「胆沢ダムの建設凍結は無い」と国交省現場担当者=民主・小沢氏の違法献金事件で揺れる疑惑ダム

【PJニュース 2009年10月19日】民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」をめぐる違法献金事件でクローズアップされ、前原・国土交通相が建設を一時凍結した全国48のダム建設事業の一つに数えられる岩手県奥州市内で建設中の「胆沢ダム」で17日、現場見学会が開かれ、地元住民ら約200人が参加した。

国土交通省東北地方整備局胆沢ダム工事事務所が主催するこの現場見学会は今年で6回目を数えた。参加者は主催者が用意した6台のバスに乗り込み、展望台やダムに積む原石の採石現場、そして工事機械などを見学した。

また、主催者側による工事の進捗状況などについての説明を聞いた。その席で、国交省職員は「胆沢ダムの場合はすでに本体工事に入っており、工事が凍結の対象にあたるという話は今のところ現場サイドでは無い」と明言した。

奥州市は岩手県南西部にあり、小沢氏の出身地である旧水沢市や胆沢ダムがある胆沢町が合併して2006年に誕生した。胆沢ダムは奥州市の中心部であるJR水沢駅からクルマで北へ40分ほどに位置する。上流の治水と灌漑目的で1953年に建設された石淵ダムでは洪水調節機能に限界があるとして、1973年に建設発表され、2013年に完成予定だ。

石を積み上げて作るロックフィルダム方式を採る胆沢ダムの総工費は当初1360億円だった。だが、2000年になり2440億円に増額された。完成すればフィルダム堤体積1350万立方メートルと全国3位、フィルダム堤高132メートルと全国8位の巨大ダムが出現する。

総貯水量1億4300万立方メートルと石淵ダムの約9倍の容量を誇ることになり、ダム説明担当者によると、石淵ダムに足りなかった生活用水機能や地域活性化機能が加わるという。この2つのダム間は距離にして2キロしかない。胆沢ダムが完成すれば石淵ダムは水没する。

胆沢ダム工事で西松建設が受注したのは、洪水時に流水を調節するダム本体の脇に付けられる「洪水吐き」の打設工事。06年3月に入札が行われ、西松・佐藤・東急の3建設会社の共同企業体(JV)が約86億円で落札した。西松建設関係者によると、このうち西松の受注分は5割に当たる。

政治資金収支報告書などによると、西松建設は政治団体を通じて合計約1800万円を小沢氏側に献金したとされる。うち約500万円は胆沢ダム工事の落札後に献金された。

新聞報道などによれば、小沢氏側の「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件では、逮捕された公設第1秘書、大久保隆規容疑者は西松建設に対して「胆沢ダムは小沢ダムだ」と言って献金を受け取ったとされる。また、西松建設前社長の国沢幹雄容疑者は、東京地検特捜部の調べに対して、「ダム受注のためだった」という趣旨の供述をしたとされる。

ダムの土木工事は建築工事と比べて利益率が高く、西松建設にとってうまみがある胆沢ダム工事は、落とせないものだったとされる。ダムの本体工事は大成建設など大手ゼネコンがすでに受注していたため、西松建設は関連の洪水吐き工事に目を付けたようだ。

2013年度完成予定の胆沢ダムは工事は75%が終わり、最終段階の「本体工事」に入っている。総事業費2440億円のうち、現時点で1618億円がすでに使われた。前原国交相は10月始め、胆沢ダムを含めた国や水資源機構のダム48事業について、今年度内には新たな工事手続きには入らず、来年度以降の工事も今後検討すると宣言した。

胆沢ダム建設を管轄する国交相職員は「胆沢ダムの場合はすでに本体工事に入っており、工事が凍結の対象にあたるという話は今のところ現場サイドでは無い」と話した。そのうえで「ただ、今後どうなるかは分からない。現場では戦々恐々としている」と打ち明けた。また、見学会に参加した地元住民は「ダム建設が中止になれば、小沢一郎を下ろす」と話した。

この違法献金事件で西松建設は、国交省から公共工事の一時指名停止処分を受けた。この件について、国交省の別の職員は「(胆沢ダム現場サイドでは)特段、話題になることもない」と話した。一方、西松建設関係者は違法献金事件について「本社サイドは大変だったようだが、現場には影響が無かった」と話した。【了】

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パブリック・ジャーナリスト　小田 光康