非常用放流設備は万が一計画洪水流量(5,400m³/s)以上の洪水流量が発生した場合に、ダムの決壊を防ぐため放流を行います。そのために、200年に1度の大洪水時でもダム本体の設計洪水位(EL.324.300m)以上に水位を上昇させない放流能力を持っています。
設計洪水位(EL.324.300m)で3,728m³/sを確保しています。非常用放流設備を設けず、ダム天端からの越流※で上記条件を満たそうとするとダム天端幅が約1,300m必要となります。
従来、非常用放流設備(クレストゲート※)の開閉装置には、初期投資の低い、電動モータワイヤロープ式が採用されてきました。しかし、本設備においては、開閉装置が堤体内に納まり景観上すっきりする、維持費まで考えるとより経済的である、という理由から油圧シリンダ直吊り式を採用しています。
堤頂に突起物がなく景観上すっきりする、大型ゲートとして実績があるラジアルゲートを採用しています。
扉体に設けられた水密ゴムの密着性を高めるため、コンクリートの放流路にステンレス鋼の戸当りを埋め込んでいます。
扉体が受けた水圧を、ダム本体コンクリートからの反力として受け止める部分です。
振動式油圧シリンダ式という構造を採用しています。開閉に使われる油圧シリンダーが扉体開度によって傾きを変えるためにこのように呼ばれます。
常用放流設備のように高圧高速の水が流れるわけではないので、鋼製の放流管、整流板は設けず、コンクリートの放流路を採用しています。