きょうの社説 2009年10月20日

◎日銀さくらリポート 全地区で上方修正に違和感
 日銀がまとめた10月の地域経済報告(さくらリポート)で、北陸など全国9地域すべ ての景気判断を上方修正したのは、やや楽観的過ぎる印象があり、違和感を覚える。例えば北陸の場合、7月の「下げ止まりの兆しがみられている」から、今回は「一部に持ち直しの動きがみられている」に表現が改められた。上方修正といっても微妙な差しかないのは明らかであり、景気が好転したという実感には乏しい。

 むしろ、これから年末にかけて雇用情勢は厳しさを増すだろう。自公連立政権による一 連の景気対策の効果がはげ落ちてくれば、景気の「二番底」が危ぶまれる。

 日銀は企業の資金繰り支援を目的としたコマーシャルペーパー(CP)や社債の買い取 り、担保の範囲内で金融機関に政策金利と同じ年0・1%で資金を供給する企業金融支援特別オペレーションの打ち切りを視野に入れているとされている。異例の措置を長期間続けたくないという思いは分かるが、全国すべてで「上方修正」という景気判断は、これらの時限措置をやめるための布石ではないかと勘繰りたくもなる。

 本紙「北風抄」の執筆者である金融コンサルタントの木村剛氏(富山市出身)は19日 付の寄稿で、「今から3カ月後には『鳩山不況』という言葉が市民権を得ているに違いない」と警告した。これから年末にかけて、中小企業や零細企業、個人事業主らにデフォルト(債務不履行)が増えるばかりか、大企業や上場企業も倒産するという。日銀の景気判断とはまったく逆の見通しだが、各種経済統計だけを見るのではなく、肌身に感じる風の冷たさを思うと、木村氏の警告を聞き流す心境にはなれない。

 さくらリポートは、北陸地域について、個人消費は「一部持ち直し」、設備投資は「大 幅減少」、生産は「輸出増加で着実に持ち直し」、雇用・所得は「低水準で推移」と報告している。景気が外需や経済対策に支えられている様子がうかがえる内容であり、円高がさらに進めば、外需による景気回復のシナリオも厳しくなる。同リポートが間違ったメッセージにならぬことを祈りたい。

◎能登空港利用促進 内向きになり過ぎぬよう
 就航7年目の能登−羽田便が景気低迷の影響で苦戦していることを受け、県や能登空港 利用促進同盟会が地元住民の利用を増やそうと各市町に発破をかけている。9月末時点の搭乗率は過去最低の63・4%にとどまっており、観光需要が落ち込む冬場を控え、関係者が危機感を抱くのは当然だろう。

 ただ、目先の搭乗率を引き上げるために、内向き志向を強め、地元に頼り過ぎるのは考 えものである。7年目については、地元も首都圏も、ともに利用者数が伸び悩んでいる。とすれば、心配しなければならないのは、むしろ首都圏の利用者の減少ではないか。

 能登―羽田便については、7年目も搭乗率保証制度が継続しており、目標達成に向け、 地元対策に力を入れることも必要だろう。しかし、取り組みが奏功し、同便を利用して首都圏などへ旅行に出向く地元住民が増えたとしても、能登への経済効果はさほど期待できない。それどころか、消費を首都圏に「ストロー」されるだけである。同便の利用促進策を考える際に、地元と首都圏のどちらをメーンターゲットに据えるべきかは明らかだ。

 確かに、不況の出口はまだ見えておらず、能登半島地震の風評被害を払拭するために繰 り広げてきた誘客キャンペーンの反動や、景気対策として実施されている高速道路割引の影響も懸念される。いくら大きな人口を有する首都圏といえども、能登―羽田便を利用する観光客を掘り起こすのは容易ではないだろう。

 それでも、かつて能登ブームを巻き起こすきっかけとなった松本清張の代表作「ゼロの 焦点」が清張生誕100周年を記念して再映画化されるなど、追い風がないわけではない。県と各市町がスクラムを組み、地元住民だけに手厚い感がある助成制度を見直すなどして、首都圏市場の開拓にこれまで以上に努めてほしい。地元対策と比べれば、即効性には乏しいかもしれないが、長い目で見れば必ず能登の利益につながろう。「もう限界」などと弱音を吐いている時ではない。