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田中良紹:農協の歴史的転換

2009年10月19日12時11分 / 提供:THE JOURNAL

THE JOURNAL
 10月8日に開かれた農協グループの全国大会で、長年続いてきた自民党との関係を見直す特別決議が採択された。自民党の長期政権を支えてきた農協が自民党支持を見直す事は戦後日本の構造が大きく変わる事を意味している。

 戦後日本の構造とは、戦時中に作られた「国家総動員態勢」に民主主義の衣をまとわせ、官僚が主導する計画経済を自民党と財界とが一体となって推進する仕組みである。「国家総動員態勢」では戦争遂行のためにあらゆる産業を政府の統制下に置く必要があり、そのため業界毎に「統制会」という組織が作られた。「統制会」はあくまでも業界が自主的に作るものだが、実態は政府による上意下達の道具である。

 その「統制会」が戦後名前を変えて復活したのが「経団連」と「農協」である。「経団連」は製造業とサービス業に霞ヶ関の産業政策を浸透させる役割を果たし、「農協」は農業への保護政策を要求する組織として農家を自民党の票田に組み込んだ。日本を占領したGHQは農地改革の延長で当初は行政から独立した欧米型の協同組合を作ろうとしたが、食糧難の時代であり食糧を管理・統制する必要があった。そのため戦前の統制団体「農業会」を「農協」に作り替えた。こうして昭和23年に「農協」が生まれた。

 戦後の日本経済の進路を決めたのは冷戦である。1949年、アジアに共産主義の中国が生まれ、翌年朝鮮半島で中国、ソ連に後押しされた北朝鮮と韓国との戦争が勃発した。アメリカは朝鮮半島の共産主義化を阻止するため日本を出撃と補給の基地にする必要があった。日米安保条約を結んで日本に米軍基地を置き、一方で日本の工業力を復活させて戦争の補給に備えた。

 こうして日本は工業による経済復興を目指すことになった。官僚は工業製品を海外に輸出して外貨を稼ぐシナリオを描き、日本は貿易立国として戦後をスタートさせた。その裏側で農業は保護を要する衰退産業にさせられた。農家を自立させる農業政策ではなく、鉄道や道路を建設する公共事業が地方振興の柱となり、その恩恵が農家にばらまかれた。また海外からの農産品輸入阻止、政府によるコメの買い上げなどの保護政策が主要な農業政策となった。税制でも農家は都市のサラリーマンより優遇された。

 それらの優遇策を中央から運んで来るのが与党の政治家、すなわち自民党議員の役割である。こうして農村は自民党の票田となり自民党の力の源泉となった。一方で官僚にとって上意下達を可能にする農協は極めて便利である。従って農協には様々な特権が与えられた。農民から預金を集めて金融事業を行っても、他の金融機関とは異なり様々な事業分野に進出して多角的な経営を行う事が認められた。こうして組合員数500万人を越える農協は農水省の下部組織であると同時に、経団連と並ぶ自民党の一大支持母体として勢力を誇示してきた。

 8月の衆議院選挙で農協はこれまで以上に自民党支持の立場を鮮明にし、民主党に敵対的な姿勢を取った。民主党がマニフェストに「アメリカとの自由貿易協定」を盛り込んだからである。「アメリカとの自由貿易協定で安いコメが輸入されれば日本農業は壊滅する」と自民党の候補者達は訴え、農協も反民主党キャンペーンを張った。自民党候補者の選挙事務所を訪れると、中心となって選挙を支えていたのは農協の政治団体「農政連」のメンバーである。

 しかし農協が反民主党を叫んだ本当の理由は別にある。民主党がマニフェストに掲げた「農家への戸別所得補償」こそ農協にとって許す事の出来ない政策であった。農協は自民党と官僚が作り出した農家支配の道具であるから、農家の保護政策は全て農協を通して分配された。ところが民主党の「戸別所得補償」は政府が直接農家に金を配る仕組みで農協が入り込む余地がない。そこに民主党の政策のキーポイントがある。

 「子育て支援」もそうだが、民主党の政策は企業や業界団体などの既得権益を通さずに直接国民に税金の一部を返還するところにミソがある。私は以前「民主党の政策をバラマキと言うが、これは一種の政策減税でアメリカのレーガノミクスに似ている」と書いたが、官僚支配の構造から生まれた既得権益を破壊する政策なのである。その事に農協は気付いて恐怖した。そして「アメリカの自由貿易協定反対」を叫ぶ方が農家の賛同を得やすいと考えて民主党を揺さぶった。

 これに民主党が動揺した。慌ててマニフェストの見直しに言及し、「自由貿易協定の締結」を「自由貿易協定の交渉促進」とトーンダウンさせた。農協の影響力で農村票が減る事を怖れたのである。すると怒ったのが当時の小沢代表代行である。選挙も終盤の8月25日、「我々はどのような状況になっても生産者が生産できる制度を作る。何の心配もない。現在、中央の農協、農業団体は官僚化している。相手にする必要はない」と言い切った。おそらく農協の方が震え上がったに違いない。私はこの一言で「勝負あった!」と思った。

 選挙の大勢は「政権交代確実」という時期である。そうでなくとも建設業界など政権与党につかなければ生きて行けない業界は自民党支援から距離を置いていた。その中で農協だけが突出して自民党に肩入れしていた。だからこそ農協は民主党を脅せると思っていた。民主党が言うことを聞けば自民党支援の手を緩めても良いぞというサインである。組合員数500万を越える農協には自信があった。ところが小沢氏は脅しに屈しない。それどころか「官僚と同じだから相手にする必要ない」と言った。それが本気なら政権交代後に農協は無力化される恐れがある。これを聞いて農協は自民党支援の力が抜けると私は思った。まさしく「勝負あった!」である。

 そして農協は全国大会で自民党支持を見直し、政党との関係を「全方位」としながら、政権与党である民主党との関係強化に踏み出す姿勢を打ち出した。だからこれは歴史的転換なのである。経団連と並んで戦後日本の構造を形作ってきた大組織が今後どうなるかは知らないが、戦後体制は確実に変化していくことになる。

 自民党にとって最大の拠り所であった支持母体が離れた。参議院選挙に自民党公認で候補者を送り込んできた各種団体が次々自民党から離れて行く。その変化に自民党はどう対応するのか。参議院選挙までもう10ヶ月しかない。

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