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構造改革をどう生きるか

日本郵政は不公正な入札をチェックできない仕組みに変えられていた

 それにしても、これを入札というのだろうか。応募した27杜のうち予備審査で5社が脱落し、その後も16杜が入札を辞退している。だが一般論でいって、応募しながらそう簡単に入札辞退するものだろうか。たとえあったとしても、それが16社も同時というのは考えられない。

 百歩も千歩も譲って、それが事実だとしても、残る6社による競争が行われたはずである。だが、最終的に明らかになったのはオリックス不動産1社しか入札していないという事実である。こんなものを入札といえるはずがない。

 報道によると、日本郵政の担当者はこの入札について「企画提案コンペのようなもの」と述べて、一般競争入札とは異なることを認めたという。それにしても、企画提案という言い訳もいったいなんなのか。かんぽの宿を売り飛ばすだけなのに、企画提案なんてあるのだろうか。これまた不可思議である。

 さて、ここからが重要なポイントだ。日本郵政がこの入札を「正当なものだ」と主張したければ、入札の詳細を公表すればいい。そうすれば、出来レースではないかという憶測を呼ぶこともないはずだ。だが、ここで問題なのは、日本郵政には法律上情報公開の義務がないということである。

 郵政公社時代には、購買委員会というものがあり、それが公正な入札を監視する役割を果たしていた。ところが、民営化後の入札は、その役割をすべて経営会議が負うことになる。事実上、チェックがほとんどかからない不透明な仕組み変わってしまったわけだ。だから、不公正な入札を誰も止めることができなかったのである。

 民営化されたからいいのではないかというかもしれないが、同様に民営化されたJRやJTの場合、3億円以上の資産売却は政府の許認可とされた。しかも、日本郵政は現時点でまだ政府が全株式を保有しているのだ。

 そうしたことを考え合わせると、郵政民営化の時点で、こうした不透明な取引が可能なよう、あらかじめ仕組まれていたのは明らかである。

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