90年に女児(当時4)が殺害された「足利事件」で、再審開始が決定した菅家利和さん(63)について、宇都宮地検が捜査段階で、DNA型鑑定の確度が低いため「自白」がなければ逮捕できないという方針を警察に示していたことが、朝日新聞が入手した内部資料でわかった。
菅家さんが一審公判の途中で足利事件について否認に転じた際、検事が再び「自白」を迫ったことが取り調べを録音したテープで明らかになっているが、DNA型鑑定の確度が低いという認識を持ちながら「君と同じ体液を持っている人が何人いると思っているの」などと追及していたことになる。弁護団は誘導的な取り調べがあったとして、録音テープを「法廷で再生すべきだ」と主張、21日から始まる再審公判で証拠として調べるよう求める方針だ。
朝日新聞が入手した内部資料は、一審公判中の92年3月に、宇都宮地検が上級庁あてに作成した捜査報告書。弁護側がDNA型鑑定の信用性に疑問をさしはさんで証拠採用に同意しなかったため、公判に鑑定人を呼んで証人尋問する直前の時期だった。
捜査報告書の中で、地検は菅家さんを逮捕・起訴する前の捜査の経過を記載。DNA型鑑定の結果が「確率としては1千人に1.244人」と低かったため、「ただちに被告人を検挙するには問題が残る」として、警察に「被告人を任意で調べて自供が得られた段階で逮捕するよう指示した」と書かれていた。
捜査報告書にはまた、DNAの構造に関して「現在では高校の教科書にも出てきているが、26年も前に高校を卒業した検事は学校で学んだことがなく、目下、高校生物の受験参考書を買い求めて悪戦苦闘中」と、知識の浅さを告白するような記述もあった。
92年12月8日の取り調べを録音したテープでは、前日に突然否認に転じた菅家さんに対し、検事が「DNA鑑定で君の体液と一致する体液があった」と、「自白」を迫り、菅家さんが「絶対に違うんです」と反論すると、検事が「君と同じ体液を持っている人が何人いると思っているの」と問いつめ、「自白」させる様子が録音されていた。