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「児童ポルノ禁止法」で日本のマンガ・アニメが衰退する

経済アナリスト 森永卓郎
2009年 7月14日

「児童買春・児童ポルノ禁止法改正案」について、早ければ今国会で成立する見通しとなった。この改正案は、18歳未満を写した性的な画像の所持への規制強化を図るものだが、これまで与野党で大きな対立点が2つあった。

 1つは、処罰の対象である。与党案は「単純所持」も違法とするが、民主党案は「有償・反復取得(買ったり、何度も入手したりする行為)」として、激論が交わされてきた。民主党の主張によれば、例えばメールで勝手に児童ポルノにあたる画像を送られてきた場合、そのメールが着信したパソコンを所持しているだけで逮捕されてしまう恐れがあるというのである。

 報道によれば、9日に与野党間で修正協議が開かれ、「単純所持」を処罰対象とすることで合意がなされ、その代わりに「自己の意思に基づいた所持」であることを捜査機関がきちんと立証すべきということになった。ただ、法律施行前に入手した画像や文書を所持していた場合、それを違法とするかどうかについては、まだ結論に至っていないようだ。

 もう1つの対立点は、何を児童ポルノとするかという定義である。これを明確にしないことには、恣意的な捜査が行われる恐れがあると民主党は指摘している。

 国会の委員会やメディアで話題になったのは、1991年に発売された宮沢りえのヌード写真集『Santa Fe』(サンタ・フェ)はどうなのかということだ。150万部も売れたベストセラーだが、これは彼女が17歳のときに撮影されたものなので、児童ポルノに該当する恐れがある。

 法律施行前に入手した画像や文書を所持していても違法となると、古書店はもちろん自宅にある『Santa Fe』をすべて廃棄処分にしなければならなくなるのだ。

 こうした話題もある今回の改正案なのだが、一番の本質は、残念ながら国会でもほとんど議論されていない。それは、今まで日本がつくりあげてきたマンガ・アニメ・ゲームが、これによって壊滅的な打撃を受ける可能性があるということなのである。

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