきたけど、僕の方からも同じように舌を突き出して応えた。
舌を絡めている最中に、ディナの舌遣いが不意に変化する。
「んむっ、んん……」
「あむっ……」
背中を強く抱き締めて、激しく舌を入れてきたので、僕からも同じように舌を動かして返す。
「ん……むぅぅ……」
「じゅく……ちゅぱっ」
口元からよだれがこぼれるのを気にしているヒマもなく、呼吸も十分にできないので頭がぼんやりとしてきた。
息苦しさで気を失いそうになったところで、ようやく口が離れた。
「ぷあっ……エッジさま、こんにちは」
「ああ、やっぱり……」
口を離すとさっきまでのディナとは違った雰囲気になっていた。
目元が変わっていて、他の箇所もさっきまでのディナとは別のようになっていた。
「キスしてる最中に急に変わったりしたらびっくりするよ……」
「すみません、待ちきれなくなってしまって……」
ディナは霊界サプレス出身の召喚獣で、その中でも天使と悪魔の人格が入り混じった非常に珍しい存在。
それでどちらかの人格が出ている間、もう片方は意識の奥の方にいるらしい。
さっきまでは悪魔の方のディナが出ていて、ちょうど今天使のディナに入れ替わった。
けど入れ替わったばかりなのに天使のディナもまた目が潤んでいて、表情が上気している。
「それではエッジさま、今度は私の事を……」
「うん、分かった……」
さっきのまま、お互いの秘部がつながっているが一度引き抜く。引き抜いた際にディナの中から精液が溢れる。
「エッジさま、私の身体もすみずみまで調べて下さい」
そう言いながら仰向けになって寝転んだ。さっきと同じように全身を触って欲しい、と全身を使って訴えてきた。
「エッジさま、私の身体は綺麗ですか?」
「うん、すごく綺麗だよ……」
悪魔のディナと天使のディナは多重人格、とも言えるけどそれ以外にも人格が変わると変化するところがある。
たとえば悪魔のディナと天使のディナでは感じるところなどが微妙に違うし、身体の感触もわずかに違う。
身体が同じはずなのに、こういう所が違うっていうのは何だか面白い。
「……エッジさま、どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもないよ」
気を取り直して、天使の方に入れ替わったディナの身体に手を伸ばす。
「ん……はぁぁ」
ディナは二つの魂が混じった存在で、その両方と僕は関係を持っている。
昔は悪魔のディナの方が表に出ている事が多かったけど、護衛獣以上の存在になって以来天使のディナもよく出てくるようになった。
「きゃぅ……エッジさま、気持ちいいです……」
胸を触ると、ディナは身体をふるわせる。
ほとんど膨らみがないので手の平を全部使わなくても収まるのはどちらのディナも変わらない。
天使のディナは、少し強めにつねっても嫌がらずに高い声をあげる。
「んんっ……んはぁ……ひゃぅ」
声をあげながら自分で自分の秘部を押し広げて、その奥の部分を僕に見せつけるようにする。
ピンク色の部分がうごめいて、さっき僕が出した精液が少し溢れてきている。
「天使のディナも感じやすいね」
「エッジさまだから、こんなになるんですわ」
僕が身体を撫でている間も、天使の方のディナは僕の顔をじっと見ていた。
悪魔のディナの翼は背中についているけど、天使のディナの羽根は頭についている。
悪魔のディナの翼と同じで、天使の羽根もこれまではほとんど触ったりした事がなかった。
さっき悪魔のディナも触って感度を確かめたので、天使のディナについても気になってきた。
「ん……そこ、なんだか気持ちいいです」
頭を撫でながら、羽根にも手を伸ばす。やっぱりさっきと同じように指先でつまむような動作になる。
激しく声を出すような事はしなくても、嬉しそうに鼻を鳴らしていた。
「ん……それでは始めますか」
羽根から手を離すと、天使のディナは身体を起こして楽しそうに微笑んだ。
「エッジさま、今日はわたしに任せてください」
「うん……分かった」
僕がベッドの上に仰向けにさせられる。
今度はディナが僕の上にまたがって、自分のを指で押し広げてあてがう。
さっき悪魔の方のディナだった時に出した精液がさらに溢れてこぼれた。
「は、ぁ……エッジさまぁぁぁ!」
ほとんどためらう事なく一気に腰を落として、抵抗もなくすんなりと入っていった。
すぐに大きな声を出して、休んでいる間もなく身体を上下に動かす。
動きも激しく、大きく身体が跳ねる。
「んっ、んっ……エッジさま、ああんっ!」
「あっ……うくっ」
動くたびに中が強くこすれて、僕も声を抑え切る事ができなくなっていた。
「エッジさま、愛していますわ……あっ、ああぁぁぁっ!!」
「ディナ、僕も……」
僕の上で全身を上下させながら、かん高い声をあげる。
「んぅぅ……んあああぁっ!」
ディナはすぐに絶頂を迎えた。続いて僕の方も二度目の限界を迎えた。
大きな声を出しながら、全身を何度も震わせていた。白濁がディナの身体に入りきらずに溢れてきた。
ディナの身体の震えが収まると身体を倒して、僕の方に寄りかかってきた。
「ふふっ、わたしの方がいい声を出せましたよ?」
「別にそういう事で張り合っているんじゃなくてね……」
「ええ、あくまでわたしが勝手に勝負しているだけですから」
強く抱きついて身体を締め付けて、そのまま顔を近づけてきた。
けどキスは軽く触れるだけで、そのまますぐに唇を離してしまった。
「んむっ……」
「んっ……それではエッジさま、掃除させてもらいますね」
一度引き抜いて、短い時間に二度達した僕の分身へと顔を近づけていく。
二人や三人分のエキスの混じった液体のついている棒を口に含んで、汚れを舐め取っていく。
「じゅく……んむぅ……ちゅぱ……」
「……っ」
唇や舌を使って、音を立てながら口を動かす。
しばらくして汚れが取れて、それからもう一度身体を這いずって唇を重ねてきた。
「エッジさま、終わりましたわ」
「うん……」
「あ……そうだ……」
ディナは何かを思いついたようで、まだ手を離さないままだった。
「んふふ……エッジさま、こんなのはどうですか?」
結んである髪の毛の片方を持ち上げて、近づけてきた。
髪の毛の先は筆のようになっていて、その髪が近付いてくるのに変な怖さがあった。
「ほら……」
「あっ……うっく……」
髪の毛で撫で回したり、先っぽで突っついたりしてきた。
くすぐったさと、先っぽのチクチク感が混じってこれまでにないような感触が襲ってくる。
僕の方も身体をよじらせても、天使のディナは動きを緩めたりはしてくれなかった。
「あっ、うあっ……っくぁ」
「よかった、エッジさまもちゃんと感じてくれているみたいですわ」
僕の様子を見ながら動かしてくる。
「また今度してあげますね……」
「う、うん……」
何度か感触を試してみて、今日のところは簡単に手を引っ込めた。
すぐに終わらせられて残念に思ったけど、一方でこれで止めてもらって助かった、というのもある。
刺激が強すぎて、あれ以上続けられるとどうなってしまうか分からなかった。
少しの間そのままベッドの上で抱き合って余韻の中でぼんやりとしていた。
「エッジさま、それではそろそろ行きましょうか」
「うん、分かった」
落ち着いてきたところで、階段を上って上に行く。
上の階ではタタンやベルグ親方が適当にくつろいでいた。
……オルカはまた機械いじりが立てこんでいるらしくて、こもりっきりな状態になっているけど。
「タタン、どうだった……?」
「大丈夫、全然聞こえていなかったわよ。最初はちょっとハンマー叩くような音したけど、その後は全然」
タタンがテーブルを離れて僕らのそばに寄ってきて、報告をしてくれた。
僕らは日頃からこういう行為をしているけど、その事をタタン以外は知らない。
だからなるべく外でするようにしているけど、たまに勢いで工房の中で及ぶような事もある。
以前タタンに声が漏れていると言われたので、防音の素材で工房を囲う事にした。
家族にはどうしてそんな工事をするのか理由も話せないので、少しずつ材料を持ち込んで僕とディナの二人だけで改造を進めた。
そうやって改造をするには工房は二人の手に余るくらい大きくて、かなり苦労した。
あと、念のために邪魔者が入らないよう扉に鍵も取り付けた。
あくまで以前やった工事を見まねでやっただけで本当に防音できているか分からなかったけど、うまくいってよかった。
「はぁ、よかった……聞こえていたらどうしようかと思っていたんだけど」
「そんなに心配だったら、他の音とかで試した方がよかったんじゃない?」
タタンは呆れ顔でため息をついていた。
目的はディナや僕の声を聞こえなくする事なので、実際にそれでうまくいくか確かめてみた。
「でも、こうしないとちゃんと効果があったかどうか確かめられなかったし……」
「だからって、いきなり本番から始めなくても……せめて段階を踏むとか」
「いいえ、エッジさまはちゃんと段階を踏んでくださいましたわ」
天使のディナがタタンに真顔で言い返す。
「あ、いや、そういう意味じゃなくてね……っていうか、そうなんだ……」
タタンも自分の言葉の意味に気付いたみたいで、慌てて訂正をしようとしている。
「ま、まあとにかく、これで問題がなくなってよかったじゃない」
「はい、これでいつでも気兼ねなくエッジさまと愛し合う事ができますわ」
「天使のディナは少しは気兼ねしてね……」
いつまでも階段の近くで話をしているのを気にしてか、親方が寄ってきた。
「エッジ、休憩か?」
「はい」
「それで、少し前から地下室に色々持ち込んでいたようだったが、何かやっていたのか?」
「え、あ、いや、それは……」
これまで何も言われていなかったから大丈夫だと思っていたけど、実際には気づかれていた。
「気付かれているに決まっているでしょ……」
「そ、そっか……」
考えてみたら木材とかその他のものとか色々持ち込んだので、気付かれないというような事はなかった。
「それに服が汗だらけのようだしな」
「あ……」
さっき汗をかいたまま、シャワー浴びるのさえ忘れていた。
その直後にディナとしたので、余計汗がまとわりつく。
「ちょ、ちょっと、工房の模様替えとか改造とかしてて……」
だいぶ汗をかいているが、汗と息切れだけで済んだようだった。
もっと分かりやすいような汚れや染みがついていなくてよかった。
「……まあ別に構わないが。自分達のやりやすいように改造してくれれば」
それ以上は何も聞かず、親方もすぐに戻った。
「お父さんものん気っていうか、自由っていうか……」
「でも本当、助かったよ」
一家の中でタタンはほとんどの事情を知った上で、僕らの関係について黙っていてくれている。
「まずはシャワーを浴びて汗を流そうか」
「エッジさま、それならまた温泉に行きませんか?」
天使のディナは表情を弾ませながら提案してきた。
「あ、あそこは二度も湯当たりしたからしばらくは行きたくないっていうか……」
温泉というのは、魔刃を探している時に寄った場所。
魔刃を見つけた後も何度か行っているが、そこにある温泉に入ったのは何日か前が初めてだった。
その時の成り行きと勢いで、ディナの事を温泉の中で抱くような事になった。
それで結局湯当たりを起こして気を失ってしまい、クウヤさん達に助けられるような事になった。それも2回。
あの時の事を考えるとしばらくは行きたくないんだけど……天使のディナは随分と気にいったみたいで頻繁に誘ってくる。
「やっぱり僕は家のシャワーでいいよ」
「でもエッジさま、この家のお風呂は防音じゃないですよ?」
「別にお風呂に入る目的がそればっかりじゃないし……」
天使のディナの方は水場でする事がかなり好きみたいで、事あるごとに誘ってくる。
「今は普通に汗を流すだけだから」
「そうですか……?」
ディナは不満な様子だったが、それ以上はしつこく行ってこなかった。
「それでは先に入らせてもらいますね」
ディナが先に風呂場に入った。
その間僕はする事がないので一度お茶の前に戻って待つ事にした。
「エッジさまーっ」
それからしばらくして、呼ぶ声が聞こえた。
僕はディナのいるシャワールームへと急ぐ。
「ディナ、どうしたの?」
「すいません、新しいシャンプー持ってきてもらえませんか?」
「分かった、ちょっと待ってて」
扉越しに話を聞いて、そのままタタンから置いてある場所を聞いてすぐに持っていく。
「ディナ、持ってきたよ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、あれ……っ?」
しかしディナはシャンプーではなくて僕の手を取った。そして風呂場の中へと引っ張っていった。
突然の事で僕も訳が分からず、つんのめるようにして風呂場の中に引き込まれた。
「エッジさま……」
「ディナ、シャンプー持ってきたんだけど……」
ディナの様子を見ると、もうシャンプーをした後のようだった。シャンプーもまだ残っているようだったし。
そしてディナの目を見て、ディナがたくらんでいる事が何であるかようやく理解した。
「エッジさま、エッジさまも一緒にシャワー浴びましょう」
「そう言われても、僕まだ服を脱いでもいないんだけど……」
「はい、ですからこのまま急いで服を脱いで下さい」
「いきなりそんな事言われても……っていうか、今日はどうしてこんなに積極的なの?」
「それはもちろん、あの子に少しでも差を……あっ」
その時ディナの身体が光り、悪魔のディナと入れ替わる。
「まったく、白々しい嘘をついたりして……」
僕に対してではないけど、かなりきつい視線を向けていた。
「エッジ、悪いけどちょっと出ててもらえる?」
「う、うん……」
悪魔のディナの言う通りにして、外に出る。
ディナの事が心配なので、今度はお茶の間に戻らず風呂場を出てすぐの所で待つ事にした。
出てくるまで随分と長い。どうやら口論しているらしい。
そのまましばらくの間待っていて、ようやくディナが出てきた。出てきた時は悪魔の方のディナだった。
「悪かったわね、アイツが勝手な事をして」
「随分長かったみたいだけど、言い争いとかしてた?」
僕と話している時も、まだディナは少しカリカリしていた。
「そうよ。ちょっと、ね……」
「もしかしてこの前の事……あっ」
「…………」
途中まで言いかけて、触れない方がいい事に触れてしまったとすぐに気付いた。
何日か前に、悪魔のディナがどちらか片方選ぶのならどっちを選ぶかと聞いてきた事がある。
あの時は天使のディナが割り込んで入れ替わって、そのままあやふやになってしまった。
あれからしばらく時間が経ったけど、特に変わったような事はない。
その時の話は特にする事なく、何となく元通りの関係に戻ってしまった。
「あたしの事はそんなに心配しなくてもいいから。エッジもシャワー浴びてきてよ」
「わ、分かった……」
ディナから答えはなかったけど、ちょっと様子がおかしくなったのはすぐに分かった。
ディナの事を気にかけつつも、僕も簡単にシャワーを浴びてきた。
僕が入っている所に忍び込んでくるとか、そういうな事はとりあえずなかった。
「出たよ……あれ、戻ってなかったんだ」
「え……あ、そ、そうね。ちょっと考え事とかしてて……」
戻ってくる頃には不機嫌そうな態度は少しは和らいでいた。
お茶の間に戻ると親方もオルカもタタンもなにやら荷物を用意していた。
何を話しているのか聞いていなかったので話の流れが掴めない。
「汗は洗い流したか?」
「えっ? ええ」
親方が念を押すような形で言ってきた。
こんな風に聞いてくるとは、何か大きな事を言ってくるような予感のする前置きだった。
「エッジ、これから雪原に行こうと思うのだが」
「えっ、親方が?」
「全員で、よ。家族全員で」
すぐにタタンがフォローをいれてくれた。
「え、ええと……どうしていきなりそんな話に?」
言い出している親方はもちろん、タタンとオルカも知っていて、僕とディナだけがまだ何も聞いていないというような状況のようだった。
「急な話ですまないが、家族全員で、一泊くらいで旅行をする事になってな」
「本当に急よ……」
「さっきから話をしていたんだけど、エッジたちは取り込んでいるから後にした方がいいって思ったから、少し言うのが遅れちゃって……」
「ああ、さっきの……」
さっき風呂場から戻ってこなかったから、その間に話をしていたという事か。
「あ、あたしたちさっきは何もなかったんだからね!」
「? どういう事だ? ただ何か揉めていただけじゃないのか?」
「あ、ええと……」
ディナもうろたえていて、僕もいい言い訳の言葉が思いつかない。
僕らがおろおろしていると、タタンが割り込んでフォローを入れてくれた。
「お父さん、それよりも説明を続けましょう」
「ああ、そうだな……とにかく、これから全員で旅行に出発する。それからオルカもついてくるぞ」
「オルカも?」
「ああ、ちょうど一区切りついたところだったし、一日くらい別にいいだろうと思ってな」
そう言いつつも、オルカの荷物にはコードなどがはみ出ているのが見える。
「向こうでも作業する気なの……?」
「暇だったらな」
僕の疑問に大してオルカは予想した通りの内容の即答をした。
「それで、行く場所は?」
「ここから遠くに雪の渓谷があって、そこにこの村と同じくらいの大きさの集落がある。
歩いていくのは大変なのだが、どうやらブルニードがそこに転送できるデータを持っていると分かったからな……」
「それってもしかして……」
「魔刃を探しに行った場所の事ですか?」
僕やディナには心当たりがあった。
以前ゴウラ封印のため魔刃を探すためにあちこちを回っていたが、
その時に極寒の雪渓谷にブルニードの転送能力を使って連れて行ってもらった事がある。
「おそらく……そこだろう」
親方もうなずいて、その場所に向かっていく事にした。
「だがまあ、今回はそんなに奥地の方には行かない。渓谷にある集落の人に泊めてもらいに行くだけだ」
「ああ、そういえばあそこで子供にも会いましたね」
「そういう事なので、持っていきたい荷物とかあれば急いで用意をしてくれないか」
「うーん……僕らはこのままでいいですよ」
「ええ、まあ……あたしもそれでいいわよ」
時間もないし、何か持っていくようなものも特に思いつかない。
僕らは特に荷物を用意しないままついていく事に決めた。
という事で、ブルニードに転送をしてもらい、全員で極寒の雪渓谷にやってきた。
確かにこの光景は見覚えはある。これまで転送してもらった場所より少しずれているみたいだけど。
「うん……いい景色だ」
「おにいちゃん、もうちょっと感動してよ……」
「ああ、いい景色ではあるけど……以前行った機械迷宮の方がよかった……」
オルカはこの絶景を見て驚いてはいるけど、それほどテンションが上がっているわけではないようだった。
その方がらしいといえばらしくもあるけど。
「よし、こっちだ」
親方の先導で歩いていく。
しばらく雪原を歩いていると、歩いている先に屋根が見えてきた。こっちの方に集落があるらしい。
さらに歩き続けて、この集落の入り口にまでやってきた。
集落の大きさは僕の住んでいる村と同じくらい、というところだと思う。
「それじゃ、まずは泊めてもらう人に挨拶をしに行こう」
親方は集落の中をほとんど迷わずに歩いていく。
たまにすれ違う人と挨拶をしながら親方の後ろをついて歩く。
「やっぱり、冷えるわね」
「そうだね……」
「そういえばあの人たちはもういないのかしら?」
「ここに住んでいるわけじゃないみたいだったし、どこかに行ったかもしれないね……」
ここではマグナさんっていう、ニーニャと同じ服を着た人たちと会った事がある。
何かを調べに来ていたみたいだったけど、今は用も終わったみたいなのでいない。
雪原の中やこの集落でそれとなくマグナさん達の事を探してみたけどやっぱり見つからなかった。
集落の中を歩いていると荷物の一番多いタタンがだんだんと足が遅くなってきて、息もあがってきていた。
「……荷物持とうか?」
「あ、ありがと……」
「いや、もうついたぞ」
タタンの荷物を持とうとした矢先に、親方の足が止まった。
止まった先は少しボロボロの屋根で、他と比べても明らかに古い家だった。
親方がこの家の扉をノックすると、中からおじいさんが出てきた。
「どうも、お久しぶりです」
「む……?」
「ベルグです」
親方が名前を名乗ると、一瞬だけ険しそうな表情を見せたおじいさんもすぐに表情をゆるめた。
「そうかそうか、あの時の坊やがこんなに立派になりおって……」
「もう20年以上も前の話ですからね」
続いて親方もいつものように緩やかな表情に戻った。
僕らがここに泊まるという話をした後、二人で昔の話らしい事をしばらくしていた。
「それでは出迎える準備をしなくてはいかんな……ああ、昔のように部屋は使って構わないよ」
「お世話になります。私もすぐに追いかけますので、先に行っていてください」
ひと段落したところでおじいさんはゆっくりと歩いていった。
話し振りからして、親方の事を昔から知っているみたいだけど……
「という事で、私はこれから手伝いに行ってくる……お前達はここで休んでいてくれ」
家の主がいないのに、親方が勝手に入っていってお茶の間に陣取っていた。
「それで親方、ここに何をしに来たんですか?」
「だから旅行だ」
「そうじゃなくて……どうしていきなりここに来るというような事になってるのよ?」
「うむ、よく聞いてくれた……」
親方は大げさなくらいに大きくうなずく……どうやら話したかったらしい。
……ディナもまずい事を聞いたとすぐに分かったみたいで、顔色を変えた。
「い、いや、いいわ。あたしはもう部屋に戻って休んでるから!」
「いや、聞いていくがいい」
後ろを振り向いた所で手首をつかまれて、ディナもこれ以上逃げるような事はできなくなった。
タタンとオルカも反射的に席を立って、逃げるようにこの部屋を出た。
聞こえていると思うんだけど、階段を駆け上る音が少し早くなって、上の階に行ってしまった。
「オルカとタタンは行ってしまったか……まあ仕方ないか」
「あの、僕らも……」
「お前達は聞いていけ!」
親方が強く言うので、大人しく椅子に座って話を聞く事にした。
「コホン……昔、まだ私が若い頃、有名な鍛冶師の元を渡り歩く修行の旅をしていた事があってな……」
「親方にもそんな時期があったんですか?」
「そりゃ、私だって最初は未熟だったさ。
その時、短い間ではあったが鍛冶の事を教えてくれたのがここの家の主。つまりは、私の師匠の一人という事だ」
さっき会ったおじいさんがそうだった、という事か。
「だからエッジ、お前はあの人の孫弟子に当たるという事だな」
「ええと……そうですね」
さっきは何も考えず挨拶をしていたけど、そう考えると急に緊張してきた。
「話を戻すと……それから修行を終えて以来、ずっと挨拶にも来れなかった」
「そうでしょうね……あたし達の村から随分と離れているみたいだしね」
「だがこの前オルカがブルニードのメンテナンスをしているのを見学している時に、ある事に気付いた」
「それが、もしかして……」
「どうやらブルニードが記録している座標に、ここの集落に近い場所があるという事でな。
そして先ほど私一人を転送してもらい、確かに昔修行で立ち寄った集落の近くに転送する事ができた」
「それで、懐かしくなっていきなり行動したっていうんですか?」
「うむ。私一人でやってきてもよかったのだが、どうせなら全員で来ようと思い立って今回の旅行に至った」
「それならもう少し前から言ってよ。あたし達何の用意もできなかったんだから……」
ディナの言葉を受けて、親方は普段はほとんど開けていない目を見開いて強烈な気迫を向けてきた。
「思い立ったが吉日! ……というだろう?」
「……言うけど、それで巻き込んだりしないでよ……」
「……とまあ、ここに急に旅行にやって来た理由というのはそんなところだ」
「はぁ……」
呆れ半分といった感じで、もうディナもこれ以上何かを言う気にはなれないようだった。
「話はここまでだ。私は準備を手伝ってくるがお前達はとりあえず休んできて構わないぞ」
「あ、はい……いってらっしゃい親方」
親方は師匠を追って外に出て、僕らが残された。
「じゃあ、まずは上に行って休もうか」
「そうね……」
という事で、2階にある部屋にやってきた。
一部屋にベッドが2つ、というのが二室。オルカとタタンはすでに荷物を置いて中身を一部広げていた。
「2階にはベッドが4つあるみたいだから、あたし達でこの二部屋使っていいって事だと思うわよ」
「オレとタタンがこの部屋、エッジとディナが向こうの部屋、という感じでいいか?」
「うん、それでいいよ」
それで特に問題はないので、すんなりと決定した。
「それでしても、随分とこの家傷んでいるみたいだけど……」
ディナが軽くジャンプしたり、壁を叩いて回ったりしていた。
外から見た印象もそんな感じだったけど、かなり家が古くなっているみたいで、体重を強くかけると床がきしむ。
「ここ、結構音が響くからあまり騒いだりしないでよね」
「分かっているわよ、そんな事……」
「おいおい、子供じゃないんだからそんな事言わなくたっていいだろう?」
タタンの瞳は、それだけの意味で言ったのではないと語っていた。
ディナも察していたけど、オルカだけはあまり意味をよく理解していないようだった。
「な、なるべく頑張るよ……」
「なるべく、ね……」
タタンは視線も声も冷ややかだった。
「タタン、少し離れるとはぐれ召喚獣などが出るらしいからタタンはあまりむやみに集落の外に行かないように」
「はいはい……」
オルカの忠告に、タタンも気持ち半分といった感じで適当に聞き流していた。
「僕達はここまで来た事があるから大丈夫だよ」
「そうなのか?」
「何しろ、魔刃があったのはこの辺の奥の場所だったんだし……」
魔刃を探すために、ブルニードの転送機能を使ってあちこちを回った。
やっている時は大変だったけど、それで多くの人と知り合う事ができたし、今となってはいい思い出という感じになってる。
「まぁそれでも、気をつけるに越した事はないだろうからな」
「そうだね。今日はあまりこの集落から出ないようにするよ」
一度オルカとタタンと別れて自分の部屋にやってくる。
けど、ここに来るための準備とかも何もしていない。そのため、置くような荷物だってない。
とりあえずベッドの上に倒れると、急に疲れが出てきた。
「眠い……」
「エッジも? あたしも何だか眠いから、ちょっと一眠りするわね……」
「僕もそうする……」
僕も同じように倒れたすぐ横に、ディナも倒れてきた。
そしてまぶたを閉じて、まぶたの重みが増して開かなくなった。
「……ん?」
「ふぁ……ちゅく……」
眠っていると息苦しいような感じがして、目が覚めてしまった。
目を開けると、目の前にディナの顔があった。
「あ、エッジさま……起きましたか?」
今の感触から考えて……多分キスされてた。
寝る前は悪魔の方のディナだったような気がするけど、今は天使のディナになっている。
口の中にまだディナの舌の感触が残っている。
「もう少し、そのまま寝ていていいですよ……」
もう一度僕の口を塞いできた。目が覚めたのを見たからか、今度はさらに遠慮なく舌を動かしてきた。
「んむ……」
まだ頭が半分眠ったままなので、適当に突き出すような形になってしまっている。
それでもディナはうまく扱ってくれて、ちゃんとリードをしてくれる。
「くちゅ……んん……」
ディナが僕の身体にまたがっているみたいで、ちょっと動けない。
口の中を舐め回されていると、その感触にもう一度眠りにつきそうになる。
口を離した時に、唾液を垂らしてきた。ちょうど真下にある僕の口の中に入ってくる。
「エッジさま……」
僕の下半身に手を伸ばしてきて、ズボンの上からさすってきた。
今のキスのせいもあって、さっそく暴れまわりそうになっている。
「ん……エッジさま、もうこんなに……」
僕の身体を撫で回しながら、胸元に全身をすり寄せてくる。
その時ベッドがきしんで、部屋全体にきしむ音が響くような感覚がした。
「きしむ……」
ベッドの音や部屋の雰囲気が、いつもと違っている事に気付いた。
そうだ、僕らは一度外に出て、それでここで寝る事になって……
「そうだよ、今声を出したらまずいんだ!」
「きゃっ……」
ベッドの上から跳ね起きて、ディナの身体も軽く持ち上げる。
親方の師匠の家に泊まりにきていて、ここで大きな音を立てちゃまずいという事も思い出した。
「もう、せっかくあの子が寝ていてチャンスだったっていうのに……」
天使のディナはすねた口調で目を横に向けた。
「あ……」
しかしすぐに小さな声をあげる。
ディナがこういう声を出す時は……と考えているとすぐに天使から悪魔へと入れ替わった。
「ごめんね、あたしがちゃんとおさえておけなくて……」
「ああ、いや、それはいいんだけど……」
「なんだか最近、前にも増してエッジの事を誘う事が多くなっているみたいで」
「そ、それより、一度下に降りて挨拶をしないと」
確かにそんな気はするけど、気恥ずかしくので話を転換する。
外を見ると、さっきまで明るかったのが少し暗くなっている。
僕もディナも揃って寝てしまったのは、昼間工房の壁を改造した時の疲れのせいかもしれない。
「どれくらい寝ていたんだろう……」
「どうだろう……?」
外はまだ真っ暗じゃないけど、結構長い時間寝ていたような気がする。
「ディナは大丈夫? 身体がうずいたりしない?」
「うっ……エ、エッジは別にそんな事気にしなくてもいいから」
そう話しながら、ディナは股の間をもじもじさせていた。
「でも途中で終わったりしたから……」
「い、今は声が聞こえるから……我慢できるわよ」
「分かった……」
あまりこれ以上この話を続けて、本当に燃え上がったりしたらいけないので一度話を打ち切る。
「とりあえず下に行こうか」
「そうね……」
扉を開けてすぐに、廊下にいるタタンが声をかけてきた。
「もう普段なら夜遅い時間よ」
「うわっ! び、びっくりした……」
「もう夕食は食い終わったぞ」
続いてオルカも部屋から出てきて、僕らに話しかける。
「まだそんなに暗くないんだけど、もう皆食べ終わったの?」
「お父さんが言うには、この辺は夜になっても真っ暗にならない時期があるらしいの」
「ああ、それはあたしも聞いた事があるわね。寒い地方では夜が来なかったりとか、夜が1日中続いたりとか……」
僕の感覚では今は明け方くらいの明るさという感じがする。
「でも、それだったら起こしてくれてもよかったのに……」
「なんだか本当に気持ち良さそうに寝ていたから、起こすのはかわいそうという事になってな……」
「じゃあさっき入ったの……?」
「ああ。1時間くらい前に一度な」
「そ、そう……」
さっきの事を見られてなくてよかった……
「ああ、起きたか。結構長い時間寝ていたようだな」
親方もやってきた。
「すまないな、先に夕食は食べ終わってしまったが、エッジたちの分はテーブルの上に残してある」
「いや、僕らもずっと寝ててすいません」
「それにしてもずいぶんと仲良さそうに寝ていたな。一つのベッドで寝るなんてな」
「あ、あはははは、そうだった?」
さっきの所は見られていなくてもついごまかし笑いが出てしまった。
「それでは私は、少しばかり散歩に行ってくるとするかな」
親方はそのまま外に行ってしまった。
「親方の師匠って、どうしたか分かる?」
「確か、今はお風呂に入ってると思うけど……」
聞いてみたい話とかあるんだけど、いないのなら残念だけど今はあきらめよう。
夜が遅いっていうんなら、明日の朝に話を聞いてもいいし。
「それじゃあ、遅くなったけどご飯を食べようか」
「ええ、そうしましょう」
二人だけで遅れて食事を取って、もう一度自分の部屋に戻ってくる。
「さて……何をするの?」
今ここにはこれといって時間をつぶせるようなものがない。
工房ではないので鍛冶に関係した事もできないし、何も持ってこなかったからする事が特にない。
ハンマーくらいなら持ってきているけど、さすがにここで素振りとかをする気にはなれない。
さっきまで寝てたから眠くない。けど、今は二人しかいない。
「そうだね……タタンやオルカの所に行こうか」
ここにいてもする事が考えつかなそうだったので、とりあえず隣に行く事にした。
適当に話をするだけでも時間をつぶせそうだし。
「エッジ、ディナ、先に寝るね」
けど隣の部屋に行こうとして廊下でタタンと出会った。もう寝巻きに着替えている。
「お兄ちゃんがもう寝ちゃって、他にする事もないから」
「ああ、そう……」
確かに部屋の明かりは消えていた。
「それじゃ、おやすみなさい。何度も言うようだけど、音がよく聞こえるから気をつけてね」
「そ、そんなにしつこく言わなくても平気よ……」
「何度言っても全然聞きそうにないからしつこく繰り返しているんでしょ!」
「タタン、大声出すと響くんだってば……」
「あっ……ご、ごめん。とにかく、これからはうるさくしないでよ」
タタンも部屋に戻ってしまった。
オルカも寝ているし、話をする相手もいなくなってしまった。
「……さて、どうしましょうね?」
「そうだねぇ……」
アテにしていたオルカやタタンはもう寝てしまったし、ディナと何かすれば周りに聞こえそうだし……
「あ、そうだ……だったら外に出てすればいいんだ」
「だ、だから、あたしはそこまでうずいていないってば……」
「そ、そうか……ごめん」
「ん、もう……」
他に何かする事っていったら……
「それだったら、親方の師匠っていう人に鍛冶の事とか話を聞いてくる。もう風呂から出ている頃だと思うし」
「なんか、難しくて長い話になりそうだからあたしはいいわ……エッジが聞いて、後で分かりやすく教えてよ」
「はいはい……」
ディナが嫌がるので、ディナは部屋に僕一人で下の階へと降りていった。
下のお茶の間から話し声が聞こえてきた。
「親方……」
親方が師匠と話しこんでいた。
しばらく様子を見ていたけど、積もる話とかしていた。
……僕が今入り込む余地がなさそうなので、そのまま声をかけずに2階に戻った。
「って、これじゃ結局ディナは一人で待っているって事じゃないか」
する事がないって言っていたんだから、これだとディナが退屈する事は解決してない。
急いでディナのいるところへと戻る。
戻ってくると、ディナは部屋の扉をしきりに調べていた。
「……ディナ、何やってるの? 扉がどうかした?」
「ひゃうっ? べ、別に何でもないわよ。ちょっと、扉がボロいなって思ってただけで……」
「そうだね、扉だけじゃなくて壁もかなり痛んでるね。この感じだと、本当に少し騒いだだけで簡単に音が漏れるよね」
今日の日中に工房を改造したばかりという事もあって、考え方がそういう方向に行ってしまう。
「そ、そうね……」
話している間、ディナの尻尾はずっと揺れ続けていた。
落ち着きがなくて、何か別の事を考えているような……
「ああ、そっか……やっぱり……」
「…………」
もうそれ以上はディナは何も言わなかった。
「ここじゃ声が聞こえるから外に出ようか?」
「う、うん……」
親方には何も言わずこっそりと外に出る。
暗いけど、深夜ほど真っ暗というわけでもなく薄暗いという程度だった。
集落を出ると脇の方に小さな森を見かけたので、そこに少しだけ踏み込んでいく。
森の中に入って、明かりが見えなくなったくらいの位置で止まる。
「さっきは途中で終わったからやっぱり我慢できなくなった?」
「う……そ、そうよ」
ディナは少しきつく睨みつけてきたけど、すぐにうなずいた。
「エッジがあんなに何度も言うから、こんな事になったのよ……」
「うん……ごめん。だからその事はちゃんと責任取るよ」
「責任って……ま、まったく……」
少し顔を赤くしながら口ごもっていた。
「エッジ、寒い……」
「ああ、本当だね」
ディナの身体を触ってみるとかなり冷えている。
「これから暖めてあげる、って言おうと思ってない?」
「い、いや、それはさすがに考えなかったよ……」
「…………」
「…………」
「……ごめん、今の忘れて!」
少しの間黙って、ばつが悪そうにディナが顔を赤くしていた。
「いいよ、暖めてあげる」
「う、ぅぅ……」
かなり恥ずかしいようで、顔を下に伏せたままなかなか上げない。
ディナは下を向いたままで、服の隙間から手を入れる。愛液がすぐに僕の指先を濡らす。
「でもディナのここ、暖かいよ」
「ば、ばか……変な事言わないでよ……」
指を動かすと、くちゅくちゅと湿った音が鳴る。
もう片方の手では尻尾を握って、暴れまわるのをおさえる。
「ディナ、こっちにおいで。暖めてあげる」
「エッジ……」
ちょっとサイズが大きめのコートがあったので、無断だけど借りてきた。
そのコートを広げて、その中にディナの身体を入れる。
入ってきて、さらに身体をこすり付けるようにしてきた。
「それじゃディナ、そろそろ……」
「うん……」
寒さをしのぐため、コートの中で密着したままディナの中へと入る。
「んっ、はぁぁ……エッジ」
指でも感じたように、ディナの中は外の空気よりもかなり暖かい。
寒さと熱さがおかしな形で混じって、奇妙な感触がする。
「は……ああぁぁ……」
コートの中でディナの事を抱いているので、思うように動けない。
ディナはいつの間にか正面から抱きついていて、僕がディナの身体を完全に支えていた。
「んんっ……んあっ……」
ディナも動ける限りで腰を動かしていた。
「エッジ……エッジの熱い……んぅぅぅぅ!!」
「ディナ……!」
ディナの中に果てる。
ディナの身体に入りきらなかった分は溢れて、どろりと雪の上に垂れた。
「エッジ、もうちょっとこのままでいて」
「うん、いいよ」
全身で抱きついていたのを、一度地面に足をつける。
そして身体をもぞもぞさせて、ちょうどいい体勢になって、ディナはもう一度身体をあずけてきた。
お互いによりかかった後はほとんど動かずに今の余韻に浸っていた。
「あ……」
「どうしたの?」
「アイツ、寒いせいで外に出られなくて悔しい、だって……」
「そうなんだ……」
確かにいつもなら天使のディナが出てきてもいい頃なのに、まだ出てこない。
そう話すディナは何となく嬉しそうな雰囲気だった。
「それじゃ帰ろうか」
「そうね。そ、その……こういう所でするのも悪くなかったわよ」
ディナの身体は軽いのでそれほど気にはならない。
ディナを身体の前で抱きかかえたまま、一度戻る。
……と、そのつもりだったのが、風景がどんどん見慣れないものになってきている。
集落のはずれにある森に入ったはずなのに、建物が見えないまま雪原に出てしまった。
「道に迷ったみたいなんだけど……」
「お、おかしいわね……あたしが道を間違えるなんて……」
ディナがうろたえている。森を出たあたりで自然とディナの事を腕から下ろしていた。
ディナはこれで方向感覚がかなりいいので、そのディナが帰り道分からないというのはかなり危険だ。
「とにかく急いで戻らないと……」
「そ、そうね!」
そう考えていると、吹雪が強くなってきた。
とりあえずは森から離れる方向に向かって歩くが、今自分がどこにいるのか余計分からなくなった。
このままでは帰れなくなると不安になるが、あせればあせるほどますます正しい方向が分からなくなってくる。
「うっ……」
風がさらに強くなってきた。一歩一歩歩くのに必要な力がだんだん強くなってきて、とにかく夢中で歩く。
「エッジ、ほら、あれ……」
「あ……」
少し歩いていると、ちょうどほら穴を見つけたのでそこに避難する。
奥の方まで行っても、熊とかの先客は住んでいないようだった。そこそこ広い空間が広がっている。
この洞穴の奥の方で座って一息つく。
「結構吹雪は強いけど……そんなに寒くはないわね」
「そうだね」
この寒さではあまり動きたくはないけど、肌が痛くなったり気を失うほど寒くはない。
風のせいで思うように歩けないので、とりあえず風が弱まるまではこの場にいた方がよさそうだ。
「さっきまではこんなに吹雪強くなかったから、すぐに止むと思うけど……」
「そうね……」
近寄ると、ディナの手元に赤く光っているものを見つけた。
「ディナ、それは……?」
「ああ、これ? 少しでも暖かくなるかな、って思って……」
見てみると、手の平にわずかな火を出していた。
ディナが得意としている属性ではないため、それほど強いものではないけど。
「でもこれくらいじゃ、大した効果はないわね……もうちょっと他のものがないと……」
「あ、これは……」
誰かが置いていったのか、穴の隅の方に毛布が置いてあった。
他にもいくつか置いてあるものがあったので、ここにやってきた人が前にもいるらしい。
これを借りて羽織る。これでかなり寒さをしのぐ事ができる。
それから、穴の中央に火をつけておく。
燃えすぎて酸欠になるといけないので、あくまで灯りのためにつけておくというだけにしておこう。
「大変な事になっちゃったわね……」
「大丈夫だよ。きっと帰れるから」
これまでももっと複雑な迷宮を抜けたりした事があるんだし。
「とにかく、吹雪が止んだら出発しよう」
あまり長い時間こうしているわけにもいかない。
親方達に心配をかけてしまうかもしれないし、早めに出た方がいいとは思うけど……
「でも、ここじゃ大声で呼んでも誰にも聞こえないだろうし……」
「そうよね……あっ?」
「……えっ?」
「エッジさま、抱いてください」
いきなり悪魔から天使へと入れ替わる。
「え……ええと、今なんて?」
「ですから、わたしの事をここで抱いて下さい」
「今、ここで……?」
「はい。凍えそうですから、お互いに肌を温めあいましょう」
天使のディナは嬉しそうに表情を弾ませる。
「さっき、外にいる間は寒くて交代する事ができなかったものですから」
「悪魔の方のディナも同じ事言ってたね……」
「ようやく出る事ができたのですから、さっきの分のお返しをして下さい。
あの子にしたように、わたしの事も暖めて下さい」
さっき森の中では出られなかった反動とばかりに話を進めていく。
でもまあ、こういう時に肌を暖めあうという話は聞いた事があるし、間違ってない……と、思う。
「分かった……こういう大変な状況だし、そうしよう」
「それではちょっと失礼しますわ」
「ちょ、ちょっと……身体を暖め合うんじゃなかったの……?」
「わたしの口でエッジさまの事を暖めるんですから、間違ってないですよね?」
有無を言わさない勢いでズボンを下ろしていく。
僕の服は脱がさず、露出させた肌はごく一部分だった。
「エッジさま、かわいい……」
縮み切っている僕のものを見てディナは楽しそうに笑っていた。
寒いのでこうなるのはしょうがないものだ、って思ってもこう言われる事はショックがある。
「ここは寒くて……そ、それでこんなに……」
「はい、分かっています」
僕に向かって笑顔で微笑む。
「ですからエッジさま、これから暖めてあげますね……」
優しく一度口付けたあと、口の中へと頬張っていく。
そして口の中にくわえたまま、舌を動かす。
「ん……くちゅ……ちゅぱ……」
口の中で、唾液を塗るように動かしてくる。
外の空気が冷たいためか、ディナの口の中は普段よりも暖かいような気がした。
「ん……エッジさま、元気になってきましたね」
ディナが暖めてくれたおかげで、何とかそれなりには戻ってきた。
「少し激しくしますね……ちゅううぅぅ」
そう宣言すると、一気に強く吸ってきた。
さっきのように優しいのではなく、急に激しさを増してきた。
「っう、くぅ……」
「ん……エッジさま、こっちはどうですか?」
空いている手を使って、口元のすぐ下にある玉を握り締めてきた。
「あっ……痛っ」
「あっ、すみません……これくらい、でどうですか……?」
何度かぎこちなくしていたけど、それはすぐに終わった。
そしてすぐに加減のちょうどいいポイントを探り当てたみたいで、もう一つ刺激を併せてくるようになった。
「ん……」
「なるほど……これくらいがいいんですね」
新しい動きを覚えたために、僕も簡単に翻弄されていく。
「んむっ……エッジさま、このまま顔にお願いします」
僕もすぐに限界に達する。直前にディナが自分の口の中から抜いて、顔のすぐ前の所に向ける。
「……っ!」
精液が顔にかかる。ディナの顔が白濁でべとべとになっていく。
「ん……」
少し口に運んで、舌に乗せる。
飲み込んだ後、恍惚とした表情をしていた。
「エッジさま、こうやって、あっ……」
話の途中でまた入れ替わる。
「遭難したっていうのに元気ね、まったく……」
悪魔のディナはかなり不機嫌そうな顔で眉をつり上げていた。
「さっきは悪魔のディナの方だけ抱いたし……」
「そうだけど、元々はアイツがエッジの寝込みを襲ったりするから……あっ……」
最後まで言い終わるより前にまた天使のディナに入れ替わった。
「あの子の事を抱いたら、内側にいるわたしもうずいてきちゃうんです」
「うん、そうらしいよね……」
「ここなら叫んでも声は聞こえないですし……」
「……それが今はまずいんじゃないの?」
「わたしをどんなに無理矢理に犯しても助けは呼べませんし……」
……それをどうしてディナの方から言ってくるんだろう?
「エッジさま、このままの格好でわたしの事を犯して下さい……」
自分の服に爪を立てるとピッ、と服に切れ目が広がる。さらに左右に引っ張って切れ目を広げていく。
その下の部分が見えている。自分の指で押し開いて、その下にあるピンク色の部分が僕に向けられる。
「そんなに服を引き裂いちゃ……」
「服の修復はすぐにできますので、構わずに来て下さい」
「だから肌を温めあうんじゃなかったの……?」
けど天使のディナは表情がもう出来上がっていて、ほとんど聞いていない。
「エッジさまも裸になって下さい」
「うん……それはいいけど……」
言われるように服を脱いで、ディナのそばへと寄っていく。
「んっ……」
毛布を上にかぶって、それでディナの身体の上にのしかかる。
「あ……はぁぁぁ……」
中へと挿入する。空気が肌寒いのに対してディナの中は暖かくて、やっぱりこの温度差が不思議な快感をもたらしてくれる。
ディナは毛布と僕にのしかかられた状態で器用に腰を動かしていた。
「エッジさま……も、もっと激しく……」
ちらりと、毛布の隙間からディナの身体を見渡す。
ビリビリに破けた服を見て、僕もこれまで以上の興奮を感じていた。
「んはぁっ……きゃううんっ……!」
ディナの声がだんだんとトーンを上げてきて、それにつられるように僕も高まっていく。
「エッジさま、わたしの身体に下さい……」
ディナの様子に僕はほとんど持たずにすぐに限界がやってきた。
絶頂に達する直前に引き抜いて、そして毛布を横にどけた。
「んん……んぅ……」
精液がディナの全身にかかっていく。
「ん……エッジさま……」
身体に白い汚れがかかったまま、ディナは瞳の焦点が定まらないで
しばらくぼんやりとしていた。
「それじゃ、この服を元に戻さないといけませんわね……」
しばらくして服がボロボロのまま、一度立ち上がる。
詠唱をすると、ディナの全身が光に包まれて破れていた服は元に戻っていった。
また、白い汚れも浄化されて、元通りの姿になっていった。
「ん……寒いですわ」
それからまたすぐに僕に手を絡めて身体を密着させてきた。
毛布を二人で共有して、縮こまってじっとしていた。
「とりあえず、風は弱まったかな……」
「そうみたいね……それじゃ、出発しましょうか」
もうしばらくこの場所にとどまって、外から聞こえてくる風の音が弱くなってから様子を見に行く。
外の様子を見てみると、確かにさっきまでの風が止んで静かになっていた。
僕らは揃って外に出て、再び歩き出す。ちなみに、この洞穴を出る直前に悪魔の方のディナにまた入れ替わった。
「エッジ……言いにくいんだけど……」
「うん……」
さっきとはさらに違う風景になってきている。
ここよりさらに違う場所に行ったりしたら本当にもう帰れなくなるかもしれない。
けれど、途中から風景の印象がさらに変わってきた。
「ねえエッジ、この辺って……」
「ここには……来た事があるような気がする」
「エッジも? あたしもなんだか、見覚えがあるんだけど……」
「もうちょっと進んでみよう」
それからさらにもう少し進んでみて、それが何であったか分かった。
ディナの顔を横からのぞくと不安がなくなっていて、ディナももう気付いていたようだった。
ここは、魔刃を取りにきた時に辿り着いた場所。
後ろに大きな結晶があるので間違いない。
「ここは……」
「懐かしいわね……」
魔刃を手に入れる以外にもちょっとした出来事があった場所でもある。
グレンゴウラに唯一対抗できる石が手に入ったのが、ちょうどこの場所だった。
その後うっかりその石を使ってなくなってしまった時も、ここまでやってきてもう一度取りにきたような事もあった。
「あの時は変な声が聞こえてきて、それでここにあの不思議な石があって……」
「そうだったわね。まったく、エッジが間違って使ってしまった時はどうしようかと思ったわよ……」
魔刃の事といい、光る石の事といい、この場所は色々と思い出深い。
「とりあえず、ここまで来れたら何とか帰る事はできそうだね」
「ええ、そうね」
ここからブルニードの転送場所に戻るための道のりは覚えている。
ようやく勝手の分かる場所に戻ってくる事ができて一息つく事ができた。
「そういえば、あの時石が手に入ったのは何だったのかしらね」
「そうだね……結局分からなかったよね」
うっかり使ってなくなってしまった時、何となくここへやってきた。
けど、ここへ来てどうすれば手に入るかは分からないままだった。
どうすればいいか分からないままこの石の前までやってきたら、不思議な声が聞こえて、また鉱石が手に入った。
あれが何だったのかは分からなかった。
「でも、何かがあの石に憑依しているとか、そんなところだと思うわよ」
「それならもう一度、改めてお礼を言っておこうか」
「そうね……」
グレンゴウラを倒す事ができたのも、この石のおかげだと言っていい。
「ありがとう。あの石のおかげで僕らの村は助かりました」
「いいかげんな言い方ね……」
礼儀作法とかは分からないから、軽くお辞儀をして言葉で感謝の言葉を伝える。
すると、急にディナが何やら周囲を見渡し始めた。
「……? 今何か声が……」
「……え? 何も聞こえなかったけど……」
「きゃっ!」
「っ! うああぁ……」
突然ディナの身体が光り始めた。
僕も反射的に目を瞑ったけどまともに光を浴びてしまったし、目を瞑ってもまぶたを突き抜けてくるくらいに光が強い。
ディナが天使から悪魔に、悪魔から天使に入れ替わる時にも身体が光るけど、今度はそれよりも光っている時間が長い。
それに何となく、あの時に出る光とは少し違う感じがした。
「な、なんだったんだ、今の光は?」
光る石のものとも違って、不思議な感じのする光だった。
光が収まっても、最初に直視してしまったため目がチカチカしてなかなか開ける事ができない。
「なんだったのよ、今の……」
「びっくりしました……」
ディナが交互に声をかけても、僕はまだ目を開けられないままだった。
「エッジ、大丈夫?」
「エッジさま、しっかりしてください」
左右から揺さぶられる。
でも、まともに見えるようになるにはもう少し時間がかかりそうだった。
「ん……あれ……?」
意識して強くまばたきを繰り返して、ようやく少しだけ開けられるようになった。
それでぼんやりと見た感じ、ディナのシルエットが二つあるように見た。
「ディナ……?」
「はい、なんですか」
「どうしたの?」
目のチカチカ感がなくなってから、ゆっくりと見てみると目の前にディナが二人いた。
見間違いじゃないかと思って凝視したり、さらに何度もまばたきをしたりしたけどやっぱり変わらなかった。
「え……?」
「あ……」
お互いの視線が合うとディナが硬直してしまって、少しの間時間が止まった。
お互いに顔を見合わせて、さらに同時に頬に手を伸ばした。
「あ、あれ……?」
触った頬の形が少しだけ歪む。指でつまんでも、やっぱり形が変わる。
「どうして……?」
僕も手を伸ばして、二人の手を触る。両方ともディナの手の感触がする。
確かに目の前に二人のディナがいるように見えて、それで実際にその場にいるという事が分かった。
「ディナが……二人になったっていう事?」
「そう……いう事なのかしら……?」
「そう、みたいです……」
二人のディナも混乱しているみたいで、顔を見合わせたまま何と言っていいのか分からない様子だった。
「どういう事なの? こんな事、今までなかったのに……」
「分かりません……」
ここは僕が落ち着いて対処をしないとまとまらない。
「二人とも、まずは落ち着いて……」
まずは、最初に話して決めなければならない事は……
「ええと、それぞれ二人の事は何て呼ぼうか?」
「そこから決めるの?」
「で、でも、これだって大切な事だし……」
「エッジさま、それよりももっと先に決めないとならない事があるんじゃないですか?」
「じゃあ……何て呼んで欲しい?」
僕は何気なく言ったつもりだったのが、二人とも急に表情がこわばってしまった。
「あたしはディナだけど……」
「もちろん、わたしの事をディナと呼んでください」
同時に僕の手をつかんで、左右から引っ張ってきた。
さらに僕を挟んでお互いの事をにらみ合う。
「あたし、これまでずっとこの名前だったんだから!」
「わたしだって、今から名前を変える気はありませんわ」
「ちょ、ちょっと……」
今にも飛びかかりそうな雰囲気になっていて、お互いもう一人の自分にかなり強い視線を投げかけていた。
……呼び方一つだけでこんなにもめるなんて思わなかった。
「分かった、分かった。そのあたりの事は皆と一緒に後で考えるとして……いったん帰ろうか」
名前の問題は解決しないまま、とりあえず戻る事にした。
以前転送してくれた、ブルニードの場所にまで歩いていった。
前はこの場所から魔刃のある場所に向かって進んでいったので、逆に歩けば大丈夫な、はず。
今度は途中で道を外れる事もなく、しばらく歩いていたら前の場所にまで辿り着くことはできたのだけど……
「いないね……」
前の場所に来ても、ブルニードの姿が見えなかった。
集落の外れにいるか、村に戻っているかしているのかもしれない。
だとするとここからまた集落の方向に歩かないとならないんだけど、それでまた迷うような事にもなりかねない。
「ブルニード、いるー?」
「……ヨンダ?」
悪魔の方のディナが声を上げて呼ぶと、目の前に急に現れた。
「……なんで今ので出てきてくれるの?」
「アレ? 増エタ?」
「ええっと、なんかうまく説明できないような出来事があって……」
でも何はともあれ、ブルニードに会う事ができてようやく安心する事ができた。
「今日親方と皆で行った場所って、ここの近くだよね?」
「ソウダヨ」
「近くのところで悪いんだけど、そこまで転送してくれないかな」
「リョウカイ。念ノタメ一度でーたヲ取リ直スネ」
二人になったディナに向けて、ブルニードが光を当てた。
すぐに終わってまた転送ができるようなったらしい。
「そういえばエッジさま、わたしがエスケープすればよかったんじゃないんですか?」
「あ……」
そういえばディナはエスケープの魔法が使えた。
これを使えば迷宮や森の奥にまで行ってもそこから一気に入り口近くに戻る事ができる。
「忘れてたわね……うっかりしていたわ」
「すいませんエッジさま……」
「まぁ、無事に戻ってくる事ができてよかったよ」
それでこんな不思議な体験ができた事だし。
今さらエスケープの事を忘れていた事は考えないようにしよう。
ブルニードに短い距離を転送してもらい、それでようやく戻ってくる事ができた。
空も明るさを増し始めて、夜が明けてきたらしい。
「最初親方が歩いていった方向はあっちだよね」
「チガウヨ、アッチ」
「えっと……そうだったっけ?」
「そうよ……あぶないところだったわね」
「エッジさま、集落があるのはあっちです……」
「分かった……じゃあ、あっちに行こう」
僕以外の全員が同じ方向を指したのでそっちの方向に向かって歩いていくと、明かりが見えてきた。
しばらくの間歩いて、それでようやく元の家に戻ってくる事ができた。
薄暗い感じからだんだんと明るくなり始めて、ちょうど夜が明けてきた頃らしい。
「エッジ! ああ、よかった。探しに行こうと思っていたところ……って!」
泊まっていた家にまで歩いていくと、家の前ではタタンが待っていた。
「え、ええと……あれ?」
けど僕の両脇にいるディナの事を交互に見て、タタンが驚いて硬直してしまった。
「どうしたんだ? そんなに驚いて……む」
後ろからやってきた親方も、やっぱり同じように驚いて固まってしまった。
「どうしたんだよ、そんなに驚いたりして……」
オルカもやってきて、やっぱり時間差で同じようなリアクションを取った。
「ええと……これは……?」
ディナ本人も戸惑っているけど、タタン達はそれ以上に驚いているようだった。
全員黙ってしまって、切り出しにくくなってしまったところで親方が代表して口を開いた。
「そ、それで……これはどうした事なんだ?」
「なんかよく分からないうちに、ディナがそれぞれに分かれちゃって……」
「と、とにかく一度部屋に入りましょう。エッジ達もそこじゃ寒いでしょ?」
家の中に入って、そこのお茶の間で簡単に説明をした。
昨日の晩雪の中で遭難しかけて、そうしている内に以前魔刃があった場所にまで辿り着いた事。
そしてそこでディナの身体が分かれてしまったという事まで話した。
この家の主であるおじいさんも同じ部屋にいるけど、事情が分からないようで隅で黙っていた。
昨日の晩親方と話をしているのを見た時はもっと凄味があったのに、今ではのんびりとした雰囲気になっている。
「ふむ、そうだったか……それよりも、お前達が一晩中外出していたとは知らなかったぞ」
「え、そうだったんですか?」
親方の意外な一言に僕もきょとんとして聞き返してしまう。
「私らは夜遅くまで積もる話をしていたのだ」
「ああ、だいぶ長い間話をしていたみたいですね」
「それで話が終わった時、明かりも消えていたのでもう寝ていると思ってよく調べなかった」
「それで今日の朝お兄ちゃんが早起きして、ちょうどおかしいって思っていたところなんだけど……」
「たまたま早起きして散歩しているだけなのだろう、別に心配するような事じゃないと私がたしなめていたのだ」
「そんな……」
断りもなくこっそり出たのは僕らだけど、気付いてもらえなかったというのは……
「大変だったのよ、自分達がどこにいるのかも分からないくらい迷って……」
悪魔のディナもその事に怒ってふくれていた。
「いや……申し訳ない事をした。しかし何のために昨日の夜森の中に入ったんだ?」
「お父さん、それよりも今はエッジ達の事を休ませてあげないと。遭難していたんだから」
「ああ、そうだな……」
ディナや僕が動揺するよりも早く、タタンがすかさずフォローを入れてくれた。
話をそらすのがだんだんとうまくなってきている、ような気がする。
タタンの案内で、昨日僕らが寝る予定だった部屋にやってきた。
タタンが急いでストーブを用意して、着火する。
「とにかくまずは冷えた身体を暖めないと……ん? 何赤くなってるの?」
「い、いや……何でも、ないわ……」
「何でもない事はありませんわ! この子ったら昨日の晩エッジさまに……」
「ちょっ、ちょっと、それは言わないでよ!」
「昨日の晩自分からエッジさまに向かって……」
「あ、あー……今は部屋に入ってゆっくり休んでて!」
全部聞くより前に、タタンは顔を真っ赤にしながら部屋を飛び出していった。
外にいる間はもちろん寒いと感じていたけど、意外と何とかなった。
「…………」
「…………」
「…………」
タタンがいなくなった後、無言の空気が流れた。
火の近くに集まって、皆で黙って冷えた身体を暖めていく。
身体の奥にまで熱が行き渡って、やっぱり身体が冷え切っていたのだと理解できた。
だんだんと身体が温まってきて、汗も出てきてむしろ暑いと感じ始めてきた。
「エッジ、ディナ、ちょっといいか。む……暑いな」
そのまましばらくのんびりしていたところで、親方が入ってきた。
寒いところにいたからと思っていたけど、やっぱり親方もこの部屋は暑いと感じているらしい。
「親方、なんですか?」
冷えた身体も十分に温まったと思うので、親方に話を聞きながら一度暖房の火を消す。
「ディナの事だが……込み入った話になるかもしれない。
だから今回はこれで一度村に帰って、そこでディナの今後について話し合おうと思うのだが」
「別にそれでいいわよ。要するにもう帰るって事でしょ?」
「はい、わたしもいつまでもここにいるよりも早く帰った方が……」
ディナは二人ともそれでいいと承諾してくれた。
僕としては親方の師匠と話がほとんどできなかったのは残念だけど……
ここにはブルニードに転送してもらえばすぐにやってくる事ができそうだから、今日のところはディナについてどうするかを先に考えよう。
「分かりました、それでは一度戻りましょう」
「よし、それならこれから帰るので、帰り支度を始めてくれ」
「何も持ってきてないから、支度するものもないわよ」
「そ、そうか……なら少し待っててくれ。私達が準備をする」
それだけを伝えて、親方は部屋を出て行った。
僕らは皆の支度が終わるまで、やっぱりここで待たされる事になった。
オルカやタタンがかなり荷物を広げていたので、それを集めるのに時間がかかったようだった。
しばらく部屋で待っていて、他の皆も荷物の準備が終わってから僕らも部屋を出る。
「それでは、私達はこれで戻ります」
「うむ、またいつでも来たくなったら来ればいい」
「はい、また今度話を聞かせてください!」
親方の師匠は笑顔で僕らの事を送ってくれた。
こうして、全員で村戻ってきた。
「それでは親方、ディナの事について話をしたいんですけど……」
「それよりも、とりあえず今は休め。休んだら今後の事について話し合うからな」
「え、そうですか?」
僕は今すぐにでも話をしようというつもりだったけど、親方はそうじゃないらしかった。
「さっきは外に出て冷えた身体を暖めただけで、休息を取ったとは言えない。
それに……私も私でディナについて考えをまとめる時間が欲しいのだ」
「エッジさま、親方の言う通りにして一度休みましょう」
「分かった……それではディナの事についてはまた後で」
という事で地下の工房に戻ってきたが、いざ戻ってみると部屋の汚れが気にかかった。
ホコリではなくて、木材とか釘とかが派手にあたりに散らばっている。
そういえば昨日、部屋を防音に改造してすぐに一泊したから片付けている暇がないんだった。
「まずはこれを綺麗に片付けようか」
「そうね……これじゃ落ち着かないわ」
「エッジさま、お手伝いしますわ」
という事で、まずは工房の掃除をした。
木の切りくずを掃いたり、鍛冶用ではない工具をしまったり……
人手が一人分増えたので、思ったよりもテキパキと邪魔なものが減っていく。
「これで終わりですね」
「ええと……そうだね」
「ずいぶんと早く終わったわね」
あっという間に綺麗にする事ができたけど、片付け終わると疲れがどっと出てきた。
「結構疲れました……」
「そうだね……」
「あの吹雪の中から帰ってきてから、あんまりのんびりできなかったからかしらね……」
休むつもりで帰ってきたらひと掃除する事になったので、それのせいもあって余計に疲れてしまった。
3人で並んでベッドの前にまで歩いてきて、そのままそのベッドに並んで倒れこむ。
もう一つ工房に置いてある、ディナ用のベッドは使われないままであった。
最近では一つのベッドで一緒に寝る事が多くなって、むこうのベッドはあまり使わなくなってきているけど。
倒れて目を閉じると、一気に意識が深いところへと沈んでいく。
「ん……」
「あ、エッジ、おはよう……」
ベッドの上で目が覚める。同じく目を覚ましたばかりらしい、ディナが目を半開きにしてこっちを見ていた。
「ディナ……」
何となくキスしたくなって、ディナの身体を引っ張り寄せる。
ディナもそのまま自然と受け入れてくれて、ディナも抵抗しなかった。
「んっ……」
顔を近づけて、そのまま口付ける。
「はむ……」
ディナの口の中に舌を入れると、舌に噛み付いてくる。
僕の方からもディナの背中に手を回して、抱き寄せて全身を密着させる。
「……ぷあっ」
口を離すと、舌と舌の間を唾液の糸が引いた。
口を離してもディナはまだ身体を密着させたままだった。
「エッジさま、こっちも……」
後ろから声をかけられて、さらに頭をつかまれて逆の方向に向かせられる。
「んっ……」
強引に口を塞がれる。さっきとよく似た唇の感触で、それでいて少しだけ違う。
「んくっ……んむむ……!」
「……あむっ……ちゅっ……」
身体の中の唾液や空気を吸い取るくらいに強く吸引してきた。
僕の方から何か応える事もできずに、されるがままになっていた。
息苦しさで頭がぼんやりしてきた頃に唇が離され、ようやく解放される。
「ぷあっ……エッジさま、おはようございます」
「あ、あれ……?」
そしてもう一人のディナが反対側で微笑んだ。
どうして反対側にいるのか、少し考えて見る。
「ああ、そうか……」
だんだん寝惚けていた頭が元に戻ってきて、何があったのかについても思い出してきた。
そうだ、ディナはこの前それぞれの人格に分かれて……
「やっぱりあれは夢じゃなかったのね……」
「そうみたい……ですね」
悪魔のディナと天使のディナもそれぞれ自分に聞くようにつぶやいた。
最初にこうなった時ほどは取り乱していないが、何となく呆然としているような感じがした。
「大丈夫、こんな事になったりして?」
「え、ええ……大丈夫よ」
「はい……今のところは」
「何かおかしいって思うような事があったら言ってね」
一度休んでから、それから何かする予定だったと思うんだけど……
……ああ、そうだった。
「ディナの事について、親方達と話し合うって事になってたから上に行こう」
「ああ、そういう話だったわね」
「それでは、上に行きましょうか」
全員で起き上がる。3人が同時に起き上がると、ベッドから降りるときに身体がぶつかる。
「狭いわね、これだけの人数で寝ると」
「本当にそうだね……」
3人で寝るとこのベッドはギリギリのサイズで、よく誰も落ちずに済んだと思う。
「こうして並んでみると改めて思うけど……アンタ、いい身分ね」
「……うん、そうかも」
そんな事を悪魔の方のディナから言われて、とりあえずは上のお茶の間に向かう。