17日午前9時すぎ、福岡市東区の香椎川の水位が上昇し、河口から約1キロの川べりの遊歩道などが一時冠水した。福岡管区気象台は同時刻に、予測値を大幅に上回る潮位を博多湾で観測。「副振動(急激な海面の上下変動)が発生したのではないか」とみている。地元住民からは「満潮時にこれほど水かさが増したのは初めて」と驚きの声が上がった。
福岡市消防局によると、午前9時半すぎに住民からの通報を受けて出動。堤防の雨水溝から川の水が逆流し、遊歩道以外にも、川沿いの道路が60メートルにわたり最大30センチほど冠水していたという。近くの主婦伊藤淑子さんは「商店街の方に流れ出さないか冷や冷やした」と話し、同消防局は、満潮時に水位が上昇し出動したことは「過去にも記録にない」と首をひねった。
福岡管区気象台によると、午前9時すぎから潮位が上がりはじめ、同10時までで予測値を最大50センチ超えた。
この日の夕方からは川沿いに灯明を並べる市民まつりが開かれる予定で、約20人の住民グループが飾り台を並べるなどの準備をしていた。
主催者団体「明日香」会長の板倉由美子さんによると、当時、香椎川付近の遊歩道が最大で約5センチほど冠水。最寄り駅からまつり会場に向かおうとしたが一時足止めとなった人もいた。水はしばらくして引いたが、会場の一部では泥水などの掃除に追われたという。
板倉会長は「まつり自体に被害はなかったが、こんなことは初めて。全然想定していないことが起きてびっくりしている」と驚いた様子だった。
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▼副振動 満潮・干潮の潮位の変化は主振動、それ以外の潮位の変動を「副振動」と呼ぶ。東シナ海など遠洋の気圧変動で潮位が大きく上下する現象で、小規模の副振動は全国各地で起こっている。陸や堤防に囲まれた湾や海峡などで観測され、数分から数十分周期で潮位の動きが見られる。大きなものは九州西岸で起きるケースが多く、特に長崎港では頻繁に発生しており「あびき」とも呼ばれている。
=2009/10/17付 西日本新聞夕刊=