インタビューに答える村山富市元首相
民主、社民、国民新3党連立の鳩山内閣が発足して1カ月が過ぎた。1994年から1年半にわたり「自社さ」連立政権を率いた村山富市元首相(85)に新政権の評価や今後の課題を聞いた。
自民が風を吹かせた
―衆院選で民主党が圧勝した。要因をどう考えるか。
小泉政権が規制緩和と自由競争を進め、社会を「勝者と敗者」に分けてしまったことに原因がある。後を受けた安倍晋三、福田康夫首相は格差拡大を解決できずに政権を投げ出し、麻生太郎首相の時に国民は既に自民党に愛想を尽かしていた。民主党への風は自民党が吹かせたようなものだ。
―政権交代が実現した意義は。
有権者が投票を通じて政権を変えることができると実感したのは画期的だ。7党1会派連立の細川政権とは違い、今回は民主党が圧倒的な議席を獲得して本格的な政権交代が実現した。政治が悪ければ投票で変えるという意識が生まれた点が重要だ。
―新政権は沖縄の米軍基地再編問題などで3党間のきしみも見られる。ここまでの評価は。
国民の価値観が多様化しているから、複数の政党がそれぞれの主張を議論して政策に反映させていく連立は単独政権より望ましい。各党がじっくり議論して合意点を見いだすことが大切だ。新政権は国民の期待に応えようとする姿勢がうかがえ、まずは順調な滑り出しだと思う。
小沢氏の功績大きい
―民主党は政策決定の政府への一元化を進めているが、一方で議員立法を原則的に禁止する方針を打ち出すなど政党の役割が分かりづらい。どう見るか。
族議員と官僚の癒着を断ち切るために立法府と行政府の関係を明確にすることは大切だが、政党には政党の役割があり、政府に口出しできないという状況は望ましくない。わたしの時には政府と与党の連絡会議を設け、そこで政府方針を各政党の立場から議論した。政府と政党の関係をどうするか、大きな課題だ。
―「アジア重視」を打ち出している鳩山由紀夫首相の外交姿勢の印象は。
アジアで影響力を持ってこそ日本は世界から評価されるわけで、姿勢は支持する。ただ戦後培ってきた米国との関係も大切。従来より主体性を発揮して米国と接しつつアジアでの立場を築いてほしい。
―衆院選勝利に大きな役割を果たした小沢一郎幹事長が影響力を強めている。細川政権では小沢氏との「二重権力」構造が連立崩壊の遠因になった。小沢氏の動向をどう見るか。
来年の参院選で民主党が過半数を獲得しても連立を維持すると、最近発言していたが、小沢氏の姿勢も以前と変わって(柔軟になって)きたと感じる。これまでのいろんな経験を生かしているのではないか。自民党政権を倒すために指導力を発揮した小沢氏の功績は大きい。
(聞き手は政治部・木本崇、吉良政宣)
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