朝鮮民主主義研究センター

2004年6月27日

宮塚利雄『最新内部文書150通を裏読む「がんばるぞ!北朝鮮」』

著者が収集した北朝鮮の様々な内部文書を紹介する。

「軍官たちがいろいろな口実で軍人たちに農作物を盗んでくるよう組織する」事態を問題視する文書や、「国境哨兵たちは、革命の前哨線に立った自覚を持ち、酒を決して飲んではならない」と呼びかける文書からは、軍の規律が緩んでいることがわかる。国外から「異色的な録画物」すなわちポルノビデオが持ちこまれていることや、国境地域の住民が韓国などのテレビやラジオを楽しんでいることがわかる文書もある。北朝鮮にもごく普通の社会があるということだろう。ホッとさせられる。

「自分の民族よりも外勢におべっかをつかい、同族を害そうとする南朝鮮傀儡たちは、生意気にも『民族共助』について云々している」と書いている文書は公式の路線に反対しているようで興味深い。2002年9月の小泉訪朝は「今回の日本の総理野郎の平壌訪問は、日帝が1945年8月15日、偉大な首領様の前に膝を屈して座り、降伏書に調印したのと同じだ」と評価されている。

残念なのは著者の解説があまり冷静なものではないことだ。内部文書から少し引用し、著者が北朝鮮の体制や金正日に罵声を浴びせる、というスタイルが延々と続くのでやや閉口する。「民族共助」や小泉訪朝についての内部文書での評価は、朝鮮中央放送や労働新聞での評価と比較して検証してほしかった。個々の文書の真贋を判定する作業が行なわれた形跡もない。


出版:小学館、2004年7月
推薦度:★★★★

投稿者 kazhik : 2004年6月27日 11:22
コメント&トラックバック

おととい読みました
面白かったけど、星4つはやや甘いといえよう(笑)
この本、内部文書だけで作った方が(そして5,6行コメント)良かったのでは。
まあ、KAZHIKさんの書評は、厳しいようで結構甘めで、読む気にさせようという気にさせるのがいい所ですのでこだわりません。
『北朝鮮トリビア』(飛鳥新社)期待。

三浦小太郎のコメント(2004年7月16日 12:16)

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